自らのGI勝利数世界記録更新なるか
オーストラリアに出現した歴史的名牝ウィンクス(牝7、父ストリートクライ)の現役生活が、今週土曜日(13日)に大団円を迎える。
ロイヤルランドウィック競馬場で行われる、ザ・チャンピオンシップス2日目のメイン競走として行われるGIクイーンエリザベスS(芝2000m)が、彼女のラストランとなるのだ。
ウィンクスは2011年9月14日に、牝馬ヴェガスショーガールの2番仔として、ニューサウスウェールズ州ハンターヴァレイのクールモアスタッドで生まれた。
母ヴェガスショーガールはニュージーランド産馬で、祖国で走ってLRソリロキーSなど2つの準重賞を含む6勝を挙げた他、GIIIストーニーブリッジS2着、GIマナカトゥサイヤーズプロデュースS4着などの実績を残した活躍馬だった。
繁殖入りしたヴェガスショーガールを所有していたのは、フェアウェイ・サラブレッズ社のジョン・カミレリ氏で、同氏がウィンクスの生産者となる。
同馬は、2013年1月に開催されたマジックミリオン・ゴールドコースト1歳セールに上場され、23万豪ドル(当時のレートで約2176万円)でマジックブラッドストックに購買された。
マジックブラッドストックとは、ピーターとパティのタイ夫妻、リチャード・トレウィーキー、デビー・ケピティスによるパートナーシップで、つまりは彼らがウィンクスの馬主となったわけである。
このセールの平均価格は10万6103豪ドルだったから、その倍以上はしたわけだが、最高価格馬は135万ドルで、23万ドルというのは高い方から数えて50番目のリストにも入っていない。将来のスーパースターとしては、実にお手頃な購買だったと言えよう。
2歳秋にデビューしたウィンクスは、いきなり3連勝でGIIフュリアスS(芝1200m)を制し、その後の姿を予測させるかのようなデビューを見せたが、4戦目のGIIティーローズS(芝1400m)で2着に敗れ初黒星を喫すると、そこから4連敗。
3歳秋にGIIファーラップS(芝1500m)で2度目の重賞制覇を果たしたが、続くGIヴァイネリースタッドS(芝2000m)では5着、GIオーストラリアンオークス(芝2400m)では2着に敗れている。
3歳秋までに2重賞を制しているから、この世代の強豪の1頭であったことは間違いないのだが、その一方で、「その辺にいる強い馬の1頭」というのが、3歳シーズンが終盤を迎えた段階での、ウィンクスの立ち位置だったのだ。
だが、2着に敗れた2015年4月11日のオーストラリアンオークスが、彼女が負ける姿を見せた最後の機会となった。
2015年5月16日にGIIIサンシャインコーストギニーズ(芝1600m)を制して以降、今日までウィンクスは勝ち続けているのである。
3歳最終戦となったGIクイーンズランドオークス(芝2200m)で待望のGI初制覇を果たすと、4歳時に7戦し、5つのGIを含む7連勝。5歳時は8戦し、6つのGIを含む8連勝。6歳時も8戦し、6つのGIを含む8連勝。
7歳となった今季、3月23日にローズヒルガーデンズで行われたGIジョージライダーS(芝1500m)まで7戦し、6つのGIを含む7連勝を飾り、現段階で32連勝を継続中なのだ。
積み上げたGI勝利数の24は歴代の世界記録だし、通算収得賞金の2401万6670豪ドルは、豪州における歴代最多賞金記録となっている。
前走から、日本式でいうところの中2週でクイーンエリザベスSに臨むウィンクスは、ザ・チャンピオンシップスの第1週目がロイヤルランドウィック競馬場で行われた4月6日(土曜日)、第1競走発走前のコースに登場。1000m地点からスタートして公開調教を行い、変わらずに順調に来ている姿をファンに披露している。おそらくは、当日の単勝オッズは1.1倍を切ることになりそうなウィンクス。
2番手グループを形成するのは、欧州を拠点に11戦し、GIIギョームドルナーノ賞(芝2000m)など2重賞を含む3勝を挙げた他、GI愛チャンピオンS(芝10F)3着などの実績を残した後、豪州移籍緒戦となったGIランヴェットS(芝2000m)で2着となったヒーズエミネント(牡5、父フランケル、英国で競走名エミネント)。昨季のGIドンカスターマイル(芝1600m)を含むGI・3勝馬ハッピークラッパー(セン8、父テオフィロ)らだ。
ウィンクスが競馬場で見せる最後の雄姿を、競馬ファンの一員としてしっかりと見届けたいと思っている。