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【小崎綾也×野中悠太郎×坂井瑠星】若手海外組が集結!「海外に行って改めて感じる“武豊”の偉大さ」第1回

  • 2018年12月29日(土) 18時02分
海外競馬通信

▲(左から)坂井瑠星騎手(21)、小崎綾也騎手(23)、野中悠太郎騎手(22)


短期免許で来日する外国人騎手が目立つ一方で、日本の若手騎手たちが果敢に海外に挑戦しています。2017年8月から4カ月間オーストラリアに滞在した小崎綾也騎手(23)、2018年3月から7カ月間アイルランドで修行した野中悠太郎騎手(22)、2017年11月から1年1カ月の長期間オーストラリアに行っていた坂井瑠星騎手(21)。

遠征中はnetkeibaで連載コラムを担当してくださった3騎手。全員が帰国したこのタイミングで対談が実現しました。貴重な経験を通して、3人それぞれが吸収してきたものとは。各国の競馬事情やお互いの成果を、熱く語り合います!

(取材・文=不破由妃子)


「小崎先輩にやられた〜!」と思いました(笑)


──小崎騎手が2017年8月から4カ月、坂井騎手が2017年11月から1年1カ月、ともにオーストラリアへ、そして野中騎手が今年3月から7カ月、アイルランドに遠征されました。今日はそれぞれの武者修行について、現地でのお話はもちろん、帰国して感じるご自身の成長や遠征の成果など、いろいろ伺っていきたいと思います。

小崎野中坂井 よろしくお願いします!

──遠征期間中は、みなさんnetkeibaさんでコラムを連載されていましたよね。それぞれの現地での奮闘ぶりがよく伝わってきて、毎回楽しみにしていました。

坂井 先にオーストラリアに行かれた小崎先輩のコラムはずっと読んでました。大変なんだろうなぁと想像しつつも、僕も行くことが決まっていたので頼りにしていたところがあります。

 あと、海外に行くと決めたとき、僕もヨーロッパという選択肢もあったので、野中先輩のコラムは興味深かったですね。アイルランドは乗り馬の確保が難しいと聞いていたので、そんな厳しい環境に長いあいだ身を置かれて、すごいなぁと思っていました。

野中 僕も毎回欠かさず読んでましたよ。去年、フランス(6月に行われた若手騎手招待競走に参加)から帰ってきてすぐに海外に行こうって決めたんですけど、そのときに「最近の若手は誰も海外に行ってないから、俺が一番最初に行ってやる!」と思ったんです。でも、その直後に小崎先輩がオーストラリアに行くことが発表されて…。正直、「やられた〜!」と思いましたよ(笑)。

小崎 そうだったんや(笑)。

野中 はい。だから、小崎先輩のコラムを読みながら、海外へ行きたいという気持ちがさらに掻き立てられたところもありますね。

 坂井のコラムは……僕も遠征中だったので、正直「悔しいな」と思いながら読んでました。コラムが更新されるたび、「また勝ったのか」って(笑)。アイルランドとは環境が違うとはいえ、海外で結果を出したわけですからね。素直にすごいなと思います。

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▲坂井騎手のオーストラリア初勝利時の口取り写真 (提供:坂井瑠星騎手)


小崎 野中も瑠星も海外志向が強いことはわかっていたので、行くことが決まったときは「やっぱりな」って思った。瑠星は結果を出したことももちろんすごいけど、最初の段階として、長期を選択した時点で覚悟があるなと。アイルランドを選んだあたり、それは悠太郎も同じだよね。

──それぞれに覚悟を持って海外の地を踏まれたわけですが、みなさん最初にぶつかったのが言葉の壁。ある程度準備をして行かれたと思うのですが、想像以上でしたか?

坂井 そうですね。最初は聞き取りも会話も何もできませんでした。日常のコミュニケーションすらなかなか取れなくて。自分なりに準備をしていったつもりだったんですけどね。いざ行ったら、全然通用しませんでした。

野中 僕も最初はまったく聞き取れなかった(苦笑)。

小崎 僕も最後までそこが一番課題だったなぁ。もっとちゃんとコミュニケーションが取れていたら、もっといろんな経験が積めたんじゃないかと今でも思う。正直、4カ月で言葉を習得するのは厳しかった。

野中 スーパーに行ったとき、買ったものを入れる袋がほしくて「Bag」って言ったんですけど、発音が悪かったみたいで通じなかったんです。まずはそこで心が折れましたね(笑)。

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▲野中騎手「スーパーに行ったとき“Bag”が通じなくて、そこで心が折れました」


小崎 瑠星は1年以上いたわけだけど、言葉のストレスはどのくらいで解消されたの?

坂井 少しずつわかるようになってきたかなぁと思えたのは、半年くらい経ってからですね。1年経って、ようやく少し話せるようになったかなっていう程度です。

野中 僕もそんな感じ。最後のほうになって、ようやく調教や競馬の指示とか作業内容とかがわかるようになった。文法を形として覚えて、そこに必要な言葉を当てはめてやりくりしていた感じだけど。

──今後、海外に行きたいという若手が現れたとき、言葉の下準備としてはどんなアドバイスをしますか?

野中 いくら下準備をしても足りないですよ。できるとすれば、日本にいる頃から英語を話せる人とずっとコミュニケーションを取り続けることくらいかな。

小崎 外国人の彼女を作るとか(笑)。

坂井 そうですね(笑)。あとは、英語の専門学校にみっちり通うとかしないと無理だと思います。僕は向こうに着いてから1カ月くらい学校に行ったんですけど、やっぱりそこで上達した部分が大きいですから。

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▲▼言葉の壁も徐々に跳ね除け、コミュニケーションも取れるように (提供:小崎綾也騎手、野中悠太郎騎手)


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──初めて行く場所で、しかも言葉が通じないなか、みなさん頑張ってこられたんですね。頼もしい!

坂井 やるしかなかったんです。

小崎 そう、やるしかなかった。

野中 人間、追い込まれたら、何とかなるんだなって思いました。

小崎 俺もどうにかなるんやなって思った。しんどいけどな(苦笑)。

「ポケモン!」「ヘイ、ジャパン!」「ユタカ タケ」


──そういえば、「リョウヤ」の発音が現地の人には難しいということで、小崎騎手は「ロイ」って呼ばれていたんですよね。野中騎手と坂井騎手はなんて呼ばれていたんですか?

坂井 僕は普通に「リュウセイ」って呼ばれていました。たしかに発音できない人もいましたけどね、「ルウセイ」みたいな(笑)。

小崎 そうなんや。「リョウヤ」はかなり難しそうやったけどなぁ。

野中 僕も基本的には「ユウタロウ」って呼ばれていたんですけど、向こうでは「ユウ」があなたっていう意味じゃないですか。だから、「タロウ」って呼ばれることも多かったですね。あと、若いアプレンティス(見習い)のジョッキーからは、「ポケモン」とか(笑)。

小崎 ポケモン!?

野中 後ろからいきなり「ポケモン!」って言われて、最初は何を言ってるのか全然わからなかったんですよ。で、パッと振り向いたら、「お前のことだよ!」みたいな(笑)。

坂井 僕も「ヘイ、ジャパン!」とか呼ばれることもありましたね(笑)。

野中 あと、シーミー・ヘファーナンていうジョッキーがいて、彼は僕を見るたび「ユタカ タケ」って(笑)。ただ単に、知っている日本人ジョッキーが豊さんしかいないからなんでしょうけど。

坂井 それは競馬界における“海外あるある”ですね。

小崎 “あるある”やな。

坂井 必ず豊さんの名前が出てきますよね。どこの国に行ってもそうです。

小崎 うん、豊さんを知らない人は絶対にいない。

野中 ですよね。海外に行くと、その偉大さを改めて感じます。

(文中敬称略、次回へつづく)

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