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また一段と強くなった姿を見せた素晴らしい勝利/根岸S

  • 2019年01月28日(月) 18時00分

更に相手が強くなるフェブラリーSで通用するのか


 4歳せん馬コパノキッキング(父スプリングアトラスト)の鮮やかな差し切りが決まり、この3歳後半からの上昇馬は9戦【7-1-0-1】となった。昨年10月にオープン入りして急激に相手強化なのに、「OP特別→GIIIカペラS→GIII根岸S」。驚くことに、相手が強くなるたびに一段と強くなっている。

 今回は出負けすることなく互角のスタートから中団の外で機をうかがい、直線、先にインから抜け出しかかったユラノト(父キングカメハメハ)をきれいに差し切った。昨秋から480キロ前後に落ち着いた身体は、芝の中=長距離タイプを思わせるスマートな体型で、トップクラスのダート巧者の中に入ると華奢に映るくらいだが、乾いたダートでもシャープに伸びるから素晴らしい。

 騎乗して日本での初重賞制覇を飾ったO.マーフィー騎手は「ドバイのゴールデンシャヒーン(ダート1200m)でも好勝負」と称えたが、小林祥晃オーナーはかねてからの希望通り、藤田菜七子騎手とのコンビで「フェブラリーS出走」を明言した。

 ここまでの9戦は1400m以下。今回のレースの後半3ハロンは「12秒2-12秒0-12秒2」=36秒4。最後まで鈍ることなく伸びたコパノキッキングの上がりは「35秒4」。稍重くらいのもっと走りやすいダートなら、マイルもこなせると思えるが、「インティ、オメガパフューム、ゴールドドリーム、ノンコノユメ…」などが出走を予定するフェブラリーSで勝ち負けできるだろうか。

 追いまくって相手をねじ伏せるようなパワー型ではないので、菜七子騎手に合うタイプと思える。今回と同じような正攻法でなくとも、直線の切れを生かせるダート巧者でもある。父スプリングアトラスト(その父シルヴァーデピュティ)は、G1ドンH(9F)など5勝中4勝が8〜9F。母方も短距離系というわけではない。

 祖母シャルナ(父ダルシャーン)は輸入牝馬。9頭の産駒を送っているが、8番仔にあたるセラドン(父は日本のゴールドヘイロー)だけが一時輸出の形になったUSA産で、USAで購入されたコパノキッキングは外国産馬。デビュー戦からすでにせん馬。下の妹2頭はインド産とされる。不思議な背景を秘めるコパノキッキングは、これからさらに驚くような競走成績を残すかもしれない。強運の小林オーナーの不思議も重なる。

重賞レース回顧

直線で伸びを見せ見事勝利したコパノキッキング(撮影:下野雄規)


 2着ユラノトは、これでオープンのダート「5,1,4,2,2」着。1400-1800mで一度も大崩れしていない。ダートのオープンの層は厚く、今回の2着賞金を加算しても、陣営の目標とするフェブラリーS出走「OKの賞金」に達したとはいえないが、休み明けで好走した武蔵野S(1分35秒2)の内容から、経験は少なくても1600mは合うだろう。母コイウタはハイレベルだったヴィクトリアマイルの勝ち馬でもある。

 クインズサターン(父パイロ)は初の1400mをこなしてみせたが、またまた3着。これでオープンクラスで掲示板に載ること「11回目」の安定性を示したが、残念ながらどうしても勝てないだけに、賞金額からフェブラリーS出走は難しい。

 人気の中心だったサンライズノヴァ(父ゴールドアリュール)は、毛ヅヤも良く仕上がりに不安なしと映ったが、凡走のなかったこの距離にしては珍しく8着にとどまってしまった。「心もち余裕残りの馬体だったかもしれない」という見方もあったが、前回が1800mとはいえ後方から差詰めだけのレースに終わったこともあり、スタートの小さな出負けはいつもことで関係ないが、悠然と構えて勝った同じ1400mのグリーンチャンネルCなどに比べると、動き出しが早かったように見えた。豪快な追い込み一手の戦法は荒々しいように見えて、サンライズノヴァには同馬なりの独特の呼吸のリズムがあるのだろう。

 快速マテラスカイ(父スペイツタウン)は、大外16番の不利を感じさせない好スタートから軽快に単騎逃げに持ち込めた。パサパサのダートが合わなかったのが最大の敗因だが、「35秒0-47秒1→」のペースで行って後半「38秒1」。捕まってからはムリをしなかった結果であり、負けたときの逃げ馬は、3着も12着も同じようなものだとはいうが、がんばって粘ろうとする気力がなかったのが気になった。

 直前の京都で行われた「シルクロードS」。快勝した4歳ダノンスマッシュ(父ロードカナロア)は、これで芝1200m【3-1-0-0】。母スピニングワイルドキャット(父ハードスパン)とほとんど同じ血統構成の兄は、名種牡馬になりつつあるウォーチャント(父ダンチヒ)。祖母ハリウッドワイルドキャットの競走成績もすごい。これから大変なスピード馬に育ちそうである。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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