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リステッド競走新設など、来年からの制度変更で馬産地への影響は?

  • 2018年12月19日(水) 18時00分
生産地便り

計63競走が新たに格付けされるリステッド競走


昨今の状況を踏まえれば、中小生産牧場に配慮するのは致し方ないところ


 来年からJRAではオープン競走の中でもよりレベルの高いレースとして認定された「リステッド競走」(合計63競走)が、新たに格付けされることになった。

 それに伴い、生産牧場賞と繁殖牝馬所有者賞も、一部交付基準が変わり、来年はこのリステッド競走に対する項目が新設された。

 まず生産牧場賞は、以下の通りである。

GI競走  1着100、2着40、3着25、4着15、5着10(数字は万円単位、以下も同様)
その他の重賞競走 1着65、2着26、3着16、4着10、5着7
リステッド競走  1着50、2着20、3着13、4着8、5着5
その他の特別競走 1着45、2着18、3着11、4着7、5着5
一般競走(1勝以上) 1着38、2着15、3着10
新馬、未勝利競走 1着34、2着14、3着9

 生産牧場賞は、当該馬を生産した生産牧場に一律に交付されるもので、特別競走以上では5着まで、一般競走においては3着までが対象となる。生産者団体(JBBA)では、一般競走の4着、5着馬に対しても交付を要望していたが、今回は見送られた。

 続いて、繁殖牝馬所有者賞。これは、当該馬が誕生した時点で繁殖牝馬を所有していた生産者、馬主に交付され、上記生産牧場賞よりはいくぶん交付額が高い。詳細は以下の通り。

GI競走 1着130、2着52、3着33、4着20、5着13
その他の重賞競走 1着80、2着32、3着20、4着12、5着8
リステッド競走  1着55、2着22、3着14、4着8、5着6
その他の特別競走 1着50、2着20、3着13、4着8、5着5
一般競走(1勝以上) 1着40、2着16、3着10
新馬、未勝利競走 1着36、2着14、3着9

 今年度から変更になったのは、リステッド競走の項目が新設されたことの他に、繁殖牝馬所有者賞の「その他の特別競走」が、1着45万円から50万円に増額されたことも挙げられる。2着以下もそれぞれ18万円→20万円、11万円→13万円、4着7万円→8万円と微増になった。(5着は5万円のまま据え置き)

 これら2つを合わせた来年度予算は、総額46億5400万円で、今年度より1.7%の増額となる。どちらも国内の生産者にとっては、生産活動を継続して行く上でひじょうに重要な資金となり、生産馬の出世次第では、家族経営主体の小規模な生産牧場ならば、年間の生活費が賄えるほどの金額にもなり得る。新馬、未勝利戦を勝ち上がり、さらに、スンナリ勝てずとも昇級して着を拾ってくれるだけで口座に賞金が振り込まれるのだから、臨時収入としてはとてもありがたい。

 全体的には、中小生産牧場に配慮し「下に厚く、上に薄い」交付基準になっているが、GI競走が、多くの中小牧場にとって徐々に遠い存在になりつつある昨今の競馬状況を考えれば、致し方ないところであろう。

 日高のとある小規模生産者は「もうダービーだの天皇賞だのと言ったところで、今はもう出走することさえできないんだから、絵に描いた餅に等しい。それを考えたら、ダービーで100万円と130万円の計230万円でしかないのと比較すると、やっと運よく勝ち上がれたようなローカルの未勝利戦でも、繁殖牝馬所有者賞と生産牧場賞とで計70万円にもなる。これは我々にとってはかなり大きな副収入だよ」と本音を語る。

 ただし、来年度からは、秋季競馬において3歳未勝利戦を実施しないことが発表されており、8月末の新潟、小倉、札幌開催までに勝ち上がらなければならなくなる。

 また、夏以降、従来あった降級制度が廃止され、勝利度数に応じたクラス分けになることから、新しく1勝クラス、2勝クラスなどというような表現(呼称)に変わるという。

 そのために、できるだけ早い時期からの使い出しがよりいっそう求められるようになり、加えて、古馬になったら下級条件のまま在籍し続けることがますます難しくなる。

 3歳馬が新馬戦を除いた平地競走において、3走連続で9着以下に敗退した場合は、2カ月間平地競走に出走できないという規定もあり、成長が遅かったり、仕上がりにくかったりなど「奥手タイプ」の馬にとっては、ますます厳しい競走環境になってしまいそうだ。

 こうした改定が、来年度以降の1歳馬市場などにどのような影響が出てくるか、成り行きを見守りたいと思う。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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