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100頭を超えるPOG取材 限られた時間での過密スケジュール

  • 2019年03月21日(木) 18時00分

新種牡馬たちの仔を間近で、いち早く見られる醍醐味


 かれこれもう20年にはなるだろうか。仮想馬主ごっこ、すなわちPOGを楽しむ競馬ファンは今や全国各地にかなりいて、そのための攻略本、写真入り解説書もまた数多く刊行されている。それぞれグループごとに異なるルールを設定しているようだが、基本的には2歳戦のスタートから翌年のダービーまでの1年間が対象で、デビュー前の2歳馬の中からそれぞれ“仮想所有馬”を選び(1人10頭が多いという)、仲間内で各々の所有馬の成績を競うというお遊びである。

 ダービー前に仲間内で集まり、ドラフト会議を開いて所有馬を指名し合うというのが一般的なようで、いきおいノーザンファーム生産のディープインパクト産駒などは人気が集中するので指名が競合するケースも続出という。そんな時にどのように調整するのかはそれぞれのグループごとに異なるらしいが、どの馬を指名し“所有”するか、そしてそれらがどんなレースをしてくれるかを見続けて行くのが、何よりスリルとドキドキ感を味わえるらしいのである。馬券を買いレースを観戦するのとはまた違った興奮が得られるので、今ではすっかり競馬ファンの間に定着した「競馬の楽しみ方」のひとつになっている。

 POG取材は、そうしたファンのニーズに応えるべく刊行される関連本や雑誌のために不可欠な仕事で、関わってかれこれ十数年は経つ。基本的には「立ち写真」と「各馬の特長、セールスポイントのコメント取り」の二本立てである。

生産地便り

半姉にファンディーナを持つドリームオブジェニーの2017


 かつては4月に入ってからが取材のピークであったが、2歳戦のスタートがダービーの翌週に早まり、それにしたがって関連本も大型連休の頃に発売されるようになってきた。

 そうなると、私たちの取材日程も当然のことながら前倒しになり、今では3月中旬頃から各媒体が動き出すようになっている。

 今年は先週17日(日)の社台ファーム千歳から取材が始まった。ピークは今週から来週にかけての二週間で、とりわけ週の半ばから後半、水木金あたりの午後に撮影が集中してくる。育成牧場の業務に支障がないような時間帯は午後の2時以降、しかも太陽が出ている間しか撮影ができないので、時間との闘いである。もちろん予定を組んでいても、雨や雪(北海道ではこの時期でも雪の降ることがある)に祟られると、当然撮影は中止で、後日改めて日程を設けてもらうことになり、スケジュールがどんどん狂ってくる。

 一方、写真と原稿の締め切りは関連本の発売日から逆算してすでに4月第一週(7日桜花賞のあたり)と決められており、それまでに入稿しなければならない。とはいえ、春先のこの時期、北海道は天候の不安定な日が少なくないので、天気予報もあまり当てにはできない。当分、胃の痛む日々が続く。

 浦河のBTC界隈に点在する各育成牧場への取材は、今週火曜日、19日より始まった。

 毎年、一週間の日程で東京からやってくる編集者と一緒に、各牧場を巡回して挨拶がてら細かな取材日程を決め、順番に片づけて行く。写真撮影とコメント取りを同じ日に済ませられるのが理想だが、牧場によってはそうもいかないところがあり、別々の機会に取材せざるを得ないことも多い。

 19日はナンバーナインホーストレーニングメソドのコメント取りと愛知ステーブルのコメント取り。20日はグランデファームの撮影とコメント取り、さらに谷川牧場の撮影とコメント取り。そして今日21日は、朝から吉澤ステーブルの撮影とコメント取り、午後にディアレストクラブイーストの撮影とコメント取り、夕刻にチェスナットファームのコメント取りが予定されている。明日はシュウジデイファームの撮影とコメント取り、その後三嶋牧場の撮影とコメント取りと続く。来週いっぱいまで計12牧場100頭超の取材を消化しなければならない。

生産地便り

吉澤ステーブルの囲み取材の様子


 今日午前の吉澤ステーブルは全部で26頭の撮影とコメント取りであった。BTC界隈随一の規模と質を誇る吉澤ステーブルでは毎年多くの期待馬が出てくる。父ブラックタイド、母シュガーハートの牡馬といえば、かのキタサンブラックの全弟だが、こういう素材がたくさん在籍しているのもこの牧場の大きな特長だ。

生産地便り

キタサンブラックの全弟となるシュガーハートの2017


 また、こうした活躍馬、有名馬の弟妹だけではなく、今年初産駒がデビュー予定の新種牡馬たちの仔を間近で一早く見られるのもこの仕事の大きな魅力である。エピファネイア、エスケンデレヤ、カレンブラックヒル、キズナ、ゴールドシップ、マジェスティックウォリアー、リアルインパクト、ワールドエースなど、今年も数多くの新種牡馬の仔が出てくるはずで、それらに注目しながら新馬戦を待ちたいと思っている。

生産地便り

新種牡馬ワールドエース産駒、カドルーパの2017


生産地便り

新種牡馬キズナ産駒のペガサスゴールドの2017

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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