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クリスマス明けはヨーロッパの障害路線に注目!

  • 2018年12月12日(水) 12時00分

絶対王者の力をまざまざと見せつけた


 欧州では本格的な障害競馬のシーズンを迎えているが、ビッグネームが各地で続々と「それらしい」勝ち方を見せ、大きな盛り上がりを見せている。

 まずご紹介するのは、12月1日に英国のニューキャッスルで行われた、ハードル2マイル路線におけるシーズン最初の主要競走となるG1ファイティングフィフスハードル(芝16F98y)に登場した、ブーヴェールデール(セン7、父クリヨン)だ。

 仏国産馬で、14/15年シーズンに祖国でデビューしたのがブーヴェールデールである。まずはナショナルハントフラットを2戦して2連勝。シーズン半ばに馬主が変わり、英国のトップトレーナー、ニッキー・ヘンダーソンの厩舎に転厩すると、ナショナルハントフラットを更に2戦し、ここでは2着と4着に終わった。

 15/16年シーズンにハードルデビュー。このシーズンは4戦し、最終戦となったエイントリーのG1トップノーヴィスハードル(芝16F102y)を含む3勝、チェルトナムのG1チョプリームノーヴィスハードル(芝16F87y)3着の成績を残した段階で、大手馬主のJ・P・マクマナス氏が同馬を購入した。

 そこからは破竹の快進撃を見せており、16/17年シーズンは5戦し、ハードル2マイル路線の最高峰となるチェルトナムのG1チャンピオンハードル(芝16F87y)を含む5連勝。

 続く17/18年シーズンは4戦し、連覇を果たしたG1チャンピオンハードルを含む4連勝と、16年4月から継続している連勝を二桁の“10"に乗せて昨シーズンを終えていた。そのブーヴェールデールの、今季初戦となったのが、G1ファティングフィフスハードルだったのだが、いささか不安要素を抱えながらの出走だった。

 実は、同馬は昨季終了後の7月に喉鳴りの手術を受けていたのである。ここは8か月半ぶりの戦列復帰だったのだが、調教での動きは「まだ8分」を思わせるもので、ファンも昨季のG1バーリングビングハムノーヴィスハードル(芝21F26y)勝ち馬サムクロ(セン6、父ジャーマニー)を1番人気(2.2倍)に支持し、ブーヴェールデールはオッズ2.375倍の2番人気に甘んじたのだった。

 しかし結果は、逃げたサムクロを2番手で追走したブーヴェールデールが、抜群の手応えのまま8号障害飛越後に先頭に立つと、最後はサムクロに8馬身差をつける完勝。ハードル2マイル路線における絶対王者の力を、まざまざと見せつけたのだった。

 次走は12月26日にケンプトンで行われるG1クリスマスハードル(芝16F)の予定。

 続いて、12月2日にアイルランドのフェアリーハウスで行われたG1ハットングレイスハードル(芝20F)に、オッズ1.67倍という圧倒的1番人気に支持されて出走したのが、アップルズジェイド(牝6、父サドラーメイカー)だった。

 仏国産馬で、14/15年シーズン終盤に、生産者の所有馬として祖国でデビューしたのがアップルズジェイドだ。牝馬限定のハードル戦でデビュー勝ちを飾ると、早くも大手馬主マイケル・オライリー氏に所有が変わり、愛国のウィリアム・マリンズ厩舎に転厩。15/16年シーズンは4戦し、パンチェスタウンのG1チャンピオン4歳ハードル(芝16F)など2つのG1を含む3勝を挙げた。

 翌16/17年シーズンからはゴードン・エリオット厩舎に移籍に、このシーズンは6戦してチェルトナムのG1メアズハードル(芝19F200y)、フェアリーハウスのG1ハットンズグレイスハードルなど、3つのG1を制覇、続く17/18年シーズンは5戦し、連覇を果たしたG1ハットンズグレイスハードルを含めて2つのG1を制していた。

 今季初戦の前走G2リスマレンハードル(芝20F)を11馬身差で制しての参戦だったアップルジェイドは、すなわち、3連覇を目指してのG1ハットンズグレイスハードル出走であった。道中2番手で競馬をした同馬は、10号障害飛越後に先頭へ。そこからは同馬が後続を引き離すばかりで、最後は昨季のG1愛チャンピオンハードル(芝16F)勝ち馬スーパサンデイ(セン8、父ガリレオ)に20馬身という大差をつける圧勝。3連覇を果たすとともに、8度目のG1制覇を果たした。

 次走は、12月27日にレパーズタウンで行われるG1愛クリスマスハードル(芝24F)の予定。 そして、12月8日にイギリスのサンダウンで行われた、スティープルチェイス2マイル路線におけるシーズン最初の主要競走であるG1ティングルクリークチェイス(芝15F119y)に、オッズ1.62倍の1番人気に推されて出走したのがアルティオール(セン8、父ハイチャパラル)だった。

 愛国産馬で、3歳6月にゴフスのランドローバーセールにて6万ユーロ(当時のレートで約780万円)で購買されたのがアルティオールだ。ニッキー・ヘンダーソン厩舎から4歳5月にデビューし、ナショナルハントフラットで3戦1勝の成績を残した後、15/16年シーズンにハードルデビュー。このシーズンは5戦し、G1シュプリームノーヴィスハードル(芝16F87y)を含む5連勝。

 翌16/17年シーズンにスティープルチェイスに転身すると、このシーズンは6戦し、G1アークルチャレンジトロフィー(芝15F199y)を含む6連勝。喉鳴りの手術を受けて始動が遅れた17/18年シーズンは3戦し、スティープルチェイス2マイル路線の最高峰であるG1クイーンマザーチャンピオンチェイス(芝15F199y)を含む3連勝と、入障以来負け知らずの14連勝で昨シーズンを終えていたのだった。

 そのアルティオールの今季初戦となったのがG1ティングルクリークチェイスで、つまりは7か月半ぶりの出走だった。

 先手をとったのは、16ー20F路線のG1を9勝している古豪アンデスコー(セン10、父デンハムレッド、4.5倍の2番人気)で、アルティオールは3番手を追走。アルティオールが仕掛けてアンデスコーに馬体を併せたのが11号障害飛越後で、しばらくは2頭の併走が続いた後、最終障害飛越後の残り150mから力強く伸びたアルティオールが、最後はアンデスコーに4馬身差をつけて優勝。継続中の連勝記録を15に伸ばすとともに、7度目のG1制覇を果たした。

 気になる次走だが、12月26日にケンプトンで行われるG1キングジョージ6世チェイス(芝24F)に登録があるのだが、ここは回避して、2月9日にニューバリーで行われるG2ゲイムスピリットチェイス(芝16F92y)に廻る公算大と見られている。

 クリスマス明けに、シーズン前半のハイライトを迎えるヨーロッパの障害路線に、皆様もぜひご注目いただきたい。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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