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【ドバイWCデー】アーモンドアイ勝利へのヒント 牝馬の海外遠征でのポイントを解説!

  • 2019年03月24日(日) 18時01分
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▲環境の変化により敏感な牝馬が海外で勝つためのポイントとは?(撮影:高橋正和)


規格外の強さを見せるアーモンドアイ。牝馬三冠、ジャパンカップでのレコードタイム大幅更新の次に彼女が目指すのはドバイです。日本時間30日(土)深夜に行われるドバイターフ(GI、芝1800m)では異国の地でどんな走りを見せてくれるのでしょうか。

一般的に牝馬は牡馬に比べて「環境の変化に敏感」「ちょっとしたストレスでカイ食いが落ちやすい」といった特有の難しさがあると言われます。繊細な牝馬が海外遠征で勝利を挙げるためのポイントは何なのでしょうか。過去にドバイで勝ったことのあるレッドディザイア(2010年アル・マクトゥームチャレンジ・ラウンド3)、ジェンティルドンナ(2014年ドバイシーマクラシック)、ヴィブロス(2017年ドバイターフ)の陣営に「勝利のポイント」、そして彼らから見たアーモンドアイの印象を伺いました。

(取材・文:大恵陽子)

レッドディザイア「環境の変化に動じない芯の強さ」


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▲レッドディザイアを管理していた松永幹夫調教師


 当時、最も強力メンバーが集まったと言われた前哨戦のアル・マクトゥームチャレンジ・ラウンド3。同レース2着のグロリアデカンペオンがのちにドバイワールドカップを優勝したが、同馬を抑えて前哨戦を勝利したのがレッドディザイアだった。

「あの時はウオッカも一緒のレースで、向こうがかなり注目されていたので、気楽にいけました。リフレッシュ放牧明けということもあって評価は低かったですけど、『やってくれないかな』という気持ちはずっとありましたし、やっぱり能力があったということだと思います」

 松永幹夫調教師はそう振り返った。前年は秋華賞を制覇し、古馬に混じったジャパンカップでは勝ち馬ウオッカから0.2秒差の3着。日本トップクラスの能力を持っていた彼女は、いかにしてドバイで発揮することができたのだろうか。

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▲ブエナビスタの3冠を阻んだレッドディザイア(C)netkeiba.com


「ポイントはいかにリラックスできるか、ということだと思います。環境にいち早く慣れることが大切じゃないですかね。レッドディザイアはホント芯の強い馬で、環境の変化にも全然動じませんでしたし、ウオッカとずっと一緒に行動していたこともよかったと思います。カイ食いが極端に落ちるってこともなかったですね。UAEダービーを勝ってアメリカ三冠に参戦したラニもそうでしたが、やっぱり精神力の強い馬じゃないと海外遠征は厳しいのではないでしょうか」

 たかが前哨戦、されど前哨戦。本来ならドバイシーマクラシックに向かう予定だったが、このレースを勝ったことで急遽、ドバイワールドカップ(当時はオールウェザーでの施行)の招待状が届き、予定を変更した。世界最高賞金(当時)レースでは残念ながら11着だったが、前哨戦がなければチャレンジすることすらできなかったのだから、その意味は大きいだろう。

 今年、大きな期待を背負ってドバイへ渡ったアーモンドアイの印象をこう話す。

「規格外っていう感じの走りをする馬なので、十分対応してくれると思いますし、してほしいですね。普段から直接、馬を見ているわけではないので、アーモンドアイの性格とかは分かりませんが、競馬場で見ている限りだとすごく落ち着きもあるので、対応してくれるんじゃないでしょうか。関西に遠征してきてもしっかり結果を出していますし、頼もしいですよね。素晴らしい馬です。テレビで応援しています」

ジェンティルドンナ「2年目は馬がレースを察していた」


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▲ジェンティルドンナを担当していた日迫真吾厩務員


 牝馬三冠を制覇し、牡馬に混じって肉体的にも精神的にも強さを見せたジェンティルドンナ。彼女は2013年と14年にドバイシーマクラシックに出走。1年目2着、2年目に勝利した。

「1年目の経験はやっぱり大きかったですよ」と担当の日迫真吾厩務員は証言する。

「1年目は何もかも初めてでしたが、2年目は勝手が分かるところもありますし、僕らも気分的に違いますよね。ドバイは厩舎から競馬場までが結構遠いんです。調教では歩いて引っ張っていくんですが、レース前はさすがにっていう距離なので馬運車で装鞍所に向かいます。パドックに出る前の、裏で周回する場所がすごく静かで、1年目は馬も何のことかサッパリ分かっていませんでした。そこからパドックに出ると、対照的に歓声がすごくて急にテンションが上がりました。そこで初めて『今から競馬だ』って気づいたんじゃないですかね。でも2年目は馬運車に乗った時から徐々にレースだということを察しているようなところがありました」

 パドックでも日本にいる時と大きなテンションの差はなく周回できた。レースでは直線で進路が塞がり絶体絶命かに思われたが、ワープするようにライアン・ムーア騎手が外に持ち出して勝利した。

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▲2回目の挑戦でドバイシーマクラシックを制した(撮影:高橋正和)


「今でもたまに家で見るんです。英語で解説がされているパトロール映像のようなものがあるのですが、直線だけでなく3〜4コーナーでも締められていました。あの直線はすごかったですよね。2年目は国内でひと叩きされた上積みもあったかもしれません」

 三冠牝馬としては後輩にあたるアーモンドアイが今年はドバイで走る。

「日本馬なのでがんばって勝ってほしいですよね。詳しいメンバーは分かりませんが、1800mや2400mは日本馬に合う距離のようですし、素直にがんばってほしいなって思います」

ヴィブロス「ドバイの方が落ち着いている」


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▲ヴィブロスを管理する友道康夫調教師


 海外では3戦して連対率100%のヴィブロス。国内でも秋華賞を制覇するなど牝馬トップクラスの能力の持ち主だが、その強さは海外に行くとより発揮される。

「初めてドバイに行く前は、牝馬なのですごく心配をしていたんですが、行ってみるとむしろ気持ちが据わっているというか落ち着いていたんですよね」

 静かで広々としたドバイの馬房で落ち着いて過ごすヴィブロスを見て、友道康夫調教師の不安は払拭された。さらに、2回目のドバイ遠征となった昨年は気の合う仲間の存在もあった。

「去年は牝馬ではモズカッチャンとディアドラもいて、特にディアドラとは栗東の検疫厩舎からずっと一緒にいました。ドバイの馬房でも向かい同士で、それも良かったと思います。馬がいるのといないのとでは全然違うでしょうし、お互いに落ち着きがありましたね。去年はドバイに着いてから見る度に良くなっていて、順応性は牝馬の方があるような気がします。私の場合、牝馬での海外遠征はヴィブロスのみですが、全く心配していません」

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▲ヴィブロスは海外でも落ち着いて過ごせるという(撮影:高橋正和)


 昨年末の香港マイルがラストランとなる予定だった。しかし、「2着でしたし、海外に行くと香港でも落ち着きがあってすごく良かったんですよね」と、海外遠征への適性を期待され、もう1戦、ドバイに渡ることになった。

「国内最終追い切りの動きは良かったですし、順調に調整できました。海外ではこちらが思っている以上に走って結果を出してくれています。ワンターンの1800mもベストなので、頑張ってほしいですね」

 帰国後は栗東トレセンへは戻らず、北海道へお嫁入りする。「アーモンドアイも強いですね」と同じくドバイターフに出走予定のライバルを称えながらも、厩舎ゆかりの血統馬のラストランへ期待を寄せた。

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