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あらためてGDJ3歳シーズンを考える

  • 2019年06月18日(火) 18時00分

エクストラポイントの制度導入とともに…


 6月12日に行われた関東オークスで、グランダム・ジャパン(GDJ)2019の3歳シーズンが終了。圧倒的なポイントで優勝したのは浦和のトーセンガーネット。ただ残念ながら関東オークスは3着だったことで、2006年のチャームアスリープ以来となる南関東牝馬三冠とはなからなかった。

 この世代の牝馬ではトーセンガーネットが圧倒的に強かったということもあるが、GDJ3歳シーズンではここまで2勝を挙げ、最終戦を前にトップに立っていたゴールドリング(愛知)が関東オークスには出走せず、その前日に行われた東海ダービーに向かったこともあり、GDJとしてはやや盛り上がりに欠けるものとなった。

 だいぶ以前にも指摘したことだが、GDJのポイントは高得点のダートグレードや最終戦が南関東で行われることもあり、特に3歳シーズンでは、南関東所属馬に有利なものとなっているように思う。

 GDJ3歳シーズンは、2010年から2015年は地理的に出走が容易なレースが多い東海地区か兵庫の所属馬が優勝したが、2016年から今年までは4年連続で南関東所属馬が優勝している。これは2017年から新たに導入された、エクストラポイントの影響も大きい。

 ちなみにエクストラポイントとは、GDJの3歳シーズンおよび古馬シーズンの最終戦に適用されるもので、地方馬のみの着順で上位3位までに加算されるもの。

 その目的は、ある程度ポイントを持っている馬の最終戦への出走を促し直接対決を期待することと、最終戦での逆転の可能性だ。

 たしかにそれはシリーズを盛り上げる役割を果たしていて悪くはない。ところが、特に3歳シーズンでは南関東所属馬に有利となり、それによって南関東以外の所属馬の出走意欲を削いでしまっているようにも思う。

 最終戦のエクストラポイントが導入される前の2016年に優勝したクラトイトイトイは船橋所属だが、若草賞(名古屋)1着、東海クイーンカップ(名古屋)1着、のじぎく賞(園田)2着という成績で優勝。地元南関東の牝馬三冠には一戦も出走せず、当初からGDJのタイトル狙いだった。そしてこの年、GDJの表彰対象となる資格を満たした8頭は、いずれも最終戦の関東オークスには出走しないという中で決着した。さすがにそういう状況では、最終戦まで楽しみを持ち越すようなしくみの変更は必要だっただろう。

 しかしそれでどうなったか。2017年ステップオブダンス(大井)、2018年ゴールドパテック(川崎)、そして今年はトーセンガーネット(浦和)と、GDJ3歳シーズンの対象レースでは、いずれも南関東の牝馬三冠のみの出走で、他地区のレースにはひとつも出走することなく優勝となった。

 しかもゴールドパテックはひとつの勝利もなく、桜花賞7着(0ポイント)、東京プリンセス賞3着(3ポイント)で、最終戦を前にして3ポイントしかないところから、関東オークスで2着と好走し、地方馬最先着のエクストラポイントも合わせて30ポイントを獲得、計33ポイントで優勝してしまった。そして今年は優勝したトーセンガーネットだけでなく、2位となったアークヴィグラスも南関東牝馬三冠(3着、2着、5着)のみの出走だった。

 ここ3年の優勝馬を見ると、陣営がどう考えていたかはわからないが、南関東の牝馬三冠を目指していたら、おまけにGDJ3歳シーズンのタイトルも付いてきたという感じが否めない。

 たしかに南関東には能力の高い馬が集まるため、優勝馬が多く出るのは当然ともいえる。しかしこうしたいくつかの競馬場を転戦して、その着順ポイントで優勝を争うシリーズでは、地元のレースのみを使って優勝というケースが続いてしまうのでは盛り上がらない。

 特に3歳シーズンでそのようになっているのは、以下のような要因が考えられる。桜花賞(浦和)のフルゲートが11頭と少ない上、他地区の出走枠が極めて少ないこと。東京プリンセス賞(大井)が南関東限定レースであること。高ポイントのダートグレード(関東オークス)が南関東で実施されること、など。エクストラポイントが得られる最終戦が南関東所属馬にとって地元で戦えるというアドバンテージも大きい。

 シリーズを盛り上げるしくみとしてエクストラポイントはあっていいと思う。しかしそれが南関東で行われることの引き換えに、地元馬にとってポイントが少ない「★★」のレースで自地区・他地区の区別をなくすこと、さらに東京プリンセス賞を全国交流にするか、それができないのであれば対象レースから外す、ということが必要だと思うのだが、どうだろう。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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