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「トレーニングセール2019」公開調教レポート

  • 2019年05月22日(水) 18時00分
生産地便り

トレーニングセール2019公開調教の模様をレポート

各陣営とも例年以上に仕上げてきている印象が強かった


 この時期恒例の2歳セリ「トレーニングセール」が5月21日(火)、札幌競馬場を会場に開催された。例年通り、前日20日が公開調教、セリが翌21日というスケジュールである。

 さらにその前日(19日)が事前下見日に充てられており、各上場馬の多くは18日(土)のうちに札幌競馬場入りしていた。セリ当日まで全4日間の日程であり、毎度のことながら、上場馬を飼養する育成牧場(とりわけ小規模でスタッフの限られているところなど)にとっては負担の大きなセリである。

 さて、20日の公開調教。開始時刻は午前10時。札幌競馬場は良く晴れていて気持ちの良い陽気に恵まれたものの、今回はいつにも増して西風が強く、晴天の続く札幌競馬場のダートコースは乾き切っており、時折砂塵が舞うほどであった。

 公開調教は例年通り、基本2頭併せで実施され、全体を5グループに分割し、各グループに23組〜25組が登場する。ダートコースの向こう正面付近に集合し、1組ずつ常歩からキャンターと速度を上げて行き、残り400m2ハロンの地点から計測を開始するので、どの馬も一気に増速する。そして、その勢いを保ちながら、残り200mからはさらにスピードを最大限に上げ、一気にゴール板まで突っ走る。

 今年は強い西風が“追い風”になったこともあってか、好タイムが続出した。上がり1ハロン10秒台も珍しくなく、中には残り2ハロンをともに10秒台でまとめ、21秒台前半で走破する例もあった。全体的にかなり仕上げてきている印象が強かった。

 調教1番時計は第5クルー12組目に登場した上場番号19番マリノアンチークの2017(ローズキングダム牡)の21秒28(10秒94、10秒34)。因みに騎乗者の体重は60キロであった。

生産地便り

調教1番時計、マリノアンチークの2017

 昨年もそうだったが、今年も調教中に目立った故障やアクシデントがなかったのは幸いであった。ただ1頭だけ、途中から速度を落としダクでゴールした例はあったものの、外埒に大きく逃げたり、あるいは横の芝コースとの境目の埒を飛び越えてしまったり、骨折し予後不良になるような馬がいなかったので、公開調教は予定通りに進行し、午後3時15分頃に終了した。

 日向ならば普通に過ごせる陽気だが、トレーニングセールの行なわれる5月下旬の札幌は、日陰に入るとやはり寒い。今回も、スタンド2階のカメラマン席に陣取り、全馬の公開調教を撮影したが、長時間じっとカメラを構えていたので、体が冷えて困った。気温はそれほど低くはないものの、風の強さも体感温度を大きく下げる原因であった。同じような場所で撮影する他の人々も、頭からすっぽりとフードを被ったり、膝かけを体に巻いたりしながらの撮影で、薄着では耐えられない寒さなのだ。

 公開調教を見学する購買関係者たちもBOKUJOBが貸し出すフリース地の膝かけを体に纏い、震えながら見る姿があちこちで見られた。寒さと強風により、外での見学を早々に切り上げ、スタンド内部のモニターでチェックする人も少なくなかった。

 昨年の公開調教では元JRA騎手の藤田伸二氏が来場し、騎乗したことがずいぶん話題になったが、今年は藤田氏の来場こそなかったものの、育成牧場スタッフに混じって、中央地方の現役騎手が数多く騎乗し、プロの技術を披露していた。ここ一番の公開調教には、斤量の軽いプロに依頼する育成牧場が多くなっており、中でも非開催日のホッカイドウ競馬からは石川倭、五十嵐冬樹、山本咲希到、松井伸也、黒澤愛斗などの各騎手がそれぞれ1クルーあたり5、6頭に騎乗していた。また中央では高田潤、荻野琢真騎手の名前もあった。

 なお、調教2番時計は、第5クルーに登場した10番マリンブラストの2017(キングヘイロー牡)の21秒31(10秒83、10秒48)。

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調教2番時計、マリンブラストの2017(写真奥)

 3番時計は第4クルー15組目に登場した245番ポーカーアリスの2017(リーチザクラウン牡)の21秒35(10秒78、10秒57)。

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調教3番時計、ポーカーアリスの2017

 4番時計は第5クルーに登場した77番ウーマンインレッドの2017(ベーカバド牡)の21秒37(10秒84、10秒53)。5番時計は第3クルー19組目に登場した88番モエレカバーガールの2017(メイショウボーラー牡)の21秒55(10秒94、10秒61)であった。

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調教5番時計、モエレカバーガールの2017

 ただし、時計は非常に僅差で、なおかつ騎乗者の斤量や技術にも違いがあり、購買関係者はそのあたりを考慮しながら調教を見ることになる。とにかく2ハロン21秒台が続出し、平均して各陣営とも例年以上に仕上げてきている印象が強かった。

 ところで、公開調教が各育成牧場(飼養者)単位で併せ馬になることから順番がバラバラで非常に分かりにくい、という声を聞いた。確かに、例えば第1クルーを例にとると、調教登場順が、23と142、20と209、39と61、123と6…というように順不同で出てくる。前述のホッカイドウ競馬の騎手などに騎乗依頼している場合もあり、調整が必要になるケースも出てくるわけだが、これはそう簡単に改善できないことなので解決は難しいだろうと思われる。

 名簿上では259頭にも及ぶ上場申し込み頭数であり、10数頭もの上場馬を抱える飼養者もいる。公開調教を上場順に実施するには単走が必須だが、そうなれば全体の所要時間は倍かかることになり、現実的にはおそらく不可能であろう。現状のままで実施する以外になさそうだ。

 次回はセリ当日について触れたい。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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