スケールは譲るが、中山向きのレースセンスは互角以上/皐月賞
焦点は「日本ダービーでも勝ち負けするのはどの馬か」
距離が400mしか違わない「皐月賞」と「日本ダービー」は密接に関係してきたが、近年の皐月賞は以前よりずっと日本ダービーとの結びつきが強い。2歳戦が早まり、賞金獲得は難儀ではない。そのうえ、消耗を避けるため注目馬が出走レースを絞って分散するから、エース級はほとんど皐月賞に出走できる。
近年の日本ダービーの勝ち馬10頭中9頭が、また連対馬20頭中の16頭が皐月賞に出走した組。距離は異なるものの、皐月賞の検討は以前よりはるかに日本ダービー展望に直結する。別観点のレースではない。
今年は、エメラルファイトが軽度の脚部難で回避したのと、ダノンチェイサー(NHKマイル予定)、アガラスがマイル路線に回ったくらいで、路線の好走馬がほとんど皐月賞に出走してきた。
良馬場だと勝ち時計は「1分58秒前後」も珍しくないスピード決着。勝ち馬10頭中9頭の前走は1800mだった。その中に2000m未経験馬が5頭もいる。理由は、2000mは総じて少頭数のスローが多い。いきなり18頭立ての皐月賞の厳しい展開に対応しにくいから、と考えられている。
2月の1800mの共同通信杯から直行馬が最近7年間に4勝もし、同じ1800mのスプリングSと毎日杯組が合わせて5勝している。わずか最近10回のこと(一応は10年間ともいうが…)。10回などデータにも傾向にもなりえないが、意味するところだけは軽視できない。
現体系になって過去72回、ここまで2戦のキャリアで勝った馬は0頭。3戦の馬は10頭いるが、その多くは傑出馬であり、2戦、3戦の「浅い戦歴同士」の1-2着はない。マイルの桜花賞は才能勝負。だが、2000mの牡馬の皐月賞は素質だけでなく、強い相手と対戦のキャリアが必要でもある。人気のサートゥルナーリアと、ダノンキングリーはともにキャリア3戦だけ。ちょっと心配はある。
ダノンキングリーには死角はあるが、2戦目の中山1600mを大外15番枠から出て、終始外を回って1分33秒7(ここではNo.1)。基本のマイルの持ち時計No.2はアドマイヤマーズの1分33秒9。あくまで参考だが、最近10年の勝ち馬のうち6頭にスピード能力を示す「1500-1600m」での連対記録がある。
ダノンキングリーは、直線勝負になった共同通信杯で自身の後半3ハロンは推定「11秒0-10秒8-11秒1」=32秒9。アドマイヤマーズを差した10秒8の地点では、大跳びのストライドが鋭い高速回転に変わった。中山の1600m圧勝時の4コーナーでも同様だった。不器用ではない。スケールでは譲っても、馬群をさばく中山2000m向きのレースセンスは互角以上だろう。
桜花賞は予測されたようなスロー「前後半47秒7-45秒0」になったが、皐月賞も一連の路線レースから、厳しいペースにはならない可能性が高い。行くはずの毎日杯のランスオブプラーナ、この枠順なら下げることは考えられないアドマイヤマーズが展開注目馬。
最終的な結論は、「日本ダービーでも勝ち負けするのはどの馬か」となるのが皐月賞検討の焦点。残念ながら、結果は出なくてもいい。「ワグネリアン、レイデオロ、マカヒキ、ワンアンドオンリー、ディープブリランテ、エイシンフラッシュ、ロジユニヴァース」。皐月賞の結果は不満なのに、頂点の日本ダービーを制した馬が最近10年だけで7頭も存在する。