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執念のプラスアルファを生んだ人馬に栄冠が訪れる/日本ダービー

  • 2019年05月25日(土) 18時00分

コースを味方に逆転を狙うディープインパクト産駒


 今年の日本ダービーは、サートゥルナーリア(父ロードカナロア)を中心とする3強対決に近い図式になった。休み明け、キャリア3戦、それで皐月賞史上4位の1分58秒1(皐月賞レコードは17年アルアインの1分57秒8)で勝ったのだから、サートゥルナーリアの断然人気は当然。まだ底などみせない可能性にあふれる。無敗の2冠馬となるとき、秋には凱旋門賞挑戦が実現する。

 ただ、皐月賞(1939年創設)の上位3頭が日本ダービーでも上位3着までを独占のケースは、過去78回のうちわずか4回。そっくり同じ着順は、まだ競走馬資源がきわめて乏しく、力関係が歴然だったトキノミノルの1951年のみ。3強の図式なら、着順の変動はあって不思議ない。

 グレード制が敷かれて35年、皐月賞上位馬の成績は、

皐月賞1着馬【10-4-4-13】不出走4
 〃 2着馬【4-3-3-22】不出走3
 〃 3着馬【6-3-4-17】不出走5

 2,3着馬の逆転勝利が計10回もあるが、1番人気に支持された皐月賞馬は【9-2-2-1】であり、皐月賞を1番人気で勝ち、ダービーも1番人気の馬に限れば【6-0-1-0】。サートゥルナーリア軽視は賢明ではない。

 最大の死角は、テン乗りの騎手で勝った馬は、1954年以来65年間もいないこと。これは騎手の技量の問題ではなく、日本ダービーはふだんのレース以上に執念のプラスアルファを生んだ人馬に栄冠が訪れるということだろう。初コースは近年では死角ではない。

 ダノンキングリーの逆転は十分にある。最近7年で4勝もしているディープインパクト産駒だが、うち3頭は皐月賞を負けながらダービーで巻き返している。理由は10年ディープブリランテ、16年マカヒキ、18年ワグネリアンも、改めて挑戦者の立場に戻ったところに、東京コースの方が合っていたためである。

 ダノンキングリーも明らかに東京(2戦2勝)の方が合う。共同通信杯では好位追走からインを衝いてスパートし、自身推定「11秒0-10秒8-11秒1」=32秒9で抜け出している。450キロ台の馬体は小柄にも映るが、アドマイヤマーズを差して抜け出した最後の100mは、父と同じように道中よりずっと大跳びに変わっていた。

 半兄ダノンレジェンドが完全な短距離馬(ダート1400m以下で14勝)だったため、距離不安をささやかれるが、兄はマッチョウノ産駒。こちらはディープインパクト産駒であり、牝系ファミリー全体は短距離系ではない。母の半弟ウエストコーストは17年のトラヴァーズS(米GI、ダート10F)など、9F以上のGI【2-3-1-1】。3代母の父は米の良血馬を結集した2冠馬マジェスティックプリンス【9-1-0-0】であり、高速の芝のふつうのペースなら3歳馬同士の2400mはこなせるはずだ。

 ディープインパクトと、Storm Cat牝馬の組み合わせは大成功。GI馬は先週のラヴズオンリーユー、キズナ、仏ダービーのスタディオブマンなど8頭にも達している。

 皐月賞は厳しい流れを早め早めに追走し、少し馬場の痛んだインに突っ込み「頭、鼻」差。直線で3頭が並んで競り負けたように映ったが、実際は外の2頭は併せ馬。ダノンキングリーは内に入り単走になっていた。この枠順なら、東京のCコースで再度インを狙う作戦も取れる。

 当然、サートゥルナーリア、強運の金子オーナー(15年間に日本ダービー4勝)のヴェロックスが強敵。相手を絞る手だろうが、日本ダービーだけにアドマイヤジャスタ、サトノルークス、レッドジェニアルあたりにも手を広げたい。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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