スマートフォン版へ

重要レースでの好走を重視、陣営が早くから最大目標に設定/優駿牝馬

  • 2019年05月18日(土) 18時11分

母の父となって躍進を始めたクロフネ


 遠い時代は別に、過去20年のオークス快走馬の「前走」別成績は、

▽GI桜花賞……「1着16頭、2着13頭、3着11頭」
▽GIIフローラS……「1着2頭、2着6頭、3着6頭」
▽忘れな草賞……「1着2頭、2着0頭、3着1頭」
▽スイートピーS「1着1頭、2着0頭、3着1頭」

 (1着同着1回、3着にその他1頭)となる。前走、桜花賞組断然。

 今年は3月のフラワーCから直行の人気馬コントラチェックがいる。皐月賞11着→オークス3着のバウンスシャッセの半妹。過去、フラワーC(1987年創設)から直行での快走馬はいないが、フラワーCを経由した馬とするなら、桜花賞出走馬などとダブるが、過去20年「1着2頭、2着3頭、3着3頭」が隠れて存在する。

 まして近年は、間隔が空く出走は大きな死角ではない。さらに、前走が忘れな草賞組にも、そのあとスイートピーSを使い、オークス3着ラブカーナ(07年)を加えることができる。

 しかし、強敵相手とポイントになる重要レースで好走した経験を重視したい。距離不安はあっても桜花賞組の好成績には、そういう理由がある。クロノジェネシス(父バゴ)は、陣営が早くから最大目標をオークスに設定し、関西馬ながら東京の芝【2−0−0−0】の星がある。

 直線、外に振られた阪神JF2着は半馬身差。同じように直線狭くなり、外に回るロスがあった桜花賞3着も、2着とはクビ差だった(勝ったグランアレグリアは不在)。崩れていないところを評価したい。

 先週のヴィクトリアマイル。果敢に飛ばして大レコードに貢献したアエロリットの父はクロフネ。奇しくも、勝ったノームコアは母の父がクロフネだった。

 クロフネは08年から10年連続して総合種牡馬ランキング10位以内を続けたまだ元気な名種牡馬だが、ここまでクラシック馬の父となっていない。おそらくスピード能力を前面に出し過ぎるのが一因だろう。

 だが、その父フレンチデピュティ(マカヒキの母の父となった)と同様に、母の父の時代になって改めて評価急上昇。BMSランキングは、今年を含めた最近5年「12→8→6→5→2」位であり、父フレンチデピュティと一緒に常勝サンデーサイレンスを追撃している。すごい躍進である。

 オークスでの直仔は、14世代でホエールキャプチャの3着(11年)だけなのに、BMS(ブルードメアサイアー)としては半分の世代数で、2着リリーノーブル(18年)、3着アドマイヤミヤビ(17年)、3着アイスフォーリス(12年)を送る。

 次週の日本ダービー出走予定のリオンリオン(青葉賞1着)の母の父もクロフネである。スタミナや底力はあってもスピードもう一歩の種牡馬の産駒に、スピードと切れを加えるサポート種牡馬として躍進を始めたのである。

 クロフネは、母の父となって、なぜかクラシック馬を輩出できなかった不思議に終止符を打ちたい。バゴ産駒のクロノジェネシスに距離不安は少ないはずだ。

 大器の可能性を秘めるラヴズオンリーユー、さらにコントラチェック以下、ライバルは多いが、怖いのは距離適性で上回るエールヴォア(父ヴィクトワールピサ)。祖母の父にトニービンを持つ、ステイゴールド一族である。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング