▲気持ちのコントロールはなかなか難しいと語る小牧騎手
今週の『太論』は、「レースのなかで騎手の気持ちが影響するのはどんな場面?」というメンタルにまつわる質問がテーマ。「気持ちのコントロールは難しい」としながらも、スタート、道中、直線と、それぞれの場面における“気持ちの影響”について、ジョッキーの心理を明かしてくれました。(取材・文:不破由妃子)
どんな場面であっても、気持ちのコントロールは難しい
──今回はジョッキーのメンタルについて、こんな質問が届いていました。「騎乗停止になってしまうようなケースの場合、騎手の気持ちの問題が大きいのかなぁと思って見ているのですが、レースのなかで騎手の気持ちが影響してしまうのは具体的にどんな場面ですか?」。
小牧 やっぱり最後の直線が一番でしょう。なかでも勝たなアカンという馬に乗っている場合や、そうじゃなくても勝ち負けを意識できる手応えがある場合は、ついつい無理をしてでも出そうとしてしまったり。
──ポジションを取りにいく過程などでも気持ちの影響は出ますか?
小牧 そうやね。いいポジションを取りにいこうと思ったら強い気持ちが必要になるけど、それが強すぎると周りが見えなくなってしまったり。まぁ道中でいうと、どこからでも抜けてこられるだろうと思えるほどの馬であれば、ポジション云々よりジックリと自信を持って乗ろうと思えるけどね。ただ、そういう馬であればなおさら、直線で抜けてくる場所がなくなったときに焦ってしまう。焦った結果、人を押し出してまでも…となったときに、制裁事象が起こるんちゃうかな。もちろんね、ケースによっては馬の癖というのも大きいけど。
──制裁とは別に、スタートもジョッキーの気持ちが影響する大事なポイントですよね。
小牧 うん。ジョッキーの出そう出そうという気持ちが伝わってしまうと、馬も先走ってしまうから。
──そうすると、逆にタイミングがズレてしまったり?
小牧 そうそう。あとはこの前話したカンパイのように突っ掛けてしまったりね。どんな場面であっても、気持ちのコントロールはなかなか難しいもんやで。作戦を考えるのは当然だとしても、理想は無の状態で乗ることだったりするから。
──以前、安藤勝己さんも同じようなお話をされていた記憶があります。
小牧 うん。僕も「勝とうと思ったらアカンのや」ってアドバイスをもらったことがあるよ。力のある馬ならなおさら、いらんことを考えたらアカンのやね。ちょっと力が足らんかなぁと思う馬の場合は、いろいろ考えながら、少しでもロスのないようにセコく乗らなアカンけど。まぁ、なんせ僕も一昨年は騎乗停止が多かったから、ものすごく気を付けてますわ。制裁を受けんように、あとはケガをせんようにね。そういえば去年、ケガをしたのってちょうどこの時期やろ?
──そうですね。6月30日でしたから、もうすぐ1年です。
小牧 時が経つのは早いねぇ。去年はほとんど夏競馬には乗れんかったから、今から小倉が楽しみや。それこそケガの功名じゃないけど、ケガをする前より減量も楽やし、体調もいいしね。今日も今からジムに行って汗をかいてきますわ。
──最近はジムによく通っていらっしゃいますね。ちなみに、ジムではどんなトレーニングを?
小牧 エアロバイクがメインやね。サウナスーツを着込んで1時間以上漕いでるよ。それが一番体重が落ちるねん。日によっては、そのあとプールで泳いだりね。そういえばこの前、大津で事故があったでしょう。あの事故現場が通っているジムのすぐ近くで。週に3日は通っている交差点やねん。通るたびに胸が締め付けられるような思いがして…。
──そうだったんですね。本当に痛ましい事故でしたね。
小牧 あの子らかどうかはわからんけど、園児が先生と並んで歩いてるのをいっつも車のなかから見ててん。だからホンマに可哀想で可哀想で…。車を運転する身としては、僕もいつ当事者になるかわからない。ちょっとした油断が運命を狂わせるわけやからね。明日は我が身と心得て、いつも通る道であってもものすごく慎重に運転するようになったわ。
制裁を受けんように、あとはケガをせんようにね。