スマートフォン版へ

【天皇賞・春】“愛さずにはいられない”ステイゴールドの後継者・エタリオウの素顔

  • 2019年04月21日(日) 18時01分
GIドキュメント

▲貴重な素の顔を見せるエタリオウと、担当の山田正和調教助手 (C)netkeiba.com


高い能力を秘めながらも、あと一歩で勝てないレースが長く続いたステイゴールド。愛さずにはいられなかった“シルバーコレクター”に見た目もキャラクターもよく似た産駒が天皇賞・春に挑みます。通算1勝、主な勝ち鞍は2歳未勝利戦。それでもエタリオウは菊花賞2着など10戦して1勝、2着7回、4着2回と掲示板を外したことがない安定感を兼ね備えています。

実質的なステイゴールド産駒最後の世代となるエタリオウについて管理する友道康夫調教師と担当する山田正和調教助手に伺いました。

(取材・構成:大恵陽子)


これまで真面目に走っていなかった馬が、一変!?


 エタリオウがデビューしたのは2017年9月。新馬戦4着ののち、1カ月後の未勝利戦で最後方から追い込んで初勝利を挙げた。対照的に3戦目はスタートから行きっぷりよく、やや力みながらも2番手でレースを進めて2着。梅花賞では直線で右にヨレながら2着、ゆきやなぎ賞は他馬が来たのに合わせて早めに動いて2着。

 こういったレース内容を顧みて、陣営はチークピーシズやブリンカーなど様々な手法を試みた。そして、現在の「メンコ+ブリンカー」というスタイルに落ち着いたのは青葉賞の頃。

 連続ではあるもののここでも2着になったことで、日本ダービーへの優先出走権を手に入れて、世代の頂上決戦に挑戦。同厩舎ワグネリアンの4着になった。秋は神戸新聞杯で最後方から伸びて2着、菊花賞では直線で一旦は先頭に立ったものの、フィエールマンに差されてハナ差2着と涙を飲んだ。

GIドキュメント

▲菊花賞はハナ差でフィエールマンに敗れた (C)netkeiba.com


「去年の秋からスローな競馬が続いているんですよね」と山田助手が言うように、年明け初戦・日経賞も1000m通過62秒7で、直線は逃げ粘るメイショウテッコンにじわじわ迫るものの、捕らえることはできなかった。

「調教でも先頭に立つとフワッとするので、前に目標があった方が追いかけて走りますし、ペースも流れた方がいいんじゃないかと思います」(山田助手)

 エタリオウにとって不向きともいえるレース展開の中で、上位争いを繰り広げた。

 成績を字面だけで追うと、初勝利後は2着が4戦連続ののち、日本ダービー4着を挟んで3戦連続2着ということになる。それでも、菊花賞で僅差の2着が示すように、確実に成長はしている。

「去年の秋くらいから性格が大人になって落ち着いてきました。馬房でうるさい面を見せることも減りましたね」(山田助手)

 そうした精神面の成長なのだろうか、友道師は前走の内容からこう話す。

「以前は真面目に走っていないところがあったのが、日経賞はいつになく真面目に走り過ぎていたんですよね。もちろんいいことなんですけど、そのぶん去年までの2着と違って、追いつかなかった2着。真面目に走れていたのが成長したからなのか、休み明けで馬が力んだからなのかは今回、競馬に行ってみないと分からないところもありますが、1週前追い切りでいつもより浅めのブリンカーを着けてみました。騎乗したデムーロ騎手も『集中して走っていた』と話していましたし、本番もこれでいこうと思います」

GIドキュメント

▲1週前追い切りを翌日に控えたエタリオウ (撮影:大恵陽子)


後ろ脚の蹄鉄がすぐに減ってしまうほどのパワー


 精神面と言えば、父ステイゴールドは現役時代、「たいがいの馬は怒られるとシュンとしますが、彼の場合は怒られると逆ギレして噛みつきにきました」と、強気な性格だったことを管理した池江泰郎元調教師は話していた。エタリオウの場合はどうなのだろうか。

「エタ(エタリオウの呼び名)は基本的に人が好きで従順ですよ。噛んできてもガブッとじゃなくて軽く噛んでくるだけ。怒るとテンションが上がるのであんまり怒ることもありませんが、怒れば分かりますし、怒ったからといって歯向かってくることはないです」

 と山田助手。

 さらに友道師も

「ステイゴールドの子って気性が激しいって聞きますが、エタリオウは激しいというより真面目じゃない気難しさがある感じです。うちの厩舎にはそんなにたくさんステイゴールド産駒がいるわけではないですが、ココファンタジアは血統も体型も長距離なんですが、集中して走るのが一瞬だったので札幌の1200mで勝ちました。エタリオウもココファンタジアも高い能力を持ちながらもそんなに真剣に走ろうとしないところは似ているのかもしれないですね」

 ココファンタジアが3勝を挙げたように、集中力を上手く引き出せば、内に秘めたポテンシャルを発揮することができるのだろう。

 一部ファンの間では「エタリオウは父ステイゴールドによく似ている」と話題になっている。そのことについて山田助手に話を振ってみるとこんな答えが返ってきた。

「そういえば僕も、ステイゴールドが亡くなった日(2015年2月5日)とエタが生まれた日(同年2月13日)が近いって何かに書いてあるのを見たことがあります。成績や毛色は似ていますね。ステイゴールドは古馬になってからも走っていましたが、エタも時間が経つにつれて良くなっているので、成長力があるんだろうなって思います。

 いま、だいぶどっしりとしてきたんです。僕が乗るのはレース後にオフモードにする時などですが、後ろ脚から伝わってくるパワーがすごいです。後ろ脚の蹄鉄が珍しいくらいすぐ減るんです。恐らく、トモの可動域がいいんでしょうね。この距離カテゴリーでの能力は、同世代ではトップクラスだと思います。秋になれば、さらにもうちょっと良くなっていてもおかしくありません。もしここで大きい所を勝てたら、秋はさらに楽しみが広がりますよね」

GIドキュメント

▲「もしここで大きい所を勝てたら、秋はさらに楽しみが広がります」 (C)netkeiba.com


 そして最後にこう付け加えた。

「レースではブリンカーをしているので見えないですが、エタの素顔はつぶらな目で可愛いんですよ」

 残念ながら、ブリンカーはすぐに外すことができないので勝利後の口取り撮影でも素顔を見ることは難しそうだが、よ〜く見てみるとブリンカーの奥で春の日差しに包まれた可愛い瞳を見ることができるかもしれない。その瞬間が勝利後に訪れることを願う。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

有名予想家・ライターによるGIスペシャルコラムや、有力馬密着レポート、1週前からの調教レポートなど、GIレースの攻略情報をどこよりも詳しく、より濃密にお届けします。公開はプレミアムサービス限定となります。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング