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有馬記念で無類の強さを誇るヘイルトゥリーズン系/有馬記念

  • 2018年12月22日(土) 18時00分

評価の難しいオジュウチョウサンも、血統背景は強力


 もうずっと以前、3歳から7歳まで有馬記念を「3、4、3、1、1」着したスピードシンボリ(1963)という馬がいた。父はロイヤルチャレンヂャー(1951)、その父がロイヤルチャージャー(1942)。現代の主流父系の祖ミスタープロスペクター(1970)や、ノーザンダンサー(1961)が出現する前のことになる。

 6〜7歳時に有馬記念を連勝したスピードシンボリは、やがて1984〜1985年の有馬記念を2連覇したシンボリルドルフの母の父となった。種牡馬としては必ずしも成功しなかったシンボリルドルフは、1993年の有馬記念を1年ぶりの出走で奇跡の勝利を飾ったトウカイテイオーを送った。スピードシンボリの血を引く馬は有馬記念を「5勝」したことになる。

 いま、ロイヤルチャージャーは現代の主流父系の祖の1頭となって、サンデーサイレンスの4代前の父に登場する。ロイヤルチャージャー孫の世代にあたるヘイルトゥリーズン直父系(産駒にヘイロー、ロベルト)の産駒は、1994年のナリタブライアン以降、有馬記念を計22勝もしている。驚くことに21世紀に入って以降、ヘイルトゥリーズン直父系の産駒が目下「17連勝中」である。同時にワン.ツーが10回もある。

 といって、そういう理由で有馬記念の中心馬を探すことは難しい。主流父系が限られる現在、大半の馬が主流父系の産駒同士の組み合わせになっている。ましてこの父系の最初の活躍馬スピードシンボリが50年も前に示したように、牝系に入ってもタフで勝負強さを伝えるのがヘイルトゥリーズン系の真価。だから、時間をかけて、しだいに現代の主流父系になっていった。

 レイデオロ(父キングカメハメハ)の母の父は、ヘイルトゥリーズン直仔ロベルトの孫のシンボリクリスエス(有馬記念2連勝)であり、同じく人気のキセキ(父はキングカメハメハ直仔ルーラーシップ)の母の父は、ディープインパクト(自身と産駒で有馬記念3勝)である。父方の影響も、母方の影響力もおそらくほぼ互角だろう。

 シンボリルドルフの場合は、母の父スピードシンボリの勝負強さを強く受け継いだといわれたが、同じような血の組み合わせが多い現在、レイデオロにもっとも影響を与えているのは、3代母ウインドインハーヘア(直仔ディープインパクト)一族の血かもしれないのである。

 ただし、ヘイルトゥリーズン系の有馬記念での無類の強さを評価するなら、今年該当するのは「サンデーサイレンス直父系」の9頭に限られる。

 オジュウチョウサン(4×5)    クリンチャー(5×4)
 サウンズオブアース       サトノダイヤモンド(3×5×4)
 シュヴァルグラン(3×4×5)    スマートレイアー
 パフォーマプロミス(4×5)    マカヒキ(3×5)
 ミッキースワロー

 ()の数字は5代前までのヘイルトゥリーズン、あるいはヘイローのクロス。特別に有馬記念向きというなら、クロスまで秘める6頭かもしれない(実際、サトノダイヤモンドは16年の勝ち馬)。

 評価の難しいオジュウチョウサンは、父ステイゴールド(産駒が有馬記念4勝)、母の父はシンボリクリスエス(有馬記念2連勝)であり、同じく父ステイゴールドのパフォーマプロミスは、母方祖父がブライアンズタイム(産駒は有馬記念3勝)という強力な有馬記念背景をもつ。

 難しい中山2500mの流れが味方するとみて、ミッキースワロー(父トーセンホマレボシ)に期待したい。ジャパンCの再現を狙うキセキの先行策を、人気のレイデオロ、見せ場を作りたいオジュウチョウサン、ボウマンに戻ったシュヴァルグラン以下、早めに動いて出る公算大。ただ、小回りに見えて中山の3コーナーはゴールまで約4ハロンもある。

 早めに動く馬が続出すると、08年のアドマイヤモナークが2着し、かつてイナリワン、ダイユウサクが届いて勝ったように追い込みタイプにも不利はなくなる。ミッキースワローは右回りの短い直線向き。休み明けで初の左回り、超高速決着のジャパンCはさすがに坂上で諦めたように映ったが、それでも上がりは最速。消耗戦の中、活力は保たれた気がする。中位のイン追走もありえる。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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