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異色父系のノヴェリスト産駒の力強さを見せてくれた/京成杯

  • 2019年01月15日(火) 18時00分

着差以上の差を感じさせたフットワーク


 半世紀以上も前の1961年から初春の中山1600m(東京時代もある)で行われてきた「京成杯」が、皐月賞と同じ2000mになったのは1999年からのこと。その初年度勝ち馬オースミブライトが皐月賞でテイエムオペラオーの2着となり、今後は春のクラシックとの結びつきが強くなると思われた。

 みんな休みなく出走していた1600m当時の初期の記録をみると、初めて凱旋門賞に挑戦したスピードシンボリを筆頭に、アローエクスプレス、カミノテシオ、テスコガビー、クライムカイザー、テンモン…など、無数の名馬が頭角を現したのが京成杯の歴史だった。

 ところが、2000mになったこの20年間の出走馬で春のクラシックで3着以内に快走したのは、「18年ジェネラーレウーノ、10年エイシンフラッシュ、07年サンツェッペリン、05年アドマイヤジャパン、シックスセンス、04年キングカメハメハ」。オースミブライトを加えて20年間の出走馬全部の中でわずか7頭だけ(勝ち馬はわずか2頭)。同じコースの、同距離の路線重賞とすると、ちょっと物足りないところがあった。

 今年の勝ち馬は、ここがまだ2戦目の新星ラストドラフト(父ノヴェリスト)。キャリア1戦だけの勝ち馬が誕生したのは、1600m当時を含めた59年の歴史の中で初めてになるが、今週のAJC杯に出走する菊花賞馬のフィエールマンの記録(3戦のキャリア、経験1800mまで)や、フサイチコンコルドの日本ダービーと比べると、さして至難ではなかったろう。

重賞レース回顧

史上初キャリア1戦で京成杯を制したラストドラフト(撮影:下野雄規)


 同馬は、ドイツが守り続け育ててきたブランドフォード系モンズーン産駒の種牡馬ノヴェリストの、日本での初の重賞勝ち馬でもある。血統辞典を頼りにさかのぼると、あまりにも遠い時代のプリメロ、直仔トサミドリ、さらにはパーシアなどの父系として知られるブランドフォード(1919)の父系から、この京成杯の勝ち馬が出現したのは、なんと第一回1961年のモンテカルロ(父トサミドリ)、1964年のトキノパレード(父トサミドリ)、そして1981年テンモン(父リマンド)、以来のことになる。

 主流父系に属する馬だけが活躍してきた最近の日本の競馬に、果たしてちょっと異色父系の産駒ラストドラフトはクサビを打ち込むことができるだろうか。といって、もう直父系という考え方はそれほど大きな意味はないのではないか。ラストドラフトの母の父は現代のディープインパクト。祖母の父マルジュはその3代前がノーザンダンサー。3代母の父もターントゥ系であり、古典的なのは父方の一本のラインだけではないか、とはいえるのだが…。

 ラストドラフトは、スローの新馬1800mを上がり33秒1で抜け出した。その内容は、桜花賞馬マルセリーナ譲りの切れ味と、光るレースセンスによるところ大と映ったが、今回はフットワークが大きく力強くなっていた。ルメール騎乗で2番手につけたので、マークを一手に受ける展開。葉牡丹賞を1分59秒8で2着していたO.マーフィー騎乗の2番人気馬ランフォザローゼス(父キングカメハメハ)は、勝ち馬を終始マークしていた。だが、最後は振り切られた。

 ランフォザローゼスもまだここが3戦目。まだまだ成長途上なので逆転は十分に可能だが、2戦目のラストドラフトは初コースだった。ゴール前のフットワークをレースリプレイで確認すると、着差以上の差を感じさせたところもある。

 この世代の牡馬は、最初は必ずしも注目馬の中心ではなかった馬も合わせ、重賞2勝のアドマイヤマーズ(父ダイワメジャー)が4戦4勝。サートゥルナーリア(父ロードカナロア)が3戦3勝。ヴァルディゼールが2戦2勝。そしてラストドラフトが2戦2勝。無敗の重賞勝ち馬が、相手の強化した重賞になるほど、評価を高める勝ち方を示しているのが特徴。まだ新星も出現するだろう。

 ランフォザローゼスが決して底をみせたわけではないのと同様、1番人気で4着にとどまったシークレットラン(父ダンカーク)も、あまりにも身体を良くみせたあたり、ちょっと余裕残りの馬体(デビューしてもう36キロ増の500キロ)が響いて動けなかったのかもしれない。当然、巻き返してくる。身体にスケールがある。

 冬場で正月をはさんで開催も変則日程。この時期、まだキャリアの浅い3歳馬が、みんな絶好調などということはありえない。3番人気のダノンラスター(父ディープインパクト)は、ひと息入ったあとだったためか、今回は当日の気配が良くなかった。M.デムーロ騎手が途中からムリをしなかった印象もある。

 気配の悪くなかった5番人気のカテドラル(父ハーツクライ)は、簡単に捕まって抵抗できなかったあたり、2000mは長いかもしれない。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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