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【有馬記念】“最高にドラマチックだった”有馬記念でのラストラン・ベスト3

  • 2018年12月16日(日) 18時01分
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▲2017年の有馬記念を制したキタサンブラック、通算GI・7勝の活躍で現役生活を終えた (撮影:下野雄規)


年末のビッグレース有馬記念、このレースをラストランに選ぶ馬は多い。昨年はキタサンブラックが有終の美を飾り、今年はサトノダイヤモンドやサウンズオブアースが引退を迎える。過去、数々生まれた胸打つ感動のシーン…。“最高にドラマチックだった”有馬記念でのラストランベスト3を、作家の島田明宏さんが選びます。

(文=島田明宏)


限られた空間に押し寄せた17万人超の思いが…


 有馬記念の印象的なラストランとして、まず最初に思い出されるのは、オグリキャップが制した1990年のレースだ。

「東京都ハイセイコー様」だけで年賀状が届いたスーパーアイドルのハイセイコーが盛り上げた1970年第前半を「第一次競馬ブーム」とすると、この1990年は、「第二次競馬ブーム」がピークを迎えた年だった。

 この年に行われた第57回日本ダービー当日には19万6517人もの観客が東京競馬場を訪れていた。グラウンドレベルで観戦していた私は、あまりの人ごみでコースに近づくことができず、レースをよく見ることができなかった。レース後、勝ったアイネスフウジンに騎乗した中野栄治を讃える「ナカノコール」の大合唱にスタンドが揺れた。

 第35回有馬記念が行われた1990年12月23日の中山競馬場は、そのダービーデーの東京競馬場以上の大混雑だった。入場者は17万7779人。東京の19万人より、中山の17万人のほうが、より満員電車に近く、屋外なのに人いきれでムッとした。午後の早い時間から「今から窓口に並ばれても勝馬投票券を購入できません」と場内アナウンスがなされるほどだった。レースが行われるたびに沸き上がる歓声は肉食獣の咆哮のようで、朝から場内は異様な雰囲気だった。その熱気が、パドックに現れた有馬記念の出走馬を包み込んだ。

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▲2008年、東京競馬場でお披露目された際のオグリキャップ (撮影:下野雄規)


 オグリキャップは、前々走の天皇賞・秋で6着、前走のジャパンカップでは11着と不振にあえいでいた。その状況を打破すべく、引退レースと定めたこの有馬記念では、同年春の安田記念でオグリを勝利に導いた武豊を、再び鞍上に迎えていた。

 ほとんどの馬が17万人超から送り込まれる異様な圧力に押しつぶされるなか、オグリだけは、それを体内に取り込んで自身のエネルギーに転換したのではないか――そうとしか思えないような見事な走りで、引退レースを勝利で飾った。

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