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日本初の偉業をかけて臨む北米クラシック

  • 2019年06月05日(水) 12時00分

マスターフェンサーを後押しする材料多いベルモントS


 北米3歳3冠最終戦G1ベルモントS(d12F)の発走が、今週土曜日(日本時間で日曜日朝)に迫っている。

 日本調教馬による北米クラシック初制覇の偉業をかけての出走となるマスターフェンサー(牡3、父ジャスタウェイ)には、いくつかの強調材料がある。

 1つは、3冠初戦のケンタッキーダービーを走った後、2冠めのプリークネスSを回避して臨むローテーションだ。過去10年のベルモントSの連対馬20頭のうち、半数の10頭がこの臨戦態勢で、すなわち、ゆったりめのローテーションが奏功することが多いのだ。

 しかも、このローテーションで連対した10頭のうち実に9頭が、ケンタッキーダービーでは6着以下に敗れており、そういう点でも3冠初戦が7着入線後に6着繰り上がりだったマスターフェンサーは、過去の傾向にピタリと合致するのである。

 マスターフェンサーを後押しするもう1つの材料が、血統背景だ。父ジャスタウェイは1600mから2000mの馬だったが、その父ハーツクライは2400mでこその馬で、少なくとも距離延長を苦にはしないはずだ。

 そして、更に大きなポイントが、マスターフェンサーが母の父にもつデピューティミニスターである。02年のサラヴァ、06年のジャジル、07年のラグストゥリッチーズと、今世紀に入ってから誕生した18頭のベルモントS勝ち馬のうち3頭が「母の父デピューティミニスター」である。

 この他、デピューティミニスターは07年の2着馬カーリン、15年の2着馬フロステッドの母の父でもある。また、12年の2着馬ペインター、13年の2着馬オックスボウは、いずれもオウサムアゲインの産駒ゆえ、父の父がデピューティミニスターで、13年の勝ち馬パレスマリス、17年の2着馬アイリッシュウォークライは、いずれもカーリンの産駒ゆえ、父の母の父としてデピューティミニスターを持つ。

 更に、11年の勝ち馬ルーラーオンアイスは父方の4代目に、14年の2着馬コミッショナーは母方の3代目に、そして18年の勝ち馬ジャスティファイは母方の4代目に、デピューティミニスターを保持している。

 すなわち、過去10年の連対馬20頭中の実に8頭が、デピューティミニスターの血脈を継承しているわけで、同馬が近年のベルモントSにおける最強の血脈であることは間違いなく、マスターフェンサーには極めて心強い材料である。

 マスターフェンサー以外にも、ベルモントS出走予定馬の中では、イントレピッドハート、エヴェーファスト、サーウィンストンの3頭がデピューティミニスターを保持しており、中でもエヴァーファストは、父方の4代目と母方の3代目にデピューティミニスターいるというインブリードが施されている。血統的な見地からは、軽視できないのがエヴァーファストかもしれない。

 ベルモントSに強い血統と言えば、種牡馬タピットにも言及しておかなくてはなるまい。14年のトナリスト、16年のクリエーター、17年のタップリットと、過去5年で3頭のベルモントS勝ち馬を出している他、15年の2着馬フロステッドもまたタピット産駒である。

 ベルモントSの出走予定馬の中には、タシトゥス、イントレピッドハート、バーボンウォーと、3頭のタピット産駒がいるが、中でもイントレピッドハートは前述したように、母の父タッチゴールドの父がデピューティミニスターで、つまりはベルモントS最強の血をダブルで保持していることになる。更に言えば、イントレピッドハートの5歳年上の半兄が、14年のベルモントS2着馬コミッショナーで、同馬は牝系もベルモントSと所縁が深い。血統的見地からは、イントレピッドハートは非常に恐い存在と言えそうだ。

 この他、人気馬の牝系に言及すると、G1プリークネスS勝ち馬ウォーオヴウィルは母の父がサドラーズウェルズで、そこだけ切り取るとスタミナ豊富に見えるが、ウォーオヴウィルの8歳年上の半兄パスフォーク(父ディストーテッドヒューモア)は、愛国の2歳G1ナショナルS(芝7F)の勝ち馬だし、祖母インパーフェクトサークルはG1チーヴァリーパークS(芝6F)2着馬。その産駒のスピニングワールドは欧州のマイルチャンピオンで、近親には全米チャンピオンスプリンターのアルデバランがいるという、むしろファミリーはスピードに傾倒しており、距離延長がプラスに出るとは思えない。

 一方、G1ケンタッキーダービー4着入線後3着繰り上がりのタシトゥスは、母クローズハッチーズがG1パーソナルエンスンS(d9F)などを制したチャンピオン牝馬で、近親にはG1ユナイテッドネイションH(芝11F)勝ち馬シニューアがいるから、距離に関しては融通性のありそうなファミリーである。

 ベルモントSの筆者の結論は、週末にnetkeibaで発表させていただく予定なので、そちらをぜひご参照いただきたい。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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