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迫力と美しさを兼ね備えたばんえい競馬

  • 2018年12月26日(水) 18時00分
生産地便り

ばんえいダービーに向けた調教


暗い時間帯から馬たちが橇を曳く場面は、いつ見ても絵になる


 去る12月23日(日)、中央競馬で有馬記念が行われたこの日、帯広競馬場のメインは「ばんえいダービー」であった。平地競馬と同じく、ばんえい競馬の3歳チャンピオンを決める一戦で、10頭の精鋭が顔を揃えた。

 メインは第10競走。発走は午後7時5分。冬至のこの季節は日没も早いので、概ね午後4時半にはもう真っ暗になり、午後7時ともなれば完全に「ナイター」である。

 約2時間かけて帯広競馬場に着いたのは午後6時。幸いにも、駐車場はところどころ空きがあり、すんなりと駐車できた。

 帯広競馬場では、土日に中央競馬の馬券も併売しており、有馬記念のこの日などはかなり早めから出かけなければ駐車場を確保するのが難しいくらいの混雑になる、と教えられていたが、中央ファンが帰った後だったのが幸いした。

 この時期にしては暖かな夜で、気温は-2度か3度くらいか。よく晴れた夜空で、戸外で観戦するのにも何とか我慢できる程度だ。

 ただ、地元のばんえいファンは、大半がスタンドの中で過ごす。レースになっても外に出てくる人はあまり多くなく、エキサイトゾーンに陣取るのは、熱心なファンと観光客や若者たちだ。

 さて、ばんえいダービー。出走メンバー10頭のうち、8頭が牡馬で、唯一の牝馬が7番ミスタカシマ(鈴木恵介騎手)。また、セン馬も1頭(5番アアモンドグンシン、阿部武臣騎手)いる。

 人気を集めたのはこの2頭で、ミスタカシマが単勝1.9倍、アアモンドグンシンがちょうど2倍のオッズだ。3番人気以下はいずれも10倍を超えていた。この2頭の一騎打ちムードが濃厚というのが大方の予想であった。

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唯一の牝馬ながら1番人気に支持されたミスタカシマ


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2番人気のアアモンドグンシン


 定刻通りにスタートし、各馬ほとんど差のないまま第2障害まで進む。そこからまずミスタカシマが坂を上り、すぐにアアモンドグンシンも第二障害を力強い脚色で上って行く。

 ほとんど並んで2頭が坂を下りる。3番キタノユウジロウ(松田道明騎手)、8番コウシュハレガシー(西謙一騎手)も続けて第二障害をクリアして坂を下ってくる。

 ここでミスタカシマの脚色が徐々に鈍くなり、アアモンドグンシンについて行けない。

 ついにはキタノユウジロウ、コウシュハレガシーにも交わされてしまった。

 アアモンドグンシンが抜け出しそのまま先頭でゴール板を通過し優勝。2着キタノユウジロウ、3着コウシュハレガシー。1番人気に支持されたミスタカシマは4着に敗退した。

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アアモンドグンシンが抜け出して優勝


 アアモンドグンシンは、前述の通りセン馬3歳鹿毛で父アアモンドヤワラ、母サトミクイン。阿部武臣騎手が騎乗、小林長吉厩舎所属、馬主は下内美繪子氏、生産者は檜山郡江差町・山田常雄氏。通算成績は、41戦18勝、2着4回、3着2回。収得賞金は595万9000円となった。

 このところ地方競馬はどこも堅調に推移しており、ばんえい競馬もまた一時のどん底状態を脱して売り上げは回復してきている。地全協の資料によれば、今年度4月の開幕から11月末までの期間では全94日間の開催(前年比-3日)で、145億735万円を売り上げ(2.3%増)1日平均でも1億5433万円余(7.7%増)を記録している。

 また入場人員は20万5252人で1日平均2184人と、入場人員に関しては園田競馬場と同レベルの数字である。ただ、その分、場内での1人あたりの購買単価は4000円と、こちらは全国平均の3分の1以下にとどまる。

 このことからも、ばんえい競馬に関しては馬券購入よりも、レースを楽しむことを目的としたライトなファンが数多く来場していることが窺える。

 ちょうど今の時期は日の出が最も遅く、朝調教の見学には一番適した季節と言える。あたりがまだ暗い時間帯から多くの馬たちが橇を曳き、調教を行なう場面は、いつ見ても絵になる。残念なのは、この朝調教が申し込み制になっていて、人数に制限があることだ。

 広い調教場の一角に、プレハブ小屋を並べるような簡単な方法で良いから、外部からいつでも出入り自由な見学場所を設置してはもらえないだろうか。公正確保の面から難しいのは重々承知しているが、朝の調教風景は、写真愛好家にとっても恰好の被写体になる。

 この時期、真っ暗な中を大型馬が橇を曳く姿は、全身から汗が湯気のように立ち上り、本当に迫力があるし、美しい。セキュリティ上の問題があることはもちろん分かっているが、何とかぜひ検討して頂きたい。観光資源として、レースはもちろんだが、朝調教の魅力も、もっとアピールしては如何だろうか。

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ばんえいダービーを制したアアモンドグンシンの口取り


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表彰式の最中待機するアアモンドグンシン

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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