一戦ごとにさらなる成長を遂げるだろう
4歳の上がり馬インディチャンプ(父ステイゴールド)の鮮やかな初重賞制覇だった。3歳春にGIII毎日杯1800mをブラストワンピースの小差3着、GIIIアーリントンC1600mでは今回も対戦したタワーオブロンドン(父レイヴンズパス)の4着になった注目馬。上がり馬というより、期待馬がようやく本物になってきたというべきだが、直線一気を決めた前回の元町Sといい、今回のレースレコード1分31秒9の内容といい、この急上昇でGI安田記念の有力馬となった。
まだ今回が8戦目【5-1-1-1】。体つきも、チャカつく仕草(少し出負け)などいかにも若い印象を与えるから、これから一戦ごとに上昇するだろう。道中、巧みに馬群をさばきながらロスのないインを追走。直線もスムーズに抜けた福永祐一騎手の好騎乗も光った。着差は半馬身でも、前半の追い上げで脚を使っているから完勝といっていい。
2、3歳馬限定のマイル戦以下の重賞を別にすると、ステイゴールド産駒の古馬GI、GII勝ちは牝馬アドマイヤリードのヴィクトリアマイル1600m以外、すべて1800m以上に集中する。もし、インディチャンプがマイルを中心の活躍馬として大成するなら、中長距離向きの後継種牡馬が並ぶ「ステイゴールド系種牡馬」は厚みを増すことになる。
輸入牝馬の祖母トキオリアリティー(父メドウレイク)は多産で、その産駒は十数頭もいるが、だいたいはスピード型に出て、香港の2000mGIを制したネオリアリズム、今回出走して11着だったレアリスタ(父ステイゴールド)以外は、アイルラヴァゲイン、リアルインパクトなどマイル以下を理想とする産駒が多かった。
インディチャンプの母ウィルパワー(父キングカメハメハ)の4勝もすべて1400m以下だが、ステイゴールドの事実上の最終世代になるインディチャンプが高いマイル適性を示してくれるのは(2000m級もこなせると思えるが)、種牡馬ステイゴールド系にとっては大歓迎である。
乾燥した芝コンディションのためこの時期にしては時計の速い馬場で、なおかつ、つつかれるようにハナを切ったショウナンアンセム(父ジャングルポケット)の作ったペースはきつかった。前半は「34秒5」でも、そこから流れの落ち着く部分がなく、このメンバーで1000m通過「57秒2」は厳しい。
前半の追い上げで脚を使いながらも直線でスムーズに抜け完勝したインディチャンプ(撮影:下野雄規)
3番人気のロジクライ(父ハーツクライ)は、うながすようにショウナンアンセムを行かせたのは作戦通りだったが、途中からヤングマンパワー(父スニッツェル)が外から被せてきたのが誤算だった。自身の1000m通過「57秒4」は、富士Sを1分31秒7で勝った際より「0秒4」速いだけだが、すんなり2番手の富士Sとは異なり今回は半ば競り合いながらなので、数字以上にきつかった。これでオープンのマイル戦を5回も「1分32秒6以内」で乗り切ったことになるが、その成績【1-1-1-2】。相変わらず展開に注文がつく。
2番人気に支持されたタワーオブロンドンはうまくバラけた好位追走になって、自身の1000m通過は「58秒1」。最高の展開になったが、追ってスパッと切れなかった。プラス10キロ(自身最高の526キロ)の馬体は心もち余裕残りには映ったが、冬場だけにとくに太めではないだろう。0秒4差の5着なら凡走ではないが、アーリントンCで差し切ったインディチャンプに逆転されたのはショック。1600mも大丈夫だが、1400mの方がもっと合う印象も残した。
馬群を割るように突っ込んで2着の牝馬レッドオルガ(父ディープインパクト)は、いかにもエリモピクシー産駒だった(クラレント、レッドアリオン、レッドアヴァンセなどの下)。オープンに昇格してまだ2戦目。別定54キロの男馬相手。自身の最高時計を1秒0も短縮している。これで東京芝は【2-1-2-0】。全姉レッドアヴァンセは5歳の昨春、ヴィクトリアマイルを「ハナ、クビ」差の3着。展望は一気に広がった。
サトノアレス(父ディープインパクト)は、昨年と同じ柴山騎手で、昨年の東京新聞杯のリプレイのような惜しい3着。17年11月のキャピタルS2着から、昨年の安田記念4着を含み、東京芝1600mでは4戦連続自身の上がり3ハロンは決まって「33秒3か33秒4」という珍しい記録を続ける。崩れないが、なぜか勝てない。
レイエンダ(父キングカメハメハ)は、ここまでの5戦はすべてスローに近い流れの1800m以上。いきなり1000m通過57秒2の流れに対応するのは無理だったが、押して追走しなかったとはいえ「59秒7-32秒8」=1分32秒5。次は大きく変わることだろう。