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気難しさが出なければ重賞級の期待が掛けられるクロスキー

  • 2019年05月29日(水) 12時00分
●アージオン(牝 栗東・安田隆行 父ロードカナロア、母インナーアージ)

 母インナーアージはミッキークイーン(15年オークス-GI、15年秋華賞-GI)の全姉で、現役時代に4勝を挙げた。本馬は初子。母方にNureyevを持つロードカナロア産駒は成功パターンで、女傑アーモンドアイを筆頭にジョーカナチャン、ルガールカルム、サンラモンバレー、エイシンデネブなどコンスタントに活躍馬が出ている。

 なおかつ、母の父がサンデー系に属しているパターンは芝で63戦して[18-10-5-32]。連対率41.3%という圧倒的な好成績を収めている。芝向きのスプリンター〜マイラー。

●インザムービー(牝 栗東・牧田和弥 父リアルインパクト、母スポークスウーマン)

 母スポークスウーマンはアイルランド産馬で、イギリスで6戦1勝。英1000ギニー馬Virginia Watersの従姉妹にあたる。Kris≒Smarten Up 3×3を中核としたヨーロッパ系の血で構成されている。父リアルインパクトは現役時代に安田記念(GI)とジョージライダーS(豪G1)を勝った一流馬で、名繁殖牝馬トキオリアリティーを母に持つので種牡馬としても期待できる。トキオリアリティーは速くて頑健なアメリカ血統で構成され、いかにも仕上がりが早く、スピードが活きる2〜3歳戦に強いタイプ。

 ヨーロッパ系の血でまとまっている母の血統とは大きく異なるが、母方のGreen Desertと父方のAlzaoがいずれも「Northern Dancer+Sir Ivor」という構成であること、母が持つNever Bend≒My Babu 5・6×5を父方のMy Babuが継続していることなど、ポイントを押さえた配合なので好感が持てる。芝向きのマイラーだろう。

●エバーマノ(牝 栗東・藤岡健一 父ディープインパクト、母ソラリア)

 オークス(GI)2着馬カレンブーケドールの全妹。母ソラリアは南米チリ産で、同国の三冠レースのひとつエルダービー(智G1・芝2400m)を2分23秒34というレコードタイムで制したほか、サンティアゴ馬事協会の2歳牝馬チャンピオン決定戦であるアルトゥロライオンペーニャ賞(智G1・芝1600m)、同協会の桜花賞に相当するポリャデポトランカス(智G1・芝1700m)を制覇した名牝。

 母の父Scat Daddyはアメリカを拠点に優れた実績を残したStorm Cat系の名種牡馬で、シャトル供用されたチリでは見事リーディングサイアーとなった。惜しくも2015年に早世したが、Justify(米三冠)、No Nay Never(13年モルニ賞-仏G1)、Caravaggio(17年コモンウェルスC-英G1)、Mendelssohn(17年BCジュヴェナイルターフ-米G1)など有望な後継種牡馬を多数抱えており、日本ではミスターメロディ(19年高松宮記念-GI)が活躍している。勢いのある最新の名血を抱えた配合なので姉同様の活躍を期待したい。

●クロスキー(牡 美浦・国枝栄 父ハーツクライ、母リッチダンサー)

 バウンスシャッセ(15年中山牝馬S-GIIIなど重賞3勝/父ゼンノロブロイ)、ムーンクエイク(18年京王杯SC-GII/父アドマイヤムーン)、コントラチェック(19年フラワーC-GIII/父ディープインパクト)、フロアクラフト(13年オークス-GI・5着/父フジキセキ)などを兄姉に持つ良血。母リッチダンサーは日本で産んだ8頭中7頭が勝ち上がっており、確実性と大物感を兼ね備えた優れた繁殖牝馬。

 その一方で少し気難しいところも伝えている。全兄フラットレー(1勝)もそうした面を抱え、3歳時に去勢されており、現在障害に転身している。本馬もそのあたりがポイントとなりそうだ。気難しいところを見せなければ重賞級だろう。芝向きの中距離タイプ。

●ロードシャムロック(牡 栗東 中内田充正 父ロードカナロア、母スピニングワイルドキャット)

 シルクロードS(GIII)と京阪杯(GIII)を勝ったダノンスマッシュの全弟。2代母Hollywood WildcatはブリーダーズCディスタフ(米G1・ダ9f)、ハリウッドオークス(米G1・ダ9f)、ゲイムリーH(米G1・芝9f)などを制し、米3歳牝馬チャンピオンに輝いた名牝。

 母スピニングワイルドキャットはブリーダーズCマイル(米G1・芝8f)を勝ったWar Chantの4分の3妹で、Roberto 4×3という重厚なクロスを持ち、素軽いスピード型種牡馬である父ロードカナロアをしっかりサポートしている。ファミリーの質が高いので二匹目のドジョウも期待できそうだ。切れる脚はないがスピードの持続力に優れており、兄と同じくスプリント路線で台頭するだろう。

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68年生まれ。血統専門誌『週刊競馬通信』の編集長を務めたあと97年からフリー。現在は血統関係を中心に雑誌・ネットで執筆活動を展開中。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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