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強度の父母相似配合、ロードアドミラル

  • 2019年01月09日(水) 12時00分
●アヴァターラ(牡 栗東・池江泰寿 父ロードカナロア、母マトゥラー)

 母マトゥラーは現役時代2戦未勝利ながら、ドリームジャーニー(09年有馬記念-GI、09年宝塚記念-GI、06年朝日杯FS-GI)、オルフェーヴル(11年三冠、11・13年有馬記念-GI、12年宝塚記念-GI)の4分の3妹にあたる良血。2代母オリエンタルアートの子でGIを勝った大物はステイゴールドを父に持つ上記の2頭だけだが、デビューを果たした10頭中8頭が中央で勝ち上がっているように、やはり非凡な何かを伝えていることは間違いない。

 マトゥラーの子はこれまで3頭がデビューし、現4歳のマハヴィルが6戦1勝という成績。ただ、母は血統的にスタミナ寄りなので、父ロードカナロアのスピードはポジティヴに作用しそう。これまでの3頭とは違った成績を残すのではないか。芝向きのマイラー。

●アースリーチャンス(牝 美浦・田中博康 父ネオユニヴァース、母パーフェクトチャンス)

 現1600万クラスのワイルドカード(父ストリートセンス)の半妹。母の父Unbridled's Songはサンデー系と相性抜群で、このパターンの配合からこれまでにスワーヴリチャード(18年大阪杯-GI)、ダノンプラチナ(14年朝日杯FS-GI)、トーホウジャッカル(14年菊花賞-GI)などコンスタントに活躍馬が出ている。

「ネオユニヴァース×Unbridled's Song」の組み合わせは、少ないサンプルからメイショウマルマル(3勝)、ウインネオルーラー(2勝)が出ている。母はDr.FagerとIn Realityのニックスを継続した好配合だが、少し硬めのアメリカ血統で構成されているので、兄と同じくダートで素質を開花させるタイプだろう。距離は1600〜1800mが良さそうだ。

●プレシャスメタル(牡 栗東・吉村圭司 父ゴールドアリュール、母ミスアドーラブル)

 半姉サマリーズ(父ハードスパン)は全日本2歳優駿(Jpn1)とクラスターC(Jpn3)の勝ち馬。母ミスアドーラブルは旺盛な競走意欲と先行脚質を伝えるSeattle SlewとMr.Prospectorの組み合わせのほか、Raise a Native 2×4というスピード型のクロスを持っている。スピードに秀でた気のいい先行タイプ、といったイメージだ。これにゴールドアリュールを掛けて誕生したのが本馬。

 父はすでに2017年に死んでしまったが、キングカメハメハと並んでわが国最高のダート種牡馬として君臨した馬で、エスポワールシチー、スマートファルコン、コパノリッキー、ゴールドドリームなど多くの大物を出している。本馬は母がスピード色の強い配合構成なので、グレイスフルリープのようなスピードを活かした競走馬となりそうだ。

●ラヴアフェアー(牝 美浦・古賀慎明 父ディープインパクト、母リーサルヒート)

 母リーサルヒートはハリウッドオークス(米G2・AW8.5f)、サンタパウラS(米G3・AW6.5f)の勝ち馬で、レディーズシークレットS(米G1・AW8.5f)では女傑Zenyattaの2着と健闘した。母の父Unusual Heatは北欧の女傑Rossardの息子で、米G3で2着となった程度の競走馬だったが、種牡馬となると成功を収め、米古牡馬チャンピオンに輝いたAcclamation(米G1を6勝)をはじめ多くの活躍馬を送り出した。

 リーサルヒートの他には、ゴールデンドックエー(ラスヴァージネスS-米G1)が輸入されて繁殖牝馬となり、アルバートドック(16年小倉大賞典-GIII、16年七夕賞-GIII)とリライアブルエース(18年中京記念-GIII・3着)を産んでいる。

 リーサルヒートの初子トータルヒート(父Street Cry)はOPクラスまで出世しており、2番子リーサルストライク(父Smart Strike)は2勝を挙げた。前記のアルバートドックとリライアブルエースの父はディープインパクト。つまり、本馬と同じ組み合わせから誕生している。芝向きの中距離タイプとして楽しみな存在だ。

●ロードアドミラル(牡 栗東・高野友和 父ロードカナロア、母キャサリンオブアラゴン)

 メイズオブオナー(父ハーツクライ/18年愛知杯-GIII・5着)の半弟。母キャサリンオブアラゴンはRumplestiltskin(全欧2歳牝馬チャンピオン)の3/4妹、ラヴズオンリーミー(リアルスティールの母)の半妹で、2代母Monevassiaは大種牡馬Kingmamboの全妹、3代母Miesqueは80年代世界最強マイラー、という超良血牝系に属している。

 本馬の父はロードカナロア。同馬の父系先祖はKingmamboなので、本馬はKingmambo=Monevassia 3×2という全兄妹クロスを持っている。

 さらに、父の母レディブラッサムと、母の父Holy Roman Emperorは、近い世代にNorthern Dancer、Secretariat、His Majestyを持っているので、レディブラッサム≒Holy Roman Emperor 2×2と表記することもできる。強度の父母相似配合だ。これだけ極端な配合はめったにないのでどんな競走馬となるのか興味深い。当たれば大きいだろう。芝向きのマイラー。

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68年生まれ。血統専門誌『週刊競馬通信』の編集長を務めたあと97年からフリー。現在は血統関係を中心に雑誌・ネットで執筆活動を展開中。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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