「父と似ていない長所をもつ馬こそ本当の大物」/ホープフルS
1ハロンの距離延長が死角となる馬とは思えない
ここまでホープフルSの変遷は大きかった。だが、来季のクラシック戦線を展望するとき、阪神JFが同じ阪神1600mの「桜花賞」と強く結びつく関係であるのと同じように、GIになったホープフルSはたちまち同じ中山2000mの「皐月賞」の重要なステップになるはずだ。
GI初年度の昨年の上位馬「タイムフライヤー、ジャンダルム、ステイフーリッシュ」はクラシック本番でもう一歩だったが、また今年も関西の所属馬が「8頭」も遠征してきた。意味のあるGIだからである。
人気のサートゥルナーリア(父ロードカナロア)は、兄の現4歳グローブシアター(父キングカメハメハ)が2016年のGIIだったホープフルSの3着馬。2頭の父は親子なので、全兄弟でも、半兄弟でもなく、非常に似た血をもつ4分の3同血の兄弟の関係になる。同じく4分の3同血の兄リオンディーズ(父キングカメハメハ)は、2015年の朝日杯FSの勝ち馬で、中山2000mの弥生賞の2着馬。
6歳上の半兄エピファネイア(父シンボリクリスエス)は、ホープフルSの前身2012年のラジオNIKKEI杯2歳Sの勝ち馬となったあと、大成して菊花賞やジャパンCを制した。
父がロードカナロアになったサートゥルナーリアは、体型をみると現時点ではマイラー体型の印象だが、前回、馬なりのまま「11秒4-11秒7」の直線を抜け出して楽勝した内容をみると、とても1ハロンの距離延長が死角となる馬とは思えない。大半のロードカナロア産駒は父の長所を大きく受け継ぎ、ここまで2000mで勝ったのは、2世代の勝ち馬140頭のうち、まだ数頭にとどまるという記録がある。
2400mも楽々とこなしている第二のアーモンドアイになれるかどうかはこのレースを見ないと判明しないが、「父と似ていない長所をもつ馬こそ本当の大物」という説もある。全面的に似ていては、ミニ.ロードカナロアに過ぎないという意味だろう。
素晴らしい追い切りをみせたサートゥルナーリアが、こなせる距離の幅ではロードカナロアを上回り、この2000mのホープフルSをステップにクラシック戦線に進んで行くことを期待したい。
相手本線は、東スポ杯2歳Sの中身が光ったヴァンドギャルド(父ディープインパクト)。3着にとどまったものの、初遠征、初コースの1800mで外から抜け出しかかった内容は、勝ったニシノデイジー(父ハービンジャー)と少なくとも互角の価値があった。
1戦のキャリアは心配でも、大きく成長しそうなキングリスティア(父ベルシャザール)は、名牝系を築くエリモシューテング(エリモシック、エリモピクシーなどの母)の一族。パワーにあふれる。種牡馬ノヴェリストの2年目の産駒になる「ジャストアジゴロ、コスモカレンドゥラ」はぜひ買いたい。
産駒は総じて細身で小柄。非力そうな印象を与えるが、父は父母両系ともにドイツ色が濃く、12Fのキングジョージを2分24秒60の大レコードで独走のあと、地元ドイツのバーデン大賞2400mは一転、2分33秒90で勝っている。時計がかかり始めた2000mは合うはずだ。