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キズナ、エスケンデレヤら新種牡馬の産駒が登場 JRA育成馬展示会

  • 2019年04月10日(水) 18時00分

早期デビューを目標に、ハードな調教が進められている


 去る4月8日(月)、浦河のJRA日高育成牧場にて、来る4月23日(火)に開催予定のJRAブリーズアップセールに上場される2歳育成馬55頭の展示会が開催された。

 昨年は天候悪化が懸念されたため、屋内での比較展示となったが、今年は幸い朝からすっきりと晴れ渡り、午前10時の開会時刻には数多くの関係者が会場を訪れた。

生産地便り

数多くの関係者が会場を訪れた


 冒頭、この春よりJTA日高育成牧場に新たに赴任した高嶋民治場長がまず挨拶し、その後、全体を5つの班に分割して、牡馬14頭からなる第1班の比較展示から展示会がスタートした。

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挨拶する高嶋民治場長


 体高は159〜161センチ程度、胸囲は175〜185センチ、管囲は19〜20センチ、体重も大半の馬が400キロ台後半まで育っている。今年は昨年よりも早めからハードに調教を進めてきたというだけあって、かなり仕上がっている感じの馬が多い。中には「これ以上調教を詰めない方が良いのでは?」と思わせるような、臨戦態勢に近いスタイルに腹が撒き上がっているような馬もいて、相当強めに負荷をかけてきたのであろうことが窺えた。

 JRA育成馬は、一部ホームブレッド馬も混じっているが、基本的には日高を始め各地の1歳市場にてJRAが購買した民間牧場の生産馬たちだ。ただし、種牡馬の傾向としては、JBBA日本軽種馬協会の直営種馬で繋養されている種牡馬の産駒がやや多い。

 今年は、エスケンデレヤの初年度産駒がデビューを迎える年で、日高育成牧場だけでも計6頭を数える。もちろん、ケープブランコやアルデバランII、ヨハネスブルグ、バゴなどの産駒も散見され、55頭中15頭がJBBA系種牡馬を父に持つ。

 また、初産駒デビュー予定の新種牡馬では、キズナ(4頭)、エピファネイア、トゥザワールド、スピルバーグ、ウインバリアシオン、カレンブラックヒル、ワールドエースなどの産駒がいて、それぞれ馬体を見比べては歩様をチェックし、脚部に手を当てて腱の様子を確認する関係者などもいた。

 JRA育成馬は今期、トレッドミルも活用して、精力的に調教を進めてきたという。6月の新馬戦開始に合わせ、調教メニューを従来よりも前倒しして、1歳12月のうちからBTC坂路調教を開始したらしい。1月には早くも1F15秒程度(3F45秒)まで調教を進め、早めからデビューできるように進めてきたという。

 そんな調教の成果を確認できるのが、比較展示の後に行なわれた騎乗供覧である。今年は55頭中51頭が出走し、日高育成牧場に隣接したダート1600m馬場で、走りを披露した。

 例年通り、騎乗者の中にはBTC研修生も混じり、それぞれ昨秋以来JRAスタッフとともに手がけてきた育成馬に騎乗しての騎乗供覧を行なった。

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騎乗供覧にはBTC研修生も騎乗する(内)


 騎乗供覧は、2頭併せで実施され、一部、単走馬や3頭併せという例もある。計時はゴール前2Fで行なわれ、走り終えた直後にタイムが発表される。

 1F14〜15秒かかっている馬もいたものの、全体的には12秒台〜11秒台でまとめる馬が多かった。

 最速を記録したのは、牡馬の2班3組目に登場した、1番(ブリーズアップセールの上場番号)の父アルデバランII、母タキオンメーカー(ホームブレッド馬)と、15番の父キズナ、母ニシノミラクル(浦河、ガーベラパークスタッド生産)の組み合わせによる12秒1-11秒3という時計だ。2Fの合計では23秒4で、ちなみに23秒台で走破した牡馬はこの2頭だけであった。

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最速を記録した1番と15番の組み合わせ


 その他では、46番父エスケンデレヤ、母ミステリアスガール(牡、様似・猿倉牧場生産)と22番父ダンカーク、母ダイワエタニティー(牡、浦河・大北牧場生産)のコンビが12秒7-11秒7の計24秒4、また41番父ダンカーク、母セインツプレイ(牡、浦河・佐々木恵一牧場生産)と、37番父ワールドエース、母カワイコチャン(牡、新ひだか町・山際牧場生産)の12秒5-11秒9の計24秒4が二番目に速い時計であった。

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二番目に速い時計を記録した46番と22番の組み合わせ


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二番目に速い時計を記録した41番と37番の組み合わせ


 牝馬では、30番父スクワートルスクワート、母クサナギノツルギ(青森、ラークヒルズ生産)と、59番父メイショウサムソン、母フェスティヴレディ(新冠、北星村田牧場生産)の組み合わせが出した、12秒1-11秒7の計23秒8が最速であった。

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牝馬最速を記録した30番と59番の組み合わせ


 とはいえ、最速といっても、実際のタイム差はわずかで、0.1秒、0.2秒というような違いしかないことが多い。また基本的には「併せ馬」での走りを見せるのが目的なので、敢えて抑え気味で僚馬にペースを合わせて走るペアも数多く、供覧でのタイムはそれほどあてにならない。5月下旬の日高軽種馬農協主催による「北海道トレーニングセール」では最速タイムを競い合うような傾向が強いが、この供覧でのタイムがそのまま競走成績に直結しているとも言い難く、むしろここでは走りに余裕のある方が良いようにも感じる。

 ただ、今年のJRA育成馬は、できるだけ早期からの使い出しを目標に仕上げられてきているのは明らかで、この調教方針がどのように出るかが注目されるところだ。そして、2015年メイショウスザンナのクイーンステークス以来途絶えているブリーズアップセール出身馬のJRA重賞勝ち馬が今年の取引馬の中から出てくることにも改めて期待したいと思う。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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