快走率高い牝馬、総合力秘めた成長株の牡馬に期待/NHKマイルC
活力を奪うような消耗戦にならないことを望む
安田記念、ヴィクトリアマイルと同じ東京コースだけに、勝ち馬に求められるものはきびしい。みんなやっと満3歳前後。才能に体力が追いついていないケースが多い。調教、育成技術の格段の進歩により各馬のレベルは上がり、成長(完成)は早まったが、NHKマイルCには決して忘れてはならない怖い側面がある。
快走したあとのことなど関係ない、といってしまえばそれまでだが、みんな才能にあふれる未来展望の3歳馬。レース検討にも少なからず関連はある。
調教、育成技術は格段に進歩したが、競走馬の成長曲線は変わらない。最近10年の勝ち馬のうち、のちにGIを勝ったのは14年ミッキーアイル(2年後のマイルCS)たった1頭だけ。
史上、1分31秒台〜32秒台の高速決着の勝ち馬は9頭。そのうちのちにGIを制したのは04年キングカメハメハ(日本ダービー)ただ1頭。しかも、同馬はNHKマイルCのあと2戦だけで引退に追い込まれた。
史上、牝馬は【5-3-4-34】。牡馬より断然、快走率は高い。だが、3着以内に快走した計12頭のうち、のちのGI勝ち馬は97年シーキングザパール(仏のモーリスドゲスト賞1300m)わずか1頭のみ。
総合スピード能力勝負の東京マイルは、無理などしていないように見えてもきびしい。このGIを能力全開の激走で失うものは確実にある。10年ダノンシャンティ、16年メジャーエンブレムは、このレースが最後だった。
桜花賞レコードの1分32秒7で快勝したグランアレグリアのスピード能力はすばらしい。前回は自身の1000m通過59秒4のスローなのに、1分32秒7だった。今回もまた快走必然の力関係と思えるが、遠征でレコード勝ち後、初めて中3週。見えない疲れうんぬんではなく、前回は意外に軽い調教で勝ってしまったが、前回がすでにNHKマイルCだった危険は否定できない。
再度、桜花賞と同じような緩い流れになる可能性はある。グランアレグリアがここで失うものなど何もないことを願いたいが、ウィンクスのような馬ではないのもたしかである。活力を奪うような消耗戦にならないことを望みたい。
まだ未完成で、驚くようなスピードや鋭さは物足りなくてもいい。この後もっと成長してくれそうな総合力を秘める牡馬に期待したい。
時計が速すぎると勝ちみに遅い死角はあるが、距離1800mでも快走しているダノンチェイサーは、身体つきからみて、まだこれから良化しそうな成長株。
きさらぎ賞を勝ち、5戦3勝となりながら皐月賞挑戦は回避。当初、NHKマイルC→日本ダービーの路線を歩むのでは?…とされたが、リフレッシュと再鍛錬で身体つきが変わってきた。1800mでも好走しているように、総合スピードが求められるレベルの高いマイル戦はベストに近いだろう。同じ配合型のミッキーアイル(母の父ロックオブジブラルタルは愛英仏米でタフに13戦10勝)が示したように、そう鋭くはないが、東京の長い直線でもしぶとく伸びるはずだ。