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【短期集中連載】丸ごと! キングカメハメハ(第1回/全11回)

  • 2019年03月29日(金) 18時00分
キングカメハメハ

▲ 新馬戦を1番人気に応えて完勝(2003年11月16日)


馬券検討をする際、取捨選択の判断材料として考慮しない人は皆無といっていいほど、重要なウエイトを占める「血統」。本書では1頭の種牡馬についてさまざまな角度から取り上げ、馬券検討に必要な要素を過去3年間のデータに基づいて精査。買える条件、買えない条件を抽出した。第2弾は、日本の生産界でディープインパクトと双璧をなすキングカメハメハ。「なるほど!」と納得できるデータもあれば、目からウロコの新事実もあるはず。きっとアナタの馬券検討の一助になるはずだ。

(文=『netkeiba編集部』、写真=下野雄規、高橋正和、JRA、netkeiba)

第1章 NHKマイルC&ダービー制覇という鮮烈なインパクトを残した現役時代


 1999年に初の生産者リーディングに輝いたノーザンFの代表吉田勝己氏が翌2000年、米国キーンランド11月セールで1頭の繁殖牝馬を落札した。落札したのはラストタイクーンの直仔の繁殖牝馬マンファスで、この年初仔にあたるザデピュティがサンタアニタダービーに勝利していた。このときキングマンボの仔を宿していたマンファスは日本に輸入され、翌2001年にノーザンFで牡馬を出産した。

 このキングマンボの持ち込み馬は当歳セレクトセールに上場されたのだが、これに目をつけたのがブラックホーク(1999年スプリンターズS、2000年安田記念)やクロフネ(2001年NHKマイルC)など、これまで外国産馬でGIに勝利していた金子真人氏。同馬を8190万円(税込)で落札するとキングカメハメハと命名し、クロフネでGI初勝利をあげた新進気鋭の松田国英調教師に預けられて、スパルタで鍛え上げられていった。

 キングカメハメハのデビュー戦は、2003年11月16日京都芝1800mの2歳新馬戦。手綱はこの年にJRAへ移籍した安藤勝己騎手が握った。レースは単勝2.6倍の1番人気に応えて見事に1着。2着馬との差は半馬身差と派手さこそなかったが、ラスト3ハロン「12.4秒−12.1秒−11.8秒」という加速ラップを6番手から差し切る力強い内容であった。

 2戦目に選択したのは、タヤスツヨシ、アドマイヤベガ、そして金子氏&松田国師が送り出したクロフネも勝った出世レースの阪神芝2000mエリカ賞。ここは武豊騎手がエスコートして、好位差しで勝利。翌年のクラシックの有力馬の1頭に数えられるようになる。

 ところが、バルジュー騎手に乗り替わった3戦目の京成杯は、1番人気に支持されるも3着に敗退。中山が不向きとみた陣営は、皐月賞ではなくNHKマイルCを目標に決定する。続くすみれSは初の2200m、初の重馬場などの不安材料があったが、手綱が戻ってきた安藤勝騎手が後続を2馬身半突き放して楽勝。次走の毎日杯も完勝して、目標であったNHKマイルCへ駒を進めてくる。

 中団待機策で進んだNHKマイルCは、直線で先頭に立って大外に持ち出すと、そこから後続に差をつける強烈な末脚を発揮する。これまでで最大の5馬身差をつけ、1分32秒5のレースレコードで圧勝した。



 はれてGIホースになったキングカメハメハが次走に選んだのは3週間後のダービー。「1600mと2400mという異なるGIを好走すれば種牡馬価値が高まる」という持論を持つ松田国師が、クロフネやタニノギムレット(2002年ダービー馬)で挑むも勝てなかった厳しいローテーションを設定してきたのである。

 ダービーの展開は史上稀にみる厳しいものになった。1000mの通過タイムが57秒6、短距離戦並みのハイペースでレースは進む。前半に脚を消耗したほとんどの馬が最後の直線でバテていくなか、馬場のど真ん中に進路を取ったキングカメハメハは最後まで豪快に伸びて先頭でゴール板を駆け抜けた。勝ち時計の2分23秒3は、従来のダービーレコードを2秒も更新する驚異的なタイムであった。



 秋は菊花賞ではなく、天皇賞を目標に始動する。初戦の神戸新聞杯を無事に勝利するも、天皇賞の2週間前に右前浅屈腱炎を発症。吉田勝己氏、金子真人氏、松田国英師、安藤勝己騎手、当時もっとも脂が乗っていた人々を介して競馬界の頂点に立ったキングカメハメハも、強烈な印象を残しながらデビューからわずか10カ月という短い競走生活でターフを去ることになった。

キングカメハメハ

▲ キングカメハメハの生涯成績

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