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その“重み”が問われる日本ダービー

  • 2019年05月25日(土) 12時00分

人間味あふれるドラマがあってもいいのでは


「これから始まる大レース、ひしめき合っていななくは、天下のサラブレッド3歳馬、あしたはダービーめでたいな」

 今から50年ほど前、昭和の時代に流行った「走れコウタロー」の一節です。元の歌詞は「4歳馬」(当時の馬齢は数え年表記でした)で「きょうはダービー」なのですが、このコラムに合わせてアレンジしちゃいました。

 それはさておき、いよいよ日本ダービー。皐月賞馬のサートゥルナーリアが大本命に推されています。ただし、今回はD.レーン騎手に手替わりしました。

 乗り替わり騎手によるダービー制覇は、1985年(シリウスシンボリ)の加藤和宏騎手が最後。初騎乗で優勝した騎手となると、戦後では1954年(ゴールデンウエーブ)の岩下密政騎手しかいません。

 さらに、6番の馬が勝ったのは2回だけ。例がないわけではありませんが、86年のダイナガリバー以降、30年以上も途絶えています。サートゥルナーリアには厳しいデータが突きつけられていると言っていいでしょう。

 もちろん、それらを跳ね返して同馬が優勝しても、ちっとも不思議じゃないですよね。でも、ここでレーン騎手が勝っちゃったら、日本ダービーの“重み”が問われることになりませんか?

 だって、これまで事あるごとに、「日本ダービーは日本のすべてのホースマンにとって“最大の目標”」と言ってきたわけでしょう?

 中野栄治さんや安田隆行さん、柴田政人さん、南井克己さん、河内洋さん、武豊騎手、横山典弘騎手、福永祐一騎手といったジョッキーたちが初めてダービーを勝ったときには、大きな感動を覚えたじゃないですか? レーン騎手には失礼かもしれませんが、今回彼が勝ったとしても、そういうドラマにはならないと思うんですよ。

 昔はよかったと決めつけるわけではないのですが、昭和の時代の競馬は、もっと泥臭くて、ギラギラしていたような気がします。それが、平成の時代を経て、とてもキレイになりました。スタンドにしても、レースにしても、馬券にしてもです。

 ダービーで言えば、かつては、20頭を超える馬たちがそれこそ“ひしめき合って”走っていました。ところが、18頭フルゲートになって馬場の整備も進んだおかげで、レースはとてもスマートになったと思います。

 勝利寸前の馬の厩務員さんが興奮のあまり馬場に飛び出しちゃったとか、ドロドロの馬場の大外で死力を振り絞った戦いが繰り広げられた(それこそ、シリウスシンボリのダービーがそうでした)とか、そんなハチャメチャなことは見られなくなりました。時代が変わったんですね。

 令和という時代には、外国人騎手の“ワンポイント騎乗”によるダービー制覇が当たり前のことになるのかも。レーン騎手が勝てば、まさにそのさきがけになりそうです。

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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