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北海優駿が終わり、各地の「ダービー」が全て終了

  • 2019年06月20日(木) 18時00分

「ダービー馬」の権威を上げるためにも頭数の増加を


 東京で日本ダービーが行なわれた5月26日(日)。地方競馬では、同じくこの日、佐賀競馬場において「九州ダービー・栄城賞」が実施され、スーパージンガ(牝馬、父バンブーエール)が1番人気に応えて優勝した。

 このレースを皮切りに、「ダービーシリーズ」と称する地方競馬各地の3歳馬ナンバー1を決める一連のダービーがスタートし、6月4日(火)「石川ダービー」(優勝馬ロンギングルック、牝馬、父グランプリボス)、6月5日(水)「東京ダービー」(優勝馬ヒカリオーソ、牡馬、父フリオーソ)、6月6日(木)「兵庫ダービー」(優勝馬バンローズキングス、牡馬、父アサクサキングス)、6月9日(日)「東北優駿(岩手ダービー)」(優勝馬パンプキンズ、牡馬、父スターリングローズ)、6月11日(火)「東海ダービー」(優勝馬エムエスクイーン、牝馬、父バトルプラン)、6月16日(日)「高知優駿」(優勝馬ナンヨーオボロヅキ、牝馬、父キンシャサノキセキ)と順調に日程を消化してきた。

 そして、一連のダービーシリーズの最後を飾るのが、昨夜門別競馬場で行われた「第47回北海優駿」である。出走馬は10頭。人気の中心は、前走1冠目の「北斗盃」を制し、目下3連勝中のリンゾウチャネルで、ジョウラン、シベリアンプラウドといったところがそれに続く。

生産地便り

単勝1.2倍の圧倒的1番人気に応え優勝したリンゾウチャネル

 気温14度、晴天微風の良馬場、距離2000mで争われたこのレースは、既報の通り、終始好位置につけ、機を窺っていたリンゾウチャネルが4コーナーを先頭で回ると、直線では一気に加速し、まったく危なげないレース運びで2着のリンノレジェンドに3馬身の差をつけて、見事単勝1.2倍の圧倒的1番人気に応え優勝した。ゴール前は五十嵐冬樹騎手が手綱を緩めて流すほどの余裕の勝利であった。

生産地便り

レース後引き上げてくるリンゾウチャネル

 リンゾウチャネルは、父モンテロッソ、母ワールドレデー(母の父タヤスツヨシ)という血統の牡黒鹿毛馬。これで通算成績が11戦7勝2着3回。獲得賞金は今回の700万円を加え計2675万円となった。因みに重賞は昨年9月16日盛岡の「ジュニアグランプリ」と前走の「北斗盃」に続いてこれで3勝目だ。

生産地便り

口取りの様子

 同馬は堂山芳則厩舎所属。堂山師はこれでこのレース7勝目であり、また手綱を取った五十嵐冬樹騎手も同レース3勝目となった。馬主は木谷ツヤ氏。生産は新冠町の川上牧場。

生産地便り

リンゾウチャネルの関係者の皆さん

 リンゾウチャネルはこれで2冠を達成し、残るは8月1日の「王冠賞」のみ。距離は1800mと、1ハロン短くなる。今回の勝ちっぷりからも、順調に調整して行けば、3冠達成の可能性が高い。

生産地便り

3冠達成へ視界良好のリンゾウチャネル

 さて、これで各地の「ダービー」が全て終了したことになるが、芝ダートの違いがあるにせよ、日本ダービー出走馬と比較すると、優勝馬の父馬は非常にバラエティに富んでいる。しかも、各優勝馬の生産地はいずれも日高管内である。中央競馬のクラシックは社台スタリオン繋養種牡馬の産駒が主流だが、一転して地方競馬に目を向ければ、日高で種牡馬生活を送る馬たちの産駒が多く、上記のような父馬名を目にすると、日高の種牡馬たちも地味ながら活躍馬を送り出していることが分かり、興味深い。

 ただ、毎年のことだが、中央競馬では、ざっと世代4000頭もの中から厳しいレースを勝ち抜き、わずか18頭だけがクラシックへの出走権を獲得する。しかし、地方競馬の場合は、ダービーとはいえ、各競馬場とも3歳世代の在厩頭数が少なく、中央に比べたらダービー馬になれる確率は大幅に高くなる。

 参考までに各競馬場における今年4月1日現在の3歳馬在籍頭数を挙げると次の通り。門別110頭、岩手(盛岡、水沢)109頭、埼玉(浦和)74頭、千葉(船橋)121頭、東京(大井)225頭、神奈川(川崎)115頭、石川(金沢)110頭、岐阜(笠松)92頭、愛知(名古屋)102頭、兵庫(園田)181頭、高知63頭、佐賀111頭。合計すると地方競馬全体で3歳世代は1413頭となっている。

 4月1日以降、若干数の転入転出はあるだろうが、概ねこの1413頭の中から計8頭のダービー馬が誕生している計算だ。地区によって倍率は異なるものの、ざっと100頭前後の中からダービー馬が選ばれる競馬場も少なくない。我が門別競馬場の場合も110頭の頂点に立ったのがリンゾウチャネルということになる。実力は今のところ全国区レベルと思われるが、門別に限らず、各地の「ダービー馬」の権威を上げるためにも、できることなら、もう少し底辺の広がりが欲しいところだ。

 余談ながら、ついでに記すと、全国の地方競馬の馬房数は4月1日現在で認定厩舎を含め合計10276ある。一方の在籍頭数は7736頭。在籍率は75%で、少なくとも馬房にはまだまだ余裕のある競馬場が多い。このところ好調に推移している馬券売り上げにより、賞金や出走手当なども増額されつつあるのに、在籍頭数がそれほど目立って増えていないのは、やはり人手不足に原因があるということなのだろうか。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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