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「決してフロックではない、実力で勝った」ことを証明するには/AJCC

  • 2019年01月19日(土) 18時00分

もし勝てば少し古いファンが喜びそうな42年ぶりの記録


 79回の歴史を持つ菊花賞を、史上最少のキャリア3戦で勝ったフィエールマン(父ディープインパクト)は、同時に史上初めて距離経験1800mまでしかない型破りな菊花賞馬だった。

 そのフィエールマンが今回はまた、ここまで59回の歴史を持つアメリカJCCでめったにない記録に挑戦する。

 前年の菊花賞馬が有馬記念などに出走せず、ひと息入れ、次走に1月のアメリカJCCを選んだケースは史上3頭だけ。73年タケホープ(1着)、75年コクサイプリンス(2着)、76年グリーングラス(1着)である。

 かつて菊花賞は11月中旬だった。またアメリカJCCは中山2500m〜2600m、あるいは東京2400mの時代があり、完全な長距離区分。前出の3頭はすべて東京2400m当時の出走馬である。そういう背景があったから、有馬記念などに出走しなかった菊花賞馬が少し休み、アメリカJCCから始動することは自然なローテーションでもあった。

 そのため、この形は古い時代に限られていたが、今回のフィエールマンは1976年のグリーングラス以来の「菊花賞→AJCC」出走であり、もし勝てば少し古いファンが喜びそうな42年ぶりの記録なのである。

 また、「菊花賞→AJCC」を連勝した2頭には必勝の伏線があった。ハイセイコーに勝ったタケホープの菊花賞は6番人気。テンポイント、トウショウボーイに勝ったグリーングラスの菊花賞は12番人気だった。

 だから、「決してフロックではない、実力で勝った」ことを証明するには、明けて4歳の始動となったAJCCは「負けてはならない」1戦だったのである。たまたまだが、フィエールマンの菊花賞も伏兵7番人気である。

 フィエールマンの母の父グリーンチューンは、その父グリーンダンサー(72)、さらにその父ニジンスキー(67)。現在、あれだけ隆盛を誇ったニジンスキー直系の種牡馬群は世界でも少数派になり、日本ではほぼ消滅に近い状態であることは知られるが、グリーングラス(73)、タケホープ(70)の時代は、ニジンスキーの持ち込み馬マルゼンスキー(74)が出現し、世界に「ノーザンダンサー→ニジンスキー系」の波が押し寄せたころだった。

 フィエールマンの母リュヌドール(仏産)の血統図にはグリーンチューンだけでなく、ファバージ→ラインゴールド(69)。さらにはマリーノ。輸入されたダンディルート(72)、ノーリュートなどの父リュティエの名前が並んでいる。日本風にいうともう古典の世界に近い血統図だろう。でも、母方の血統構成は古くとも、たった3戦の戦歴で菊花賞を勝ったフィエールマンは、明らかに現代だからこそ誕生したチャンピオンなのである。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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