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【無料】オジュウに沸いた阪神競馬場

  • 2019年03月12日(火) 18時01分
馬ニアックな世界

オジュウチョウサンが障害界に帰ってきた!


先週は異例づくしの土曜日となりました。障害界の絶対王者・オジュウチョウサンが11カ月ぶりに障害レースに登場。阪神スプリングジャンプ(J・GII)のパドックは平地GI並みの人だかりができ、ターフィーショップ前のオジュウチョウサン特設ワゴンも大盛況。入場者数は前年比約130%で、最終レース後に行われた「障害ジョッキーと行くバックヤードツアー」は過去最高の803名(定員50名)の応募がありました。「オジュウフィーバー」が吹いた阪神競馬場の異例づくしの1日をレポートします。


11カ月ぶりに障害復帰、パドックには人だかり


 パドックに掲げられたオジュウチョウサンの横断幕。その周囲には同じく阪神スプリングジャンプに騎乗する騎手やジャンプレースを応援する幕がズラリと並びました。

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オジュウだけでなく色とりどり様々な横断幕が並ぶ


 普段なら人もまばらな土曜日の13時15分頃。パドックにオジュウチョウサンが姿を現すと平地GIに負けず劣らずの人だかりができました。中には「オジュウチョウサンを追いかけて、福島・中山・東京・阪神と来ました」というファンも。カメラのシャッター音が鳴り響き、カメラマンは「ファンのシャッター音が平地GI並みにすごい」と驚きました。

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この人だかり!ファンは絶対王者の出走を待ち望んでいました


 単勝オッズは1.1倍の圧倒的1番人気。ファンからの視線を一身に浴びながらも、堂々と歩いているように見えました。しかし、和田正一郎調教師は「寝ているんじゃないかなって雰囲気でした」と振り返ります。「でも、騎手が跨るとやる気がみなぎってきましたね」という状態で本馬場入場へ。

 長沼厩務員がオジュウの首筋をポンポンと撫でてから引き手を離すと、約11カ月ぶりにレースでのコンビが復活した石神深一騎手はオジュウと共に直線コースを逆行し、最終障害へと歩いて行きました。

 和田師が双眼鏡越しに見つめる先で石神騎手は「ゲートを切るまで、すごくワクワクしていました。早くスタートしたいなって」と久しぶりのコンビ復活に胸躍らせました。

 13時50分、障害レース専用のファンファーレが鳴り響き、いよいよスタート。

 ハナに立ったのは中山大障害で僅差2着のタイセイドリームと平沢健治騎手。「この馬のレースをするつもりでしたが、特に逃げ馬がいなくて結果的に先頭になりました。ただ、初めて逃げる形になって前半はフワフワしてペースがちょっと遅かったです」

 11番枠からスタートしたオジュウは最初のコーナー手前でスーッと内ラチ沿いに導かれ、コーナリングで3番手内に。その外には「スタートが良かったけど、初めての距離で力みながら走っていました」(難波剛健騎手)というスマートカルロスが位置取りました。

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内の3番手で勝機をうかがうオジュウチョウサン


 オジュウはそのまま逆回りをインコースでレースを進め、たすきコース・竹柵障害の踏み切りでは「1歩を入れたら、障害手前ギリギリの所での飛越になりました」(石神騎手)と言いますが、パッと見には分からない程度で難なくクリア。

 たすきコースではインコースを巡って駆け引きが繰り広げられることもありますが、某騎手は「コースロスを考えればここでインを取りたいけど、肝心の勝負所で包まれて動けなくなるリスクもあるので、そこをよく考えなければいけないんです」と話します。ここで石神騎手はインを取りに行かず、順回りで外を通ることを選択。3コーナー手前で馬なりで先頭に並びかけて行くと、場内からは歓声が上がりました。

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直線で先頭に立つと場内からは大歓声!


「オジュウチョウサンはじーっとしているのに、こちらは押し気味で脚色の差がありました」とは並びかけられたタイセイドリーム平沢騎手。

 それでも食らいつき、2頭は馬体を並べたまま4コーナーを回って最終障害へ。ところが、最終障害でオジュウはちょっと躓くような格好を見せます。一瞬、悲鳴にも似たどよめきが起こりましたが、「体幹の強さと柔軟性で転ばずに走ってくれました」(石神騎手)とすぐに体勢を持ち直すと、粘るタイセイドリームを突き放して2馬身半差で障害重賞10連勝を決めました。

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ファンの歓声に応える石神騎手


 2着のタイセイドリーム平沢騎手は「この馬も力は示しているんですが、同じ時代にバケモノがいましたね……」とオジュウを称えました。

 J・GIIでは普段行われないテレビカメラを回しての共同会見がレース後に行われ、石神騎手は「8歳になりましたが、調教や返し馬でも僕のことを落とそうとしたり、いい意味で元気いっぱいです。

 平地を経験しても変わらないことが逆にいいんだと思います。平地を使ったから落ち着いたというより、それでも元気っていうのがいいですね。今日は飛越で3箇所くらいミスがあったり、久しぶりっていう手応えでしたが、賢い馬なので次がまた障害ならいいパフォーマンスをしてくれると思います」と話しました。

 次は天皇賞・春か中山グランドジャンプか、はたまた別のレースか。これからのオジュウチョウサンの動向に目が離せません。

競馬リポーター。競馬番組のほか、UMAJOセミナー講師やイベントMCも務める。『優駿』『週刊競馬ブック』『Club JRA-Net CAFEブログ』などを執筆。小学5年生からJRAと地方競馬の二刀流。神戸市出身、ホームグラウンドは阪神・園田・栗東。特技は寝ることと馬名しりとり。

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