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【矢作芳人×藤岡佑介】『佑介がGIを勝ったときは、さすがにうれしかったよ』第1回

  • 2019年01月09日(水) 18時02分

▲佑介騎手から読者の皆様へ、新年のご挨拶


読者の皆様、明けましておめでとうございます。本年も「with佑」をどうぞ宜しくお願いいたします。

さて、2019年最初のゲストにお迎えするのは、以前実施した「出演してほしいゲスト」のアンケートでリクエストをたくさん頂戴しました、矢作芳人調教師です。矢作調教師と佑介騎手といえば、スーパーホーネットを思い浮かべる方も多いのでは。あれから約10年、GIジョッキーとなった佑介騎手は、矢作調教師の目にどう映っているのでしょうか。

(取材・文=不破由妃子)


ステイフーリッシュで9年ぶりに矢作厩舎で重賞制覇


佑介 2019年最初のゲストは、矢作芳人先生です。先生、よろしくお願いします!

矢作 こちらこそ、お願いします。去年は久々にウチの馬で重賞を勝ってくれてな(京都新聞杯・ステイフーリッシュ)。

佑介 スーパーホーネットのマイラーズC(2009年)以来、9年ぶりでしたからね。久々に(重賞を)勝ったなぁとしみじみ思いました。先生にも「やっと勝ったな」って言われましたし(笑)。

with 佑

▲9年ぶりの歓喜、ステイフーリッシュで京都新聞杯を制覇 (C)netkeiba.com


矢作 うん。いまやそれくらいの馬じゃないと頼めない騎手になってきちゃったからなぁ。

佑介 とんでもないです!

矢作 とはいえ、京都新聞杯でいうと、向正面までは怒っていたんだけどね(笑)。確かに「スタートが決まったら、前のほうで競馬をしようか」みたいな話はしたけど…。

佑介 そうでしたね。

矢作 ホープフルSのイメージ(後方追走から直線で外から追い込んで3着)が強いかもしれないけど、それだけの馬じゃないからってな。馬場状態も、時計の速い春の京都の典型みたいな感じだったから、いいところに付けられたら…とは思っていたけど、まさか2番手に行くとは(苦笑)。ペースも遅くなかったし、「何してくれてんねん!」と思ったよ。

佑介 次の日に東京でお会いした瞬間、「向正面までは、俺はキレてたからな」って言われたのを覚えています(笑)。ジョッキーって、流れがいいときは悪いイメージが浮かばないから、2番手を取ったときも「こんなに前につけられた、ラッキー!」くらいに思ってたんです。初めて乗る馬だったので、先入観なく乗った結果があの位置だったというか。とはいえ、「先生が途中までは怒ってた」って人づてに聞いたときは、「勝ってくれてよかった…」って心底思いましたけどね(苦笑)。

──去年の佑介さんは、悲願のGI制覇を含め、キャリア最多タイの重賞5勝。勝ち星もグンと伸びましたが、矢作先生の目にはどのように映っていましたか?

矢作 GIを獲るんじゃないかっていう匂いは感じてたけどね。カウンターパンチの一発ではなく、サッカーに例えたら、攻めて攻めて得点の匂いを発しまくりのなかで獲ったっていうのかな。でも、さすがにうれしかったよ。友達の平田(調教師)の馬でもあるし、ああいう勝ち方(直線一気)だったから、最後はすごく声が出たね。

with 佑

▲「最後はすごく声が出たね」矢作調教師も喜んだ佑介騎手のGI制覇


本音をいえば、俺ほどついてないヤツはいない


──その匂いというのは、いつごろから感じられていたんですか?

矢作 俺が感じたのは、去年のはじめくらいからかな。自信を持って乗っているのがわかったし、風格も出てきたように感じたから。去年の佑介は、最初からいいイメージしかなかったよね。

佑介 僕自身、流れがきているのは感じていました。ただ、そういうときに結果を出せないと上には上り詰められないので、流れがきているうちに(GI)勝たなければという気持ちは強かったですね。だから、本当にいいときに勝たせてもらったと思っています。矢作厩舎も、安田記念のモズアスコットとエリザベス女王杯のリスグラシューでGI2勝。意外にも、GIを複数勝つのは、開業以来初めてのことだったそうですね。

矢作 うん。確かにそうなんだけど、悔しい思いしかないね。勝ったことより、負けたレースのことばかり覚えてる。

佑介 そういえば、ヴィクトリアマイルでリスグラシューが2着だったとき、パトロールを見ながら唸ってましたよね(笑)。

矢作 俺、唸ってた(笑)?

with 佑

▲矢作調教師が唸ったというヴィクトリアマイルでの2着 (撮影:下野雄規)


佑介 はい。「も〜、また2着だよ! もういいかげんに勝たせてくれよ…」って(笑)。正直、矢作厩舎は定期的にインパクトのある舞台で勝っているから、GIで2着が多いというイメージがあまりなかったので、先生のその言葉を聞いてちょっと調べてみたんです。そうしたら、GI2着が18回もあって。

矢作 あ、そんなもんだった? もっとあるかと思ってた(笑)。

佑介 ホントですか? 僕はビックリしましたよ。そりゃあ唸りたくもなるわなって(笑)。まぁそのうち4回は僕なんですけど…。

矢作 俺ね、ダービーをハナ差で勝っているから、「ついてない」なんて言ったら怒られちゃうと思うんだけど、本音をいえば、俺ほどついてないヤツはいないと思ってるよ(苦笑)。

with 佑

▲2012年のダービー馬ディープブリランテ、ハナ差でビッグタイトルを奪取した (撮影:下野雄規)


佑介 どう転んでも勝てない着差じゃなくて、運による着差もありますもんね。僕もホーネットを含め、GI2着が9回もあるんです。しかも、去年だけで3回(笑)。馬に関していえば、何かをしたからといって急に変わるものではないですけど、ジョッキーはどうしてもいろいろと考えてしまう。あそこでああしていれば、こうしていればって。

矢作 レースはひとつひとつの状況判断の積み重ねだからね。

佑介 おっしゃる通りです。じゃあどうすればそこを埋められるのかといったら、結局、普段のレースから意識しておくしかないんですよね。もちろん同じ2着でも、やり切った2着と悔しい2着がありますけどね。

with 佑

▲佑介「どうすれば埋められるのか、普段のレースから意識しておくしかない」


矢作 ジョッキーはそうだよな。調教師の仕事でいうと、GIで2着にきたときって、馬の仕上げに関しては失敗していないケースがほとんど。だから、今回はここを反省しようとか、次はこう変えようとか、そういうのはないんだよね。ただただ悔しいだけで。

佑介 厩舎の場合、ああしておけば…という反省点が思い付くくらいなら、GIで2着までこれませんよね。

矢作 うん。もちろんね、仕上げに関して「あ〜、失敗した…」と思ったGIもあるよ。でも、そういうときは、やっぱり成績も全然ダメだから。最近ようやくそういう後悔が減ってきたかなぁと思うけど。

佑介 矢作先生でも“最近”なんですね。

矢作 そうだよ、最近だよ。まぁ3年後も5年後も、「最近ようやくわかってきた」とか言ってるだろうけどね(笑)。

(文中敬称略、次回へつづく)
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JRAジョッキーの藤岡佑介がホスト役となり、騎手仲間や調教師、厩舎スタッフなど、ホースマンの本音に斬り込む対談企画。関係者からの人望も厚い藤岡佑介が、毎月ゲストの素顔や新たな一面をグイグイ引き出し、“ここでしか読めない”深い競馬トークを繰り広げます。

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1986年3月17日、滋賀県生まれ。父・健一はJRAの調教師、弟・康太もJRAジョッキーという競馬一家。2004年にデビュー。同期は川田将雅、吉田隼人、津村明秀ら。同年に35勝を挙げJRA賞最多勝利新人騎手を獲得。2005年、アズマサンダースで京都牝馬Sを勝利し重賞初制覇。2013年の長期フランス遠征で、海外初勝利をマーク。2018年には、ケイアイノーテックでNHKマイルCに勝利。GI初制覇を飾った。

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