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【宝塚記念】牡馬を退け完勝 充実期にあるリスグラシュー

  • 2019年06月24日(月) 18時00分

JRA最終日にまたしても好騎乗を見せたD.レーン騎手


 夏のグランプリ「宝塚記念」はずっと以前から、なんとなくあっけない印象を与える結果が珍しくない。今年は、勝ったリスグラシュー(父ハーツクライ)の強さが際立ったため、2着キセキ(父ルーラーシップ)以下がちょっと情けなく映るほどだった。

重賞レース回顧

名手に導かれ、見事グランプリ制覇


 3歳時の牝馬3冠を「2着、5着、2着」にとどまった当時のリスグラシューは、非力な印象も与える430キロ台の小柄な牝馬だった。しかし、レベルの高い世代や、牡馬相手のビッグレースに挑戦し、また、2度の香港遠征を経験するうちにどんどんたくましく、タフに成長したからすごい。4歳後半からは460キロ前後になり、スマートにみえる研ぎ澄まされた馬体は一段と鋭さを増している。

 制したGIは2018年エリザベス女王杯、今回の宝塚記念の2つだけだが、ビッグレースの好走が多いので総収得賞金は6億8千万円強。秋には、豪GIコックスプレート、あるいは米GI BCフィリー&メアターフ、GI BCターフなどに遠征の可能性があり、ジェンティルドンナ、ブエナビスタ、ウオッカ、アーモンドアイ…など、近年の日本を代表する牝馬と互角の評価を得ることになるかもしれない。

 フランス産の母リリサイドの父American Postは、名前の印象とは異なり代々フランスを中心に活躍した父系であり、その3代父は世界の名馬物語に必ず登場する仏の歴史的名馬Sea Bird(FR)【7-1-0-0】。日本ではウオッカの父となったタニノギムレットの祖母の父であり、79年の桜花賞2着シーバードパークの母パークナシラの父もSea Bird。

 エイシンヒカリが2016年のイスパーン賞(仏)を10馬身差で勝ってフランスで絶賛されたのは、4代母がSea Saga(父Sea Bird)だったからである。輸入牝馬リリサイドの母の父ミラーズメイト(GB、父Mill Reef)も、著名ではないが輸入種牡馬になる。

 レース全体の流れは「60秒0-(11秒9)-58秒9」=2分10秒8(レース上がり35秒3)。時計を要することが珍しくない6月末の阪神とすれば、8Rの出石特別(1勝クラス)の芝1800mで1分45秒6が記録されたように、決してタフな芝ではなく、2分10秒8は阪神で行われた宝塚記念では史上2位だった。

 好スタートからハナに立ってしまうのではないか、と思わせる行きっぷりで、必死に先頭に立ったキセキを楽に追走したリスグラシューは、4コーナーで先頭に並びかけると最後は3馬身差の独走。楽に抜け出したリスグラシューの上がりが最速の「35秒2」なので、上位の着差は「3馬身、2馬身、2馬身…」。追撃どころかさらに差が広がった。

 引き続き南関東公営で1カ月の短期免許を取得したダミアン・レーン騎手(25)は、「マタキマス」とファンの喝采を受けたが、もう日本のレースにずっと騎乗したいと思うほど気に入ってしまったに違いない。

 競走馬に国境はない。本来、騎手にも国境はない。気に入られすぎた結果、パートI国なのでごく当たり前のことだが、やがてわたしたちは、第二のM.デムーロ、C.ルメールを受け入れることになるかもしれない。

 2カ月ちょっとで、その成績【37-11-18-57】。勝率.301。3着以内率.537。重賞レースに13回乗り、GIヴィクトリアマイル、宝塚記念制覇を含み【6-0-1-6】。チャンスありの馬に騎乗できたのは事実だが、重賞6勝のうち1番人気は2回だけだった。

 2着キセキは、良くいえば平然と落ち着き払った好気配だが、ビッグレースのスタートを前に(秘めていたにしても)気迫が乏しく、ダッシュが鈍すぎた。川田騎手が懸命にしごいてなんとかハナを切ることができたが、この地点でもう、リスグラシューに見逃してもらった感があった。

 ハナに立ってからはリズムに乗ったものの、スローに近い逃げなのに勝負どころからピッチを上げられず、2着とはいえ完敗だった。「良くがんばっています(角居調教師)」とはいうものの、自分の形になって3馬身差である。凱旋門賞挑戦は陣営の相談(検討)が必要になった。

 3着スワーヴリチャード(父ハーツクライ)は理想の好位追走から、M.デムーロ騎手が必死にスパートしたが、リスグラシューとは5馬身差。本馬場の最終追い切りの動きからして、今回は完調にはもう一歩の状態と映ったが、これで国内GI【1-1-3-3】。同じ5歳リスグラシューのようにこれから大きく変わってくれるだろうか。

 4着アルアイン(父ディープインパクト)は、楽に好位のイン追走の「自分の形」になったと見えたが、最後は勝ち馬から7馬身差。馬場も距離もこなせる範囲内であり、デキの良さを考えると陣営にはかなりショックの大敗か。

 5着レイデオロ(父キングカメハメハ)は、パドックで最初のうち素晴らしい仕上がりと映ったが、しだいしだいに気配が怪しくなってしまった。ビッグレースの覇者らしいプライドと集中力を失った。最後の直線、珍しくC.ルメール騎手が叱咤というより怒りのムチを入れたが、凡走したドバイ時と同じで、がんばろうという気力がない。仕上がりうんぬんではないから、抱える問題は意外に深刻である。

 マカヒキ(父ディープインパクト)は、直線の中ほどであきらめ、しんがりにも相当の11着。「控えて、追い込みに徹してこそ…」の作戦だったが、全体の流れのバランスは明らかなスロー。さすがにちょっと置かれすぎたか。残念ながら、闘志に火がつく場所が見いだせないままだった。気にするような馬場状態とは思えなかったが…

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登録済

1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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