東京2000mを好内容で乗り切った自信は大きい
春の東京、京都に舞台が移って、フローラS、マイラーズCを中心に高速レースが展開され、21日の京都2200m(1000万下)では、4歳ネプチュナイト(父ルーラーシップ、5歳ダンビュライトの全弟)が、日本レコードの2分09秒7で勝った。
オークストライアルのフローラSも、レースレコードとタイ記録の1分59秒5(前半60秒6-後半58秒9)の決着。インから馬群をすり抜けて外に回ったウィクトーリア(父ヴィクトワールピサ)と、そのままインを衝いたシャドウディーヴァ(父ハーツクライ)が内と外に分かれてきわどいハナ差の1着、2着。オークスへの優先出走権を獲得した。
勝ったウィクトーリアは、同じ美浦の小島茂之厩舎の所属だったブラックエンブレム産駒。母は2008年のオークスをトールポピーの4着(0秒3差)に惜敗したが、秋華賞2000mを制している。その産駒は総じて1800m〜2000m級の活躍馬が多いものの、父は有馬記念などのヴィクトワールピサ。逃げ切った前回とは一転、追い込んで勝った自在のレース内容から、オークスの距離にまず不安はないだろう。
レコードタイでトライアルを制したウィクトーリア(撮影:下野雄規)
細身に映る馬体だが、決してギリギリの体つきではなかった。陣営は慎重だが、反動さえなければオークスでも高い評価を受けるだろう。オークスへ挑戦のスケジュールは微妙に変化し、最近10年のオークスで3着以内に快走した30頭のうち、9頭をフローラS組が占めている。「1着…1頭、2着…4頭、3着…4頭」。桜花賞から直行グループの18頭には及ばないが、そのほかのステップ馬は3頭しかいない。
同じ1分59秒5でクビ差1、2着の激戦だった昨年のサトノワルキューレ、パイオニアバイオは本番で「6着、7着」に沈んでいる。今年も激戦だっただけに気になるが、2016年に1分59秒7(あの時点のレースレコード)で勝ったチェッキーノは、本番をシンハライトのクビ差2着してみせた。今年の2頭はタフなはずである。
ハナ差2着のシャドウディーヴァは、前があかずに待つシーンもあったが、勝ち馬も進路変更があったのでロスは五分か。落ち着き十分の好気配が目立った。母方にも距離不安はなく、母の父ダンシリはBMSとして愛オークスのチキータを送っている。ハーツクライ産駒らしく東京2000m【1-3-1-0】。岩田康誠騎手は「2400mの方が乗りやすいと思う」と、惜敗はしても強気になった。
トライアル快走の2頭には「激走の反動がなければ…」の条件はつくが、東京2000mを好内容で乗り切った自信は大きい。フラワーCのコントラチェック(父ディープインパクト)、忘れな草賞のラヴズオンリーユー(父ディープインパクト)などとともに、桜花賞組に対抗したい。グレード制が敷かれて35年。桜花賞出走馬が連対(1、2着)しないオークスは「1985、2001、2011年」のたった3回しかないが…。
オークス出走がかなう可能性があるのは賞金1200万のウインゼノビア(父スクリーンヒーロー)だが、好位でうまく流れに乗り見せ場を作ったものの、残り100mで失速した。
上がり33秒8でゴール寸前の鋭さが光った4着パッシングスルー(父ルーラーシップ)と、馬群をさばけず上がり2位タイの33秒5で伸びながら6着のペレ(父ハーツクライ)はちょっと残念だったが、18頭立ての接戦だけに仕方がない。ともに浅いキャリアの1勝馬。秋に向け、次の500万下では確勝を期したい。
新星として大きな注目を集めたセラピア(父オルフェーヴル)は、入れ込みもなくすばらしい馬体。好スタートを切ったが、向こう正面で外から伏兵に来られると、かかってしまった。スケールもムードも備え、初の遠征も初コースも平気だったが、かかる場面があってはキャリア(レース経験)不足が致命的だったというしかない。立て直して、秋には同じ芦毛のファビラスラフインのように成長したい。
直前の「マイラーズC」は、レースバランス「48秒5-44秒1」=1分32秒6。前後半の差「4秒4」というマイルGII重賞にしては信じがたい超スローだった。硬い馬場ではなく、古馬なので大丈夫だが、上位馬の大半が上がり「32秒0-32秒5」。楽なレースのようにみえて、かえって脚部(腱)に負担がかかることがある。ちょっとだけ心配が残った。