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女性騎手2kg減の効果は…

  • 2019年05月28日(火) 18時00分

今回の施策は女性騎手増加に繋がるか


 中央競馬では今年3月から、地方競馬では(一部主催者を除いて)4月から、女性騎手2kg減のルールが施行されている(見習の場合最大4kg減、重賞など一部レースは適用外)。

 フランスでは2017年3月から女性騎手の一律2kg減が実施された。その初年度には女性騎手全体で勝利数が飛躍的にアップし、また冬場のローカル開催ではあるものの見習女性騎手がトップクラスの男性騎手を抑えてリーディングに立つなどしたため、2018年3月からは平地競馬については1.5kg減に改定されている(障害は2kg減のまま)。

 さて、日本の女性騎手は2kg減の導入によって成績がどうなっただろうか、調べてみた。名前右のカッコ内は所属とデビュー年。地方騎手は地方のみの成績、JRA騎手はJRAのみの成績。「2018」は2018年度の成績で、地方騎手は2018年4月1日〜2019年3月31日、JRA騎手は2018年3月1日〜2019年2月28日。「2019」が2kg減施行後の成績で、地方騎手は2019年4月1日〜5月27日、JRA騎手は2019年3月1日〜5月26日。数字は、出走数-1着-2着-3着(勝率-連対率)を示している。

女性騎手の成績比較


 濱尚美騎手は今年4月デビューなのでそれ以前との比較ができないが、それ以外の地方の3名は一目瞭然、わずか2カ月弱の数字とはいえ、確実に成績がアップしている。3名とも、昨年度は一桁台だった勝率が10%以上になり、連対率もアップ。顕著なのは木之前葵騎手で、勝率はちょうど2倍、連対率は2倍以上と飛躍的にアップした。単純計算ではあるが、2カ月で17勝というペースなら、年間では100勝を超えることになる。

 濱騎手を除く3名はデビュー年を見てもわかるとおり見習はとうに卒業しているが、愛知を含む東海地区と高知では、昨年度までも女性1kg減のルールがあった。つまり今年度から2kg減になったとはいえ、昨年度との比較では恩恵を受けたのは1kgだけ。わずか1kgの違いで、これほど顕著に成績に表れるとはちょっと驚きだ。フランスで女性騎手2kg減を適用したらあまりにも成績がよくなったので、慌てて1.5kg減に修正したというのもよくわかる。

 藤田菜七子騎手は現時点でも見習としての減量が1kgあり、3月以降、3kg減での騎乗となってからの成績は、勝率で2.0ポイント、連対率で5.5ポイントアップした。さすがに中央は地方と比べて騎手の数自体かなり多いし、また層も厚い。さらに1レースの出走頭数も多いことなどから、2kg減の効果が地方ほど顕著な数字にならないのは想像できる。

 先のフランスでは現役の女性騎手が100名以上いると言われているが、日本でも今後その数が増え、さらに現役を長く続ける騎手が増えることを期待したい。また宮下瞳騎手のように出産後に現役復帰する騎手も出てくるかもしれない。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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