スマートフォン版へ

デビュー2年目、重賞勝利1番乗り

  • 2019年06月04日(火) 18時00分

有言実行の重賞勝利、次に狙うは優秀新人騎手賞


 スーパースプリントシリーズの初戦として6月2日に盛岡で行われた早池峰スーパースプリント。コースレコードで制したサインズストームの鞍上は、昨年4月にデビューした岩本怜騎手だった。

 サインズストームは、ここまで岩手の冬季休催期間を挟んで4連勝中。その連勝が始まった昨年10月28日には、B1級の一般戦ながら盛岡ダート1000mで58秒7というコースレコードをマークしていた。そのレースと、続く12月の水沢戦の鞍上は、岩手のトップジョッキーである山本聡哉騎手だった。

 しかし岩手競馬の冬休みが明け、普段から調教をつけている岩本騎手にチャンスが巡ってきた。4月には水沢のA級二組特別戦を2勝。これで連勝を4に伸ばしたサインズストームの重賞初挑戦となったのが、今回の早池峰スーパースプリント。

「石川先生(石川栄調教師)が、山本聡哉さんにするか迷っていたようです。それでも自分を起用してくれたのはうれしいです」と岩本騎手はレース後に語っていた。4月の2戦は1kgの減量があったが、今回は重賞ゆえ減量の適用がなく、他の牡馬と同じ57kgを背負っての出走となった。

 10頭立ての予定が1頭取消となって9頭立て。サインズストームは大外枠からのスタート。1頭が出遅れたが、ほか8頭はほぼ互角。岩本騎手は、押してハナを取りに行った。何が何でもという感じに見えたが、そうではなかったらしい。「2、3番手の予定だったんですけど、ほかの馬があまり行く気がなかったようなので、それならと思って行きました」

 3コーナー手前では単独先頭となり、しかし3、4コーナーでは一旦溜めて後続を惹きつけた。そして直線、一気に突き放した。坂を上がった残り100mあたりですでにセーフティーリードだったが、そこはデビューしてまだ1年ちょっと。おそらく後続との差を確認する余裕はなかったのだろう。ゴールまで懸命に追って、2着につけた差は8馬身。自身の持つコースレコードをコンマ3秒更新。「レコードの欄に自分の名前が載るのはうれしいです」とも話していた。

早池峰スーパースプリントをコースレコードで制したサインズストーム。鞍上はデビュー2年目の岩本怜騎手


 鞍を外して、「よしっ!よしっ!」と繰り返しながら検量室に入っていった岩本騎手。その喜びは、人馬ともに重賞初勝利ということだけではない。昨年4月以降にデビューした同期で重賞勝利1番乗りということが、なおさらの喜びとなった。

 昨年4月1日付けで地方競馬の新規免許を受けた騎手たちは初年度から各地で活躍した。北海道の落合玄太騎手は、約7カ月という短いシーズンで58勝をマークし、ホッカイドウ競馬でデビューした1年目の騎手としての最多勝記録を更新した。岩本怜騎手は48勝、兵庫の石堂響騎手は44勝。いずれも新人としては立派な数字だ。大井の吉井章騎手は30勝だが、激戦区南関東での1年目の騎手としては、これも優秀な数字だ。

 じつは「(同期の中で)最多勝をとれなかったので、自分が最初に重賞を勝つ」ということは今シーズンを前に公言していたらしい。それが有言実行となったわけだ。

 岩手では冬に約2カ月の休催期間があるが、岩本騎手はこの勝利で今年25勝目。早くも昨年の勝ち星の半分を超え、岩手リーディングで4位に躍進。デビュー2年目でこの活躍は、もちろん“あっぱれ”でしょう。今年の目標のひとつは、デビュー2年目までの騎手に資格がある、NARグランプリの優秀新人騎手賞とのことだ。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング