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熾烈な地方全国リーディング争い

  • 2018年12月11日(火) 18時00分

リーディング争いは大晦日までもつれる可能性も


 前回は“馬”についてNARグランプリ表彰を展望したが、今回は“人”の表彰についてここまでの経過を見てみよう(成績は12月10日現在、但し書きがない限り地方のみの成績)。

 今年も残り3週間となって、激しい争いとなっているのが騎手の勝利数リーディングだ。12月10日現在で森泰斗騎手(船橋)269勝、吉村智洋騎手(兵庫)267勝。今年前半、ずっとリードしていたのが吉村騎手で、夏頃からは10〜20勝程度の開きで推移していた。森騎手は5月25日に落馬があって2週間ほど騎乗を休んでいた影響もあった。

 しかしながら南関東のほうが開催日数が多く、秋になって徐々にその差は詰まり、森騎手が当然のように逆転して一時は10勝程度の差をつけた時期もあった。ところが11月の終盤あたりから吉村騎手が再び差を詰め、12月6日の園田開催で4勝を挙げてついに逆転。しかしその日の大井ナイター開催で森騎手は3勝を挙げて差し返した。そして翌7日に森騎手が1勝を追加し、前述の通り269対267勝と、2勝差となっている。

 この原稿を書いている12月11日を含めて今年残りの開催日は南関東16日間(25、26日に浦和・大井の同日開催があるが、同日に両方の競馬場で騎乗することはできないので1日と数えた)、園田は12日間。他地区で騎乗する可能性もあるので、騎乗日数としてはもっと多くなる可能性はある。南関東も園田も大晦日まで開催があるため、騎手の地方全国リーディング争いはそこまでもつれるかもしれない。

 ただしNARグランプリの表彰では中央での成績も対象となるため、森騎手は今年中央で7勝を挙げており(吉村騎手は0勝)、最優秀勝利回数騎手賞となると、森騎手がまだまだ有利ということになる。

 賞金ランキングでは1位の森騎手が9億5700万円余りで、2位の矢野貴之騎手(大井)が8億100万円余りとなっている。勝利数と同様、NARグランプリの表彰では中央での賞金も対象となるため、森騎手は中央7勝のほかキタサンミカヅキでJBCスプリント、カペラSでともに3着があるため、それらの賞金を含めるとさらに差が開くことになる。

 勝率では32.6%の山口勲騎手(佐賀)が断然。最優秀勝率騎手賞を受賞することになれば、6年連続6回目となる。2位は米倉知騎手(金沢)の25.2%だから、やはり山口騎手が断然だ。

 調教師の勝利数では、今年は打越勇児調教師(高知)がずっとトップを走ってきて189勝。2位は角田輝也調教師(愛知)が168勝と、20勝以上の差がついている。ただし、高知の開催は残り5日間。東海地区は12日間の開催を残している。打越調教師は2012年が初出走で、今年7年目。最優秀勝利回数調教師賞に選ばれれば、もちろん初めてのこととなる。

 調教師の賞金では、地方だけで5億9600万円余りを稼いでいる小久保智調教師(浦和)が断然。ただしNARグランプリの表彰の選定基準には欠格事項があり、管理馬から禁止薬物が2度出ているためそれがどう判断されるか。その件に関しては最終的な処分も発表されていないため、そのあたりも微妙なところ。不適当と判断されれば2位の調教師(現在は佐藤賢二調教師・船橋)が表彰される可能性もある。

 調教師の勝率では、川西毅調教師(名古屋)が唯一30%超の31.4%。最優秀勝率調教師賞を受賞すれば3年連続6回目となる。2位は打越調教師で27.3%だから逆転までは難しいかもしれない。

 優秀新人騎手賞は、2017年3月31日以降に地方で新規免許を受け、年間30勝以上を挙げた騎手が対象となる。勝利数だけでなく、勝率、賞金、重賞等の成績などを含めて総合的に判断されるため、ここで推定するのは難しいが、渡邊竜也騎手(笠松・2017年デビュー)が今年59勝、落合玄太騎手(北海道・2018年デビュー)が58勝で有力となるだろうか。

 優秀女性騎手賞も勝利数だけでなく総合的に判断される。ばんえいも含めて現役は4人で、宮下瞳騎手(愛知)が53勝、木之前葵騎手(愛知)が52勝。宮下騎手には重賞勝ち(梅見月杯・ポルタディソーニ)があり、アドバンテージとなりそうだ。受賞となれば2年連続10度目となる。

 そのほか、2017年はヤングジョッキーズシリーズのファイナルラウンドで優勝した臼井健太郎騎手(船橋)が殊勲騎手賞に選出されているので、今年もファイナルラウンドに出場する地方騎手には期待したいところ。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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