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総論が勝つかそれとも各論が勝つか!?/NHKマイルC

  • 2019年04月30日(火) 18時00分

■NHKマイルC(G1・東京芝1600m)フルゲート18頭/登録22頭


【特注データ】3行でわかる! レース攻略の糸口



 とんでもない大穴が激走することでもよく知られるNHKマイルCだが、基本的には「前走5番人気以内」であることが、このレースで好走する上での必要条件。2014年に17番人気で2着に激走したタガノブルグですら、この条件をしっかりクリアしている。前走で6番人気以下だった馬に関しては、よほど強力な買い材料でもないかぎり、手を出さないほうが賢明だろう。

 今回掲載したのは、「前走距離×前走or今回人気」別で集計したデータ。前走で芝1600m以下戦に出走していた馬については、「前走4番人気以内かつ前走2〜5着」というのが、もっとも期待できるパターンとなっている。また、前走5番人気以下で好走しているのが、ほとんど牝馬であるという点にも注目。この組の牡馬で前走5番人気以下だった場合は、トータル[0-0-1-48]とほぼ全滅している。

 前走が芝1800m以上だった組は、前走ではなく「今回」の人気で絞り込んだほうが正確。今回5番人気以内だった馬がトータル[2-6-2-13]で連対率43.5%と超優秀であるのに対して、今回6番人気以下馬は[0-0-3-18]と明暗クッキリ。ちなみに、6番人気以下で好走した3頭については、前走でも中山で出走していたという共通点があった。この条件を満たしている馬ならば、ギリギリ押さえてみる手もありそうだ。

 あとは、直線の長いコースではあるが意外なほどに差せないことや、きわめてフラットなコースで枠番の内外を気にする必要がないことなども、このレースを予想する上での重要なポイント。特注データ以外も加味した上での「特注馬」には、皐月賞4着からの捲土重来を期するアドマイヤマーズと、ここを照準にきさらぎ賞から流行りの「ぶっつけ」で挑むダノンチェイサーの2頭を選んだ。




【コース総論】東京芝1600m Aコース使用

・コースの要所!

★ふたケタ人気の単勝を狙うのはナンセンス。人気薄はヒモで狙うのが正解。
★枠番の内外による成績差は皆無。外枠を理由に評価を割り引く必要はない。
★差せるがイメージほどではない。好位から競馬できる馬を上位評価すべき。






 向こう正面のいちばん右側からスタートして、長いバックストレッチをフルに使う東京芝1600m。最初のコーナー進入までが500m以上もあるので、序盤のポジション争いが激化することはなく、自然と展開の紛れも少なくなる。どの馬も能力をキッチリ発揮できる、多くのG1が開催されるにふさわしいコースといえる。

 まずは人気別成績だが、まずいえるのが極端な人気薄を1着で狙ってはダメだということ。フルゲート18頭に限定したデータでも、ふたケタ人気馬はトータル[1-8-15-684]で勝率なんと0.1%。ひとケタ人気馬でなければ勝てない──といっても過言ではないだろう。人気薄が2〜3着に好走するケースはけっこう多いが、アタマで狙うのはナンセンス。穴馬はヒモで狙うというのが、このコースの鉄則だ。

 次に枠番だが、簡潔にいえば気にする必要はまったくナシ。枠番の内外による成績差がここまで小さいコースも珍しい。多少は内枠のほうが信頼度が高いのだが、平均人気の差を考えれば当然の話で、それを加味すると中枠や外枠のほうが内容がいいほど。単純に内外で比較したデータを見れば、いかに公平なコースかよくわかることだろう。

 最後に枠番だが、こちらは「イメージほどは差せない」というのが結論。最後の直線が長く、中団や後方からの差しや追い込みが届きそうだが、もっとも安定感があるのは、4コーナーを6番手以内で回った先行勢だ。最速上がり馬の成績が「1着よりも2着のほうが多い」というのも、その裏付けとなるデータ。クラスが上がると差し優勢の傾向が強まりはするが、それでも差し優勢とまでは言えない印象である。

【レース総論】NHKマイルC(G1) 過去10年

・レースの要所!

★人気サイドは成績優秀。相手には中穴ではなく、思いきって大穴を狙いたい。
★狙って美味しいのは過小評価の外枠か。コースデータ以上に先行勢が鬼強い。
★距離延長組は大幅割引。前走での上がりが速かった馬の過信は禁物のレース。
★迷ったら毛色が「黒くない馬」を選択。牝馬や関西馬の強さも目立っている。









 レースの平均配当は、単勝1142円、馬連7969円、3連複8万1317円。2009年を筆頭にドカ荒れした年が何度もある、かなり波乱傾向の強いレースである。順当に決まったのは2011年くらいのもので、おそらく今年もある程度は荒れると踏んだほうがいいはず。人気サイドの信頼度は高く、内容も優秀だったりするのだが、相手にとんでもない穴を連れてくるのがこのレースなのだ。

 実際に人気別成績を見ても、波乱傾向の強さがよく感じられる。4〜6番人気や7〜9番人気といった中穴ゾーンの内容がイマイチで、対照的にふたケタ人気の超穴馬がバンバン馬券絡みしている。10〜12番人気の複勝率が13.3%もあるというのは破格で、中穴よりも大穴を狙うべきレースであるのは明らか。ここは攻めの姿勢で、中途半端な穴ではなく10番人気以下馬を積極的に拾っていきたい。

 枠番については、コースデータの項目でも述べたようにフラット。内枠、中枠、外枠のいずれも複勝率16.7%と見事に横並びで、勝率や連対率にも大きな差はない。ただし、平均人気を加味して考えると内枠の評価が下がるというのは、馬券を買う際にも意識しておきたいポイント。内枠が過剰に人気する傾向が見受けられるので、中枠や外枠を狙ったほうが馬券的にはオイシイのだ。

 枠番はコースデータ以上に先行勢が優勢。驚いたのが中団待機組のイマイチさで、4コーナーを7〜12番手で回った馬は[0-3-7-53]と未勝利。連対率も4.8%という低さで、4コーナーを13番手以下で回った後方待機組のほうが格段に高い。上がり3F順位の上位馬も総じて勝率が低く、イメージよりもはるかに差せない──という結論に。逃げた馬が残る確率も高く、ハッキリと先行勢優勢なのである。

 その証明となるのが、前走での上がり3F順位別での成績だ。芝G1において「前走で速い上がりを使っていた」という事実は大きな魅力となるが、このレースはどうやら例外。前走での上がり3F順位が3位以内だった馬に限定しても、トータル[4-5-3-55]で複勝率17.9%と、その信頼度は意外なほどに低い。「前走中山で出走して上がり3F順位が4位以下だった馬」などを狙ったほうが、期待できるレースだといえる。

 前走距離別ではファルコンS組など、芝1400m以下戦に出走していた組がイマイチ。過去10年で8勝をあげている前走芝1600m戦組が中心となるが、芝1800mや芝2000mからの距離短縮組も複勝率29.5%、複勝回収値144という優秀な結果を残している。勝率はそれほど高くはないので、こちらは1着ではなく、2〜3着で狙うのが効率がよさそうである。

 最後に、判断に迷ったときに使える「小ネタ」をひとつ。NHKマイルCは黒鹿毛や青鹿毛など、「黒っぽい毛色の馬」が弱いレース。トータル[2-1-0-37]と3回しか連対しておらず、しかもこの3回はすべて2番人気以内でのものだ。アノマリー系のデータなので再現性は低いが、それを承知の上で頼ってみるのも面白そう。最終判断で迷ったら、明るい毛色を狙ったほうが吉と出る確率は高い……かもしれない。

【血統総論】



 血統面では、ディープインパクト、ロードカナロア、ルーラーシップの産駒をプラス評価の対象とした。ディープインパクト産駒は多くのコースで好成績を残しているが、東京芝1600mでの複勝率は、なんと40.7%という強烈な高さ。回収率ベースの数値も高く、その適性の高さは疑いようもない。それに比肩しうる存在が、ロードカナロア産駒とルーラーシップ産駒。ディープインパクト産駒よりは少し落ちるが、こちらも信頼度の高さは相当なモノだ。

★NHKマイルC 総論×各論

 圧巻の内容で桜花賞を制したグランアレグリアが、オークスには向かわずにこのレースを選択。さらに、皐月賞でも人気を集めたアドマイヤマーズ、早くからここに照準を合わせて調整されてきたダノンチェイサーなどの参戦により、かなりレベルの高いメンバー構成となった。トライアルを快勝してきたワイドファラオなども侮れず、例年以上に白熱したレースが見られそう。今から週末が楽しみなほどだ。

 しかし、正直なところ困っている。というのも、「総論」としては間違いなく荒れるレースなのだが、「各論」としてはメチャクチャ堅そうだから──である。今年の登録馬をデータ面から精査していくと、買いジャッジとなるのは上位人気が予想される馬ばかり。さんざん荒れると煽っておいてこの始末だから、さすがに心苦しい。

 とはいえ、評価を騙るわけにはいかないので、正直に進めさせていただこう。現時点でのトップ評価は、僅差でダノンチェイサー。きさらぎ賞以来というローテ以外は、ほとんどの項目でプラス評価の対象となった。そして「叩き」のレースが必要ない時代に突入しているのは、この春のレース結果でさんざん思い知らされたこと。ぶっつけで好勝負可能なポテンシャルの持ち主だからこそ、このローテなのだと判断した。

 二番手評価に、皐月賞の4着馬であるアドマイヤマーズ。朝日杯フューチュリティSを制した芝1600mに戻って、改めてその真価が問われる一戦となりそうだ。こちらも買い材料は非常に多く、それでいて割引材料はほぼゼロ。2〜3着に取りこぼす可能性はあるかもしれないが、上位争いできる確率は非常に高いとみている。M.デムーロ騎手には、この馬で久々に「らしさ」を見せてもらいたい。

 三番手評価にグルーヴィット。前走が芝1400mというのが大幅マイナスではあるのだが、それを補ってあまりある魅力がこの馬にはある。前走芝1600m以下組における「前走4番人気以内かつ前走2〜5着」という好走パターンに合致しており、父ロードカナロアという血統もプラス。その他にも買い材料は多く、D.レーン騎手が騎乗予定というのも強調材料だろう。この中間の調整も順調で、一発が大いに期待できそうだ。

 四番手評価にグランアレグリア。桜花賞で見せた驚異的なパフォーマンスに、度肝を抜かれたファンも多かったことだろう。オークスではなくこちらに向かうというのは、距離適性もあるが、こちらのほうが確実に勝てるという「見立て」があったからだと推測する。ただし、この骨っぽい相手関係で圧倒的な支持を集めるようならば、ちょっと逆らってみるのも面白そう。データ的にも、そこまで絶対的な存在ではないと判断した。

 以下はヴィッテルスバッハ、ワイドファラオ、ハッピーアワーという評価の序列──と、本気と書いてマジで「各論」評価は堅めである。枠番の影響が非常に小さいコース&レースなので、あとは当日の人気がどうなるかだけ。この評価順で高配当を狙うとなると、グランアレグリアの扱いがカギとなるのは間違いない。個人的には、令和という時代のスタートにふさわしい、アツい馬券で勝負してみる所存である。


■総論×各論・先々週の馬券回顧



ド本線で当たったぞっと(*^ω^)♪

 このコラムの馬券も的中、さらに「ウマい馬券」で出した予想もド本線と、内枠狙いのスタンスが見事にハマってくれました! 予想原稿でも書きましたが、出走馬のレベルがどんぐりの背比べであればあるほど、枠番というファクターの重要性が増すんですよねー。ちゃんと09ジョディーが残せたのもあって、珍しく自画自賛。こういう的中が、できれば3回に1回は欲しいんだけども(切実)。

※コース&血統データは2015年以降、レースデータは2009年以降が集計対象です。
※ギャップ値(G値)は、当該条件における「平均人気-平均着順」を表すもの。プラスの数字が大きければ大きいほど、優秀な内容となります。

【予想】小林誠の勝負予想は『ウマい馬券』でチェック!

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競馬業界よろず請負人。1974年三重県生まれ。これまで裏方的な仕事に数多く関わってきたが、さすがに限界を感じて、最近は表舞台への進出を画策中。ライターとして『サラブレ』『UMAJIN』などに寄稿するほか、須田鷹雄監修の『POGの達人』には編集デスクとして参加。2005年に前半3ハロンタイムに特化した予想メソッドを発表し、それを用いた予想をnetkeibaにて公開している。コーヒー党、無類の猫好き。

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