父の精神をもっとも良く受け継いだ産駒かもしれない
4歳エタリオウ(父ステイゴールド)は、2歳秋の未勝利戦を勝っただけの1勝馬【1-7-0-2】。詰めの甘さに泣く印象を与えるが、日本ダービーの4着(0秒2差)は後方から猛然と伸びて上がり33秒5。上位入賞組では断然No.1だった。
秋の神戸新聞杯2着も外から鋭く伸びて最速の33秒9。菊花賞はあまりのスロー(最後だけ10秒7-11秒3)に、フィエールマンにハナ差だけ切れ負けしたが、早めにスパートして上がりは最速タイの33秒9。鋭さを爆発させた地点が違っただけでフィエールマンと同じ上がり。ゴール前は差し返す勢いだった。勝ち運がないのは事実だが、詰めが甘いわけではない。
種牡馬ステイゴールドの最大の功績は、オルフェーヴル、ゴールドシップ、フェノーメノ…など、自身を超える産駒を複数送ったこと。ステイゴールド系を成立させ、発展することになった。なおかつ、相手の牝馬に注文がつかず、必ずしも名門の良血とは形容されない牝馬との間にも優れた産駒を送り、明らかに短距離タイプの牝馬との配合でも、自身のスタミナ能力はフルに伝えた。名門の良血牝馬との組み合わせの産駒は、不思議なことに案外だった。
ファンだけでなく、種牡馬になって中小の生産者にも根強い支持を受けたのは、まるで人びとの心情を理解していたような結果を残したからだろう。いつも弱者の側に立ったところがある。国内GI【0-4-2-13】は知られる。でも、人気で負けたのではない。国内GIで1、2番人気は一回もない。
馬券に絡んだ計6回は「10、9、4、11、7、12」番人気。評価が下がったときにみせる反骨の激走だった。史上最多タイ記録となる産駒の天皇賞(春)4勝も、みんな1番人気ではない。
事実上の最終世代になる4歳エタリオウは、初めて1番人気の前回、初めて人気を下回る着順(2着)だったが、ステイゴールドの精神をもっとも良く受け継いだ産駒だからかもしれない。エタリオウが天皇賞(春)で最終的に1番人気になっては、正統派のステイゴールド産駒ではなくなってしまいかねないが…。
コンビのM.デムーロ騎手は、先週までランキング4位。ムラな一面をのぞかせて今季はちょっと評価が落ちているが、彼もまた気概の男。反骨コンビの人馬の大仕事に期待したい。
懸命にがんばって、また2着にとどまる危険は大いにあるが、それはエタリオウが、7歳秋までずっとG1を勝てないでいた父ステイゴールドに良く似ているのを再確認させてくれること。また次に期待するしかない。付き合いは長くなるだろう。
フィエールマン、同厩のユーキャンスマイルが強敵。穴馬は立ち直っているクリンチャーと、ベテラン7歳のパフォーマプロミス(父ステイゴールド)。