積極性やしぶとさも感じられ、今年の躍進を約束する好内容
めったに見られない大接戦だった。ハンデ戦にふさわしく、勝った5歳牡馬ウインブライト(父ステイゴールド)だけは半馬身抜け出したものの、2着ステイフーリッシュ(父ステイゴールド)から11着馬まで「クビ、ハナ、クビ、ハナ…」差の連続。わずか0秒2差(約1馬身)の間に10頭もがなだれ込む大激戦が展開された。
直後に行われた京都金杯も同じで、4着アドマイヤアルバ(父ハーツクライ)から15着馬まで「クビ、ハナ、クビ、アタマ…」差の連続。12頭がわずか「0秒3差」の間に入線する大接戦。今年はこういう白熱のレースが多い年なのだろうか。
混戦を切り抜けて勝ったウインブライトは、これでスプリングS、福島記念、中山記念に続く重賞4勝目。今回も冬場に向かって確実に調子を上げてきたとされていたが、ここまでの全快走(6勝、2着2回)は、すべて「11月〜3月」の5カ月間に集中することになった。全姉の同じ芦毛馬ウインファビラス(新潟2歳S2着)も、芦毛を伝える母サマーエタニティも、どちらかといえば夏型の成績を残す馬だけに不思議だが、こういう体質は必ずしも似ないのかもしれない。
昨2018年の中山金杯は56キロでクビ差2着惜敗だったが、今年はトップハンデの58キロを課せられながら、自信満々に中団に控えて差し切り勝ち。デビューした2歳夏(16年)は450キロ前後のステイゴールド産駒らしいスマートな体型だった。しかし、しだいにパワフルな身体つきになり今回は490キロ。大接戦のなか、58キロで勝ったウインブライトの実力勝ちは明らかだった。
0.2秒差に10頭が流れ込む大激戦となった中山金杯(撮影:下野雄規)
東西の金杯3勝目。ウインブライトの全6勝をコンビで記録する松岡正海騎手 (16戦中15戦に騎乗)は、陣営が「中山記念連覇」の展望を掲げた翌日、3歳新馬に蹴られ右尺骨骨折に見舞われてしまった。若いジョッキーの回復力のすごさは知られる。松岡騎手も完治するのにそう時間はかからないだろうが、腕の骨折を軽視してはいけない。中山記念は微妙な2月24日。決してムリはしないで欲しい。
ウインブライトは、きわめてタフなステイゴールド産駒。母の父アドマイヤコジーンも2歳時に朝日杯3歳S(旧)を制したあと、故障やスランプを乗り越え、6歳になって安田記念など重賞を3勝もした不屈の成績を残している。
2着した4歳ステイフーリッシュもステイゴールド産駒(現4歳が事実上の最終世代)。まだ本格化する途上と思えるが、前半は後方追走から積極的に自力でスパートをかけ最後まで伸びた内容は、今年の躍進を約束する好内容だった。スパッと切れるタイプではないが、こういうしぶとさが全面に出てきたのは頼もしい。
3着に粘ったのはタニノフランケル(父フランケル)。軽快なスピード型ではないので先手を主張するまでに気合を入れられたが、主導権をにぎってからは巧みにペースを変えつつ自身は「59秒9=59秒4」=1分59秒3。自己のベストタイムを1秒0も短縮してみせた。直線、並ばれてからも以前のように簡単には屈しなかった。軽ハンデが味方しただけでない。こういう粘り腰が出てくれば2,3番手からのレースでも、もう簡単には失速しないだろう。こちらも4歳馬。まだまだ進展する。
4着に突っ込んだアドマイヤリードもステイゴールド産駒。牝馬の56キロは、実際にはウインブライトと同じトップハンデだから、今回の中身は濃い。勝ち馬やステイフーリッシュとは少し異なり、これまでの快走が示すように本当はもっと切れの生かせる軽い芝コンディション向きだろう。東京の方が合う。
もう1頭のステイゴールドの6歳牡馬マウントゴールドは、高い支持を受けたが12着止まり。といっても大接戦で勝ち馬とも0秒5差なので大敗ではなく、スタートもう一歩で本来の先行策が取れなかったのが痛かった。多頭数の経験が乏しかったので、馬混みにもまれた不利が予想外に大きかった。
進展が期待された4歳牡馬タイムフライヤー(父ハーツクライ)は、強気なレース運びは悪くなかったが、今回の1分59秒4は2000mの自身の最高タイムを1秒1も更新しての残念な5着。パンチ不足というより、全体時計がもっとかかるレースの方が総合力の生きるタイプを思わせた。今後も狙いどころの難しい馬になりそうである。
同じく4歳牡馬コズミックフォース(父キングカメハメハ)も難しい。理想的な位置取りで失速してしまった。今回はプリンシパルSを1分58秒2で勝ち、日本ダービーで小差3着に快走した3歳春と遜色ない状態に映ったのだが…。こちらは【2-0-2-0】の東京コースで見直したい。