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ばんえい記念にかかるさまざまな記録

  • 2019年03月19日(火) 18時00分

大一番の後にもうひとつ注目を集める記録が


 中央でも地方でも平地の競馬ではクラシックの前哨戦が盛り上がりを見せているが、4月から翌年3月までが1シーズンのばんえい競馬は、3月24日にいよいよシーズン最後の大一番、ばんえい記念を迎える。

 登録は8頭。このレース3連覇のかかるオレノココロを筆頭に、同世代のライバル・コウシュハウンカイ、2016年の覇者で引退レースとなるフジダイビクトリー、2歳時から重賞を勝ちまくり7歳にして満を持してのばんえい記念初挑戦となるセンゴクエース、高重量戦にも対応できるようになったシンザンボーイなど、この大一番を目指してきた有力馬が揃いそうだ。

 中でも絶対的な存在となっているのがオレノココロ。もし勝てば、ばんえい記念3連覇は、スーパーペガサス(4連覇)、トモエパワーに続いて史上3頭目、ばんえい記念3勝ということでも史上6頭目となる。

 さらにオレノココロは、ばんえい記念を勝てば重賞通算22勝目となり、2013年にばんえい記念を制して引退したカネサブラックによるばんえいの重賞最多勝記録(21勝)更新もかかっている。カネサブラックは11歳で引退したが、オレノココロはまだ9歳。仮に今回負けるようなことがあっても、急遽の引退ということでもない限り、重賞最多勝記録の更新はほぼ確実だろう。

喜怒哀楽

ばんえいの重賞最多勝利記録更新がかかるオレノココロ(写真は19年帯広記念優勝時、提供ːばんえい十勝)


 カネサブラックとオレノココロで共通しているのは、2歳シーズン(2歳4月〜3歳3月、以下、○歳シーズンというのは同様の意味で用いる)には重賞に出走していないこと。ともに何度か出走した特別戦では、カネサブラックは4着が最高、オレノココロは掲示板に載ることすらでず、重賞とは無縁だった。

 重賞初制覇は、カネサブラックが重賞初挑戦だった3歳9月のばんえい大賞典、オレノココロは3歳12月のばんえいダービーだった。その後、両馬とも徐々に強さと安定感を増していき、「現役最強」「絶対王者」と言われるようになったのも似ている。

 サラブレッドに比べて成長がゆっくりなばん馬は7〜8歳頃にピークを迎えると言われており、2歳の早い時期から活躍するより、じわじわと成長したほうが長く一線級で活躍できるということなのかもしれない。

 オレノココロのシーズンごとの成績を以下に示す(カッコ内は重賞勝ち)。

 2歳:24戦5勝(重賞出走なし)
 3歳:28戦12勝(ばんえいダービー、ポプラ賞)
 4歳:18戦6勝(銀河賞、天馬賞、チャンピオンC)
 5歳:18戦5勝(オーズパーク杯、ドリームエイジC、帯広記念、チャンピオンC)
 6歳:17戦4勝(オッズパーク杯、ばんえいグランプリ、帯広記念、ばんえい記念)
 7歳:20戦5勝(旭川記念、岩見沢記念、チャンピオンC、ばんえい記念)
 8歳:14戦6勝(旭川記念、ばんえいグランプリ、ドリームエイジC、帯広記念)

 2、3歳シーズンは数多く出走しているが、4歳以降は1シーズンに20戦以下。そして特徴的なのは、5歳シーズン以降は毎年きっちり重賞を4勝、一方で重賞以外のレースでは1シーズンで2勝以下しかしていないこと。特に6歳シーズンは4勝すべてが重賞だった。これはばんえい競馬のチャンピオン級の特徴で、重賞を勝って賞金を稼ぐと重量を課されるため。また高重量戦に強い馬は、比較的基礎重量が軽い一般線や特別戦のペースには対応できなくなるということもある。

 オレノココロがもし今回のばんえい記念を勝てば、1シーズンの重賞勝利が5勝となって、自身の最多。同時にシーズン15戦7勝となれば、勝率46.7%は、3歳シーズンの42.9%を上回り、1シーズンの勝率で自身最高を記録することにもなる。こうした数字を見ても、オレノココロがいかに年齢を重ねるごとに安定感を増してきたかがわかる。

 ただ残念なことに、カネサブラックやオレノココロの時代は、賞金的に恵まれていないということがある。ばんえい競馬における超一流馬の証として言われる『1億円馬』(生涯賞金1億円以上)はこれまで7頭いるが、カネサブラック、オレノココロは、歴代重賞最多勝記録を達成しながら、それぞれ4440万円、4977万8000円しか稼いでいない。

 最近1億円を達成したのは、2006年5月の出走を最後に引退したスーパーペガサス。まさに2006年度はばんえい競馬が存廃に揺れた年で、2007年度からは帯広市の単独開催で存続したが、賞金は大きく引き下げられた。歴史に残るほどの活躍を見せても、カネサブラックやオレノココロが賞金1億円に遠く及ばないのはそのため。オレノココロが最初にばんえい記念を勝った2017年から1着賞金が1千万円に復活したが、そのほかの主要重賞の賞金は、スーパーペガサスまでの時代にはまったく追いついていない。

 さて、3月24日のばんえい記念当日には、もうひとつ楽しみな記録が期待される。ばんえい記念の次のレース、大平原特別に登録のあるホクショウマサルの連勝記録だ。

 ホクショウマサルは、2月16日に挙げた勝利で20連勝となり、1997年4月にサカノタイソンが達成した19連勝という、ばんえいの連勝記録を更新。まさに昨日(3月18日)挙げた勝利で連勝を23にまで伸ばしている。

 ホクショウマサルは、2歳シーズン三冠目のイレネー記念を制し、ばんえいダービーも制するなど世代トップを争ってきた。しかし喘鳴症を患い手術。2年4カ月もの長期休養から、7歳になった昨年7月に復帰した。

 ばんえい競馬は、過去2シーズンの賞金で格付けされるため、ホクショウマサルの復帰後は格付け賞金ゼロとなって、5歳以上では最下級のB4級からのスタート。まさに格の違いを見せるレースぶりで連戦連勝。23連勝となった前走ではA2級まで格付けを上げている。

 登録のある大平原特別に出走となれば、ばんえい記念の余韻を引き継いだまま、連勝記録の更新が注目となる。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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