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圧倒的なスピード、調教技術の進歩を証明/桜花賞

  • 2019年04月08日(月) 18時00分

オークスでは勢力図が大きく変化する可能性も


 好位の外につけたグランアレグリア(父ディープインパクト)が、前半「35秒4→47秒7→」の緩い流れを察知すると、早くも3コーナー過ぎから進出開始。猛ラップの刻まれた後半「11秒7-10秒8-11秒0-11秒5」=45秒0-33秒3をそのまま押し切り、桜花賞レコードの1分32秒7で完勝した。

 速いタイムの出る芝コンディションだったため、2着から4着馬までがアーモンドアイのレコード1分33秒1とタイ記録だったが、それにしてもただ1頭だけ1分32秒台で圧勝したスピード能力はすばらしい。後半の1000mはなんと「57秒3」だった。

 年明け初戦での桜花賞制覇は、史上初めて。空きすぎたレース間隔に心配はあったが、改めて近年の日本の優れた調教技術の進歩を実証する結果でもあった。レース検討で少し触れたが、ディープインパクトの3代母にあたるハイクレアは1974年の英1000ギニー(5月初旬)を、2歳7月以来の日程で勝っている。最近20年間で8頭もが2歳戦以来の休み明けで1000ギニーを制している。

 なにもクラシック体系の範を取ったイギリスと比較しても仕方ないが、ドバイでアーモンドアイなど今年初戦の日本馬が3頭も快走したように、ひと昔前はまだ遅れているとされた日本の調教技術は、いまはもう世界トップレベルに並んだのは確かである。

 ただし、グランアレグリアには阪神への遠征の経験があり、踏むべき過程はちゃんとこなしての出走だった。今回はパドックに向かう地下通路の映像で少し気負いが見られたくらいで、休み明けの3歳牝馬とすれば十分な落ち着きがあった。

 圧倒的なスピード能力を認めたとき、まだ若い3歳牝馬に活力消耗につながる負担はかけられない。同じ藤沢和雄厩舎には、同じノーザンFの生産馬で、3月のフラワーC1800mを圧勝したコントラチェック(父ディープインパクト)が控えている。また、アーモンドアイとはタイプも異なる。ルメール騎手も含めて陣営はオークス2400mへの出走は否定的であり、おそらく5月5日のNHKマイルCとみられる。

重賞レース回顧

圧倒的なスピードの違いを見せつけての勝利だった


 2着に突っ込んだシゲルピンクダイヤ(父ダイワメジャー)もすばらしい。脚部難でやっと間に合ったチューリップ賞(2着)時とは一変、入念に乗って馬体が6キロも回復していた。スタートでつまずきかける不利があって後方追走になったが、4コーナーでは馬群の外目にいたのに、和田竜二騎手の絶妙の判断で斜めに突っ込むようにインに入って伸びた。「クビ、ハナ、クビ」差の2着争いをしのいだのはコース取りの利だったろう。

 父ダイワメジャーは2500mの有馬記念でも3着したほど距離の幅は広かったのに、1800m以上の重賞を勝っている産駒はカレンブラックヒルだけ。なぜか距離をこなす重賞級の代表産駒に恵まれないが、体型はマイラーにみえても、勝負強いシゲルピンクダイヤはかなり距離をこなせるように思える。まだ輝きはじめたばかりでもある。

 3着クロノジェネシス(父バゴ)は、不運だった。18頭立てのクラシックでみんながスムーズに力を出し切れることなどありえないが、いざ外に行こうとした直線、外から他馬がきていた。立て直し猛然と伸びて写真の3着。争覇圏に突っ込んだ中で、上がり32秒台は内に行ったシゲルピンクダイヤとこの馬だけ。勝つまではともかく、スムーズなら2着はあったかもしれない。小柄でも今回の434キロで細くはなかった。父の産駒にはさまざまな距離適性を備えた馬がいるが、クロノジェネシスはオークスの2400mOKと思える。

 先に抜け出したグランアレグリアを追撃に入ったダノンファンタジー(父ディープインパクト)は、とうとう差が詰まらず内と外から並ばれ少差4着。前半行きたがったロスがあったのと、上がりが速すぎたかもしれない。馬場差があるとはいえ、阪神JF、チューリップ賞の走破タイムも上がりもともに上回っている。ひときわ目立つ好気配だっただけに、最後の競り合いに負けて4着は案外の内容だった。グランアレグリアはしだいにピッチが上がるようなレースを歓迎するが、切れをなし崩しにされるレースは不向きなのか。

 新馬1600mでグランアレグリアに完敗に近い「0秒3」差。今回も射程に入れながら「0秒4」差。ショックだろう。グランアレグリアがオークスに向かわないのなら…というタイプではないだけに、次走はこちらもオークスではないと思える。

 2着とはわずか0秒1差5着のビーチサンバ(父クロフネ)は、ペースが遅いとみた3コーナー過ぎにグランアレグリアを追うように脚を使い、直線でもまた伸びた。父母両系ともにマイラー色が濃いが、身体つきはマイラーでもない。1戦ごとに成長カーブを描いているので、オークス挑戦を打ち出すようなら、侮れない。

 5番人気で13着に終わったアクアミラビリス(父ヴィクトワールピサ)は出走のたびに減っていた馬体が、さらに10キロ減の408キロ。今回まではギリギリ我慢できるかと思えたが…。立て直すことになる。クラシックを狙ったのだから仕方がない。

 1600mがいつもの年以上のスピード勝負だっただけに、忘れな草賞を3馬身差で圧勝したラヴズオンリーユー、そしてフラワーCを2馬身半差快勝のコントラチェックなどが加わるオークスの2400mは(グランアレグリア回避だと)、勢力図が大きく変化するだろう。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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