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コースロスを避ける会心の騎乗でGI馬の力を出し切った/大阪杯

  • 2019年04月01日(月) 18時00分

他のライバルとは対照的なレース運びで進めた好判断


 5歳馬アルアイン(父ディープインパクト)が3歳春の皐月賞以来、約2年ぶりのGI制覇を果たした。騎乗した北村友一騎手(32)は、デビューして14年目、JRAのGIは通算46戦目でのうれしい初勝利【1-1-2-42】だった。統一ダートGIは2018年の全日本2歳優駿をノーヴァレンダ(父ダイワメジャー)で勝っている。

 アルアインは9番人気で単勝2220円。2年前の皐月賞も9番人気で単勝2240円だった。母はドバイマジェスティ。その父エッセンスオブドバイ(父プルピット)は、ゴドルフィンの所有馬で2002年のUAEダービー(D2000m)を制している。距離2000mがベストなら、この季節もぴったりだったのだろう。

 発表は良でも渋り気味の馬場は有利ではないとされたが、コースロスを避けて終始インの好位3-4番手。結果的にかなり物足りないレースに終わったライバルが多かったなか、インから抜け出す最高のレースを展開した北村友一騎手の会心の騎乗だった。これで桜花賞のクロノジェネシス(父バゴ)に思い切って乗れる。

 直前の10Rで、インに突っ込んだヴァントシルムがクビ差2着。9Rでもずっとインを通って逃げた伏兵エーティーラッセンが逃げ切り勝ちしていたから、スローで大半の馬に余力があったにせよ、大阪杯ではみんな外を回りすぎたかもしれない。

 2着キセキ(父ルーラーシップ)は、一段と迫力を増した素晴らしい馬体だった。出脚がもう一歩だったため、無理にハナを切る手に出ることなく2番手で折り合うことになったが、昨秋3戦連続して主導権をにぎるレースを続けた川田騎手は、今季のレース展望を考えたとき、ハナを主張しないレースも想定していたのではないかと思われる。もともと差す形でも結果を残してきた自在型なので、2番手でもまったく平気だった。スムーズに折り合って直線一旦は先頭に立ちかけたが、インから差されたのは痛恨だった。

 これで4歳秋以降のGI「3、2、5、2」着となってしまった。ゴール前も伸びているから無理にハナを切らなくとも能力発揮可能を再確認できたが、鋭く伸びる脚はなかった。ちょっと詰めが甘いのは父ルーラーシップ(GIで惜しい2-5着が7回)の死角を受け継いだところがある。距離と相手にもよるが、次走は再び「ハナを主張する」作戦に戻りそうな予感がした。

 ふだんの落ち着きを増したとされたワグネリアン(父ディープインパクト)は、パドックでずっとチャカチャカしていたが、これは秋の神戸新聞杯以来6カ月ぶりのレースなので仕方がない。入れ込みではなかった。勝ったアルアインの直後で、ワグネリアンもインを通って追走。「クビ、クビ」差の少差3着は、4歳馬のなかでは最先着。日本ダービー馬のプライドを保つと同時に、確実な成長も示した。468キロ(前走比プラス8キロ)の馬体にもう非力な印象はない。

 1番人気の4歳ブラストワンピース(父ハービンジャー)は、全体に筋肉モリモリになり距離不安を感じさせた菊花賞や、有馬記念時よりシャープな身体に映った。4歳になって完成形に近づいたのだろう。素晴らしい気配だった。また、稍重の有馬記念をパワーでねじ伏せるように制した内容から、タフな芝コンディションもGI馬となったブラストワンピースに不利なしと思えた。

 「61秒3-59秒7」=2分01秒0のスローで各馬が一団に近い展開になり、包まれる危険を避け途中から大事に外を回ったレース運びも悪くないが、挑戦者として果敢に中位の外につけ、3コーナー過ぎから気迫のスパートで進出した有馬記念と比べると、ちょっと待ちすぎた印象も残った。上がり33秒5を記録したのは新潟でのこと。有馬記念快勝時の自身の上がり35秒7が示すようにパワーあふれる総合力を生かしてこそのタイプ。切れ味勝負型ではないと思える。不完全燃焼だったろう。

 3歳で有馬記念を制したチャンピオンの次走は、グレード制が敷かれた1984年以降これまで【6-3-1-3】。2戦続けて馬券圏内から消えた馬は1頭もいないという歴史がある。次は強気に、なんとしても巻き返したい。

 5番人気で5着のエアウィンザー(父キングカメハメハ)は、GI馬ではないので順当な結果とはいえるが、本当はもう少し積極的に乗りたかった。追い込む形は苦しいが、控えたところで馬群に包まれた。

 ハナを切ったエポカドーロ(父オルフェーヴル)は、残念ながら鼻出血の不運。香港に遠征できなくなってしまった。昨年2着のペルシアンナイト(父ハービンジャー)は、馬場コンディションが合わなかったのか、伸びきれず11着。サングレーザー(父ディープインパクト)はレース前の落ち着き一歩。馬場も合わなかった。

 4着に突っ込んだマカヒキ(父ディープインパクト)は、馬群を割るようにただ1頭だけ上がり最速の34秒9。そろそろ復活、次はきっと復活…、のくり返しでもう2年半も勝っていないが、今回の馬体は掛け値なしに良かった。今度こそ復活…の前兆は、勝ちに出ていないからの善戦ではないと思える。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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