降級制度廃止にもかかわらず、4歳馬のワンツーに
エプソムCはレイデオロの全弟レイエンダが勝利、重賞初制覇となった(撮影:下野雄規)
日本ダービーが終わり、連続したGIシリーズにも区切りがつき、なんとなく競馬場全体に緩んだ空気が流れていた。ようやく回復しかかった天候が、メインレースを前に再び雨に…。芝が悪化したわけではないが、先週までのように激しく闘志に火をつけるのは難しかったかもしれない。
「東京の1800mに展開は関係ない」とされるが、スーッと先手を奪ったサラキア(父ディープインパクト)に、巻き返したいレイエンダ(父キングカメハメハ)が2番手につけて、とくに位置取り争いもなく3コーナー過ぎまでタテ1列の流れ。前半1000m通過は、なんと「63秒9」。午前中、スローの3歳未勝利戦2000mがあったが、その前半1000m通過が「63秒8」だった。古馬オープンのエプソムC1800mとすると歴史的なスローである。ちょうどエプソムCのレース中は雨足がきつくなっていた。予想外の雨で、どのジョッキーもペース判断が難しかったのだろう。でなければ、ここまでのスローペースは生じない。
1800mを3等分すると「38秒4」-「37秒8」-「32秒9」=1分49秒1。超スローから4コーナーでほぼ一団の展開になり、実質上がり3ハロン32秒9「11秒0-10秒8-11秒1」だけの決着。それなら少差の大接戦かというと、後半600mだけの勝負なのに、1着から13着まで「1秒6」も差が開いてバラバラの入線になっている。外れたファンは狐につままれたようなレースだった。
エプソムCの4歳馬の好成績は知られる。出走馬は少ないのに、これで最近10年に限ると【8-6-2-14】となった。4歳馬向きのレースといっても、降級制度の廃止された今年の4歳馬2頭は、昨年までなら牝馬サラキアは1000万下、レイエンダは1600万条件から再出発になる条件賞金だった。「人気になりすぎるようなら…」と、過信禁物の見方に立っていたので全面降伏しかなかった。
毎年のように難解な結果が生じる直前のマーメイドS2000mは、今年もいつものように波乱で「7、10、5」番人気の結果。4着までみんな4歳馬。5歳以上馬は一団の「5-9」着にとどまった。ただ、伏兵人気だった4歳馬も、(13着馬以外)力及ばず10着から16着に集中しているから簡単ではない。
現4歳世代の好成績は知られるが、5、6歳のオープン馬の層にバラツキが大きいのだろう。エプソムCでは、5、6歳の注目馬はなんとか3着したソーグリッタリング(父ステイゴールド)以外、直線、みんな8歳馬ショウナンバッハ(父ステイゴールド)に差されてしまった。これはさすがに物足りない。
エプソムCは、未来に向けた上昇4歳馬のレースであると同時に、まだまだこれから再上昇を期す5歳以上馬の夏競馬に向けた出発点でもある。2番人気だった5歳ミッキースワロー(父トーセンホマレボシ)も、3番人気のプロディガルサン(父ディープインパクト)も、4番人気だったダノンキングダム(父ステイゴールド)も、これが実力などということはありえない。このあと懸命に挽回したい。5歳ブレスジャーニー(父バトルプラン)の復活に注目したが、イン衝き作戦に出て5着止まり。まだ見切れないが…。
勝った4歳レイエンダは、23日(日)の宝塚記念に出走予定のレイデオロの全弟らしく、同じC.ルメール騎手とのコンビでレース巧者に育ってきた。自信をつけたこのあとは、秋のビッグレースに向けてもうひと回りスケールアップしたい。
2着サラキアは、マーメイドSに重複登録もせず、牡馬相手の1800mの別定戦に狙いを定めた陣営のあざやかな展望が光った。主導権をにぎったレースは初めて。ただ粘り込んだだけでなく、坂上からもう一回伸びた。全体の時計以上に中身がある。母サロミナ(その父Lomitas)は独オークスなど5戦4勝で引退したが、配合の形は凱旋門賞馬デインドリームと父が同じで、母の父がデインヒル系。その魅力も評価され輸入されている。