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英国障害レースの大一番、グランドナショナルに注目

  • 2019年04月03日(水) 12時00分

45年ぶりの歴史的快挙が見られるか


 今週末、海外競馬ファンの目はクルーガー(牡7、父キングカメハメハ)が出走する豪州のG1ドンカスターマイル(芝1600m)に向きがちだとは思うが、同じ4月6日(土曜日)にはイギリスのエイントリー競馬場で、障害の大一番G3グランドナショナル(芝34F74y、障害数30)が行われるので、日本のファンの皆様もぜひご注目いただきたいと思う。

 ブックメーカー各社が4.5〜5.0倍のオッズを掲げて1頭抜けた1番人気に推しているのが、昨年に続くこのレース連覇を狙うタイガーロール(セン9、父オーソライズド)だ。

 G2ロンズデイルC(芝16F88y)勝ち馬アージーマーの半弟というなかなかの良血馬で、当歳暮れにタタソールズ12月市場の当歳部門に上場されたところ、アージーマーを所有していたシェイク・モハメドの代理人に7万ギニー(当時のレートで約1000万円)で購買されたのがタイガーロールだ。

 だが、ゴドルフィンの服色を背に走ることはなく、未出走のまま3歳8月にドンカスターの現役馬セールに上場され、ここで1万ユーロ(約144万円)で購買されて、その年の10月にナイジェル・ホーク厩舎所属の障害馬としてデビュー。マーケットレイズンのジュヴェナイルハードル(芝16F148y)で勝利を収め、ハードラーとして上々のスタートを切った。

 ところが、この時の所有者は「ここが売り時」と思ったのか、初勝利からおよそ1か月後に催されたブライトウェルス・チェルトナムセールに同馬を上場。ここで、障害界の大手馬主であるギギンズタウン・ハウス・スタッドの代理人に目をつけられ、8万ユーロ(約1152万円)で購買されて、ゴードン・エリオット厩舎に転厩することになった。

 同馬にハードラーとしての大きな素質を感じたエリオット師は、タイガーロールの次走にいきなりレパーズタウンのG1スプリングジュヴェナイルハードル(芝16F)を選択。同馬はここで2着に入り、周囲の期待に応えることになった。ただしこの競馬は、この馬が持つ勝ち味の遅さも暗示しており、結局のところ15/16年シーズンの終盤までハードルを12戦した同馬は、一般戦で勝ち星を1つ挙げたものの、G2レッドミルズトライアルハードル(芝16F)3着、G1愛チャンピオンハードル(芝16F)4着、G1パンチェスタウンチャンピオンハードル(芝16F)4着など、強敵相手に健闘しながらも、重賞制覇を果たすことは出来なかった。

 タイガーロールは、15/16年シーズンの終盤にスティープルチェイスに転向。相変わらずの勝ち切れなさを覗かせながらも勝星を3つ挙げた後、17年のチェルトナムフェスティヴァルでG2JTマクナマラナショナルハントチャレンジC(芝31F170y)で勝利を手にし、待望の重賞初制覇を果たした。

 こうして迎えた昨シーズン、チェルトナムフェスティヴァルのグレンファークラスチェイス(芝30F37y)を勝って臨んだ昨年のこのレースで、プレザントカンパニーとの大接戦をものにして優勝し、一躍全世界にその名が轟くことになった。

 今季は、緒戦となったチェルトナムのクロスカントリーチェイス(芝30F37y)で4着となった後、ここへの前哨戦として2月17日にナーヴァンで行われたG2ボーインハードル(芝21F)を選択。ここを4馬身差で制して3度目の重賞制覇を果たし、グランドナショナルに向かうことになった。

 タイガーロールが今年もグランドナショナルを制覇すれば、1973年と1974年に達成したレッドラム以来、実に45年振り史上5頭目の快挙となる。

 2番手グループは大混戦だ。

 実績では、スティープルチェイス3マイル路線の最高峰であるチェルトナムのG1ゴールドC(芝26F70y)で、18年が3着、19年が2着となっている他、昨年のグランドナショナルでも4着に健闘しているアニベールフライ(セン9、父アセッサー)が最上位である。同馬と、2月23日にフェアリーハウスで行われたG3ボビージョーチェイス(芝25F)を3.1/2馬身差で制し、自身4度目の重賞制覇を果たしての参戦となる古豪ラスヴィンデン(セン11、父ヘロンアイランド)の2頭が、オッズ11〜13倍で2番人気を争っている。

 これに続くのが、チェルトナムフェスティヴァルのG3ウルティマハンディキャップチェイス(芝25F)で、それぞれ2着と3着になっての参戦となるヴィンテージクラウズ(セン9、父クラウディングス)とレイクヴューラッド(セン9、父オスカー)で、オッズ13〜17倍で4〜5番人気となっている。

 タイガーロールによる歴史的快挙が見られるかどうか、6日の夜は英国のエイントリーに注目したい。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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