スマートフォン版へ

弱みを克服し、厳しい叩き合いを制したことは資質の証明/皐月賞

  • 2019年04月15日(月) 18時00分

高速決着でありながら後半加速、人気馬が上位独占


「アタマ、ハナ」差の激戦を制し、サートゥルナーリア(父ロードカナロア)が無敗の4戦4勝のままクラシックホースとなった。

 レース全体の流れは「59秒1-59秒0」=1分58秒1。紛れの生じにくい平均バランスが刻まれた結果、上位4着までを「1、4、3、2」番人気馬が独占することになった。特筆すべきは、決して緩い流れの上がりだけの勝負ではなく、皐月賞レコードとわずか0秒3差の高速決着でありながら、注目馬がスパートした後半3ハロン(34秒7)のラップは「→11秒7-11秒6-11秒4」。

 尻上がりにラップが上がっていること。レース上がり34秒台は必ずしも珍しい記録ではない。ただ、皐月賞が1分59秒9以内のタイムで決着したケースは今年で13回目。高速決着でありながら、ハロン11秒台のラップがゴールが近づくにつれ一段と加速したのは、ディープインパクトが圧勝した2005年の「→11秒8-11秒4-11秒3」に続き、史上2度目のことだった。

 ルメール騎手は勝たねばならない立場なので「調教がすごくいい感じだった。自信あります」と、再三自身を鼓舞していたが、角居調教師を筆頭の陣営は「12月以来の休み明けの皐月賞は不安だらけだった」のが偽らざる本音。

 実際、落ち着き払ったすばらしい精神状態とは別に、サートゥルナーリアにはまだ3戦(それもスローのあまり苦しくないレースばかり)しかしていない弱みがあった。身体つき全体に残る若さもあり、物見をしながらムチに過剰反応して斜行するなど、苦しいレースだった。

 しかし、ホープフルSとはまったく異なる流れの中山2000mを、ホープフルSの走破時計を「3秒5」も短縮し、初めてムチを入れられる厳しい叩き合いを制したのは、着差や時計をはるかに超える資質の証明だった。

重賞レース回顧

無敗の4戦4勝のままクラシックホースとなったサートゥルナーリア(撮影:下野雄規)


 日本ダービーの内容をみてのことになるが、凱旋門賞ヘの一次登録を行い、秋の展望を決めることになるとされる。グレード制成立後の無敗の皐月賞馬は、過去「84年シンボリルドルフ5戦5勝、85年ミホシンザン4戦4勝、91年トウカイテイオー5戦5勝、92年ミホノブルボン5戦5勝、01年アグネスタキオン4戦4勝、05年ディープインパクト4戦4勝」。6頭存在するが、皐月賞直後に引退したアグネスタキオン以外の5頭はすべてクラシック2勝以上馬となっている。

「ダービー制覇」のためにこういうスケジュールを組んだサートゥルナーリアには、休み明けで激走の疲れなど吹き飛ばし、一段と良化した状態での日本ダービー出走を期待したい。エピファネイア、リオンディーズにつづき、3頭目のGI馬の母となったシーザリオ(2002年、父スペシャルウィーク)は、今年17歳。この名牝はあと2頭くらいGI馬の母となってくれるかもしれない。

 種牡馬ロードカナロア(2008年、父キングカメハメハ)にとって、2世代目産駒の3歳GI制覇は思われるよりはるかに意味のある勝利だった。アーモンドアイは天才牝馬であり、距離を問わない無限の可能性を示した。ただ、圧倒的なスピードを誇った自身の産駒が2歳戦ではなく、またまた2000m級の3歳牡馬クラシックを制したのである。

 ただ優秀性を伝えるのではなく、優れた産駒はアーモンドアイと同じように、こなせる距離の幅は予測されたより格段に広いことを改めて示した。確かに多くの産駒はマイル以下をベストとしているものの、自身を(こなす距離の幅で)超える産駒が、これからもまだまだ出現する可能性をすべての人びとに実証してみせたのである。配合牝馬のタイプが変動する。

 絶賛されるサートゥルナーリアとわずか「アタマ」差の2着したヴェロックス(父ジャスタウェイ)も、勝ち馬と同じようにすばらしい内容だった。好馬体を誇る有力馬が多かったが、478キロの馬体は500キロを超えるかのように大きく映った。好スタートから正攻法の積極的なレースを展開し、4コーナー手前からスパート。前出の後半のラップが示すように少しも鈍ることなく、この馬自身は上がり34秒4。最後の「→11秒6-11秒4」はこの馬の刻んだラップだった。

 ゴール前ももう一回脚を使ったが、外から馬体を合わせられた勝ち馬に「アタマ」差。ここまでのレースを再確認すると、ヴェロックスは直線の攻防でライバルに外から並ばれたのは今回が初めてだった。大きな不利にはならなかったとはいえ、外からぶつけられた場面もあった。差されて負けたのは事実だが、競り合いに慣れていない3歳馬にとり外から並ばれるのはもっともきつい形だったろう。

 ジャスタウェイ(その父ハーツクライ)の初年度産駒。大成した父は4歳秋まで2勝馬だった。遅咲きかもしれないと思われたヴェロックスの成長カーブはこれから上昇一途の期待がある。ドイツ牝系で、輸入種牡馬スタイヴァザント(独ダービー馬)などで知られるファミリー出身。日本ダービーではサートゥルナーリアと再度好勝負必至だろう。

 ヴェロックスときわどいハナ差3着のダノンキングリー(父ディープインパクト)の評価も下がらない。大型馬が多い中、450キロの馬体はパドックでは目立たなかったが、返し馬ではヴェロックスと同じように大きく映った。積極策に出て終始インの4番手キープ。直線もインを衝いたのは巧みなコース取りだったが、コースロスがなかった代わりに、外から勢い良くスパートした1、2着馬と違い、4コーナーで少し待つシーンがあった。

 2頭と内外に離れて単走になったのも、着差がアタマ、ハナだけに誤算だったろう。距離が2400mに延びるのは、3歳のこの時点では不利ではない。良馬場で切れ味勝負に持ち込める展開なら、日本ダービーでも好勝負と思える。

 アドマイヤマーズ(父ダイワメジャー)は、最内だったのでほぼ予想された通りの位置取り。4コーナーで一番早くスパートしたかったが、もうヴェロックス、サートゥルナーリアが外から進出してそこから「11秒6-11秒4」。先頭に立つシーンが作れなかった。

 3着ダノンキングリーから2馬身差(共同通信杯は1馬身4分1差)。最後は上位3頭に追いすがれなかった。決定的な差とはいえないが、距離のカベを感じさせたところがあり、NHKマイルCに向かう可能性が高くなった。

 上位人気馬が4着までを独占した中、5番人気のファンタジスト(父ロードカナロア)は失速しての13着。こちらもNHKマイルCではないかと思われる。

 上位3頭の内容はすばらしいが、今回は負けたがまだ変わる候補はいる。また、京都新聞杯、青葉賞、プリンシパルSなど日本ダービーに向けたレースはあるが、例年以上の驚くような急上昇を示す「新星」が出現しない限り、日本ダービーの有力候補は絞られた印象を強く残した皐月賞だった。

このコラムの通知を受け取りますか?

お気に入り

このコラムの通知を受け取りますか?

お気に入り

すでにお気に入りに登録しています。

登録済

1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング