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平取町1歳馬品評会が開催

  • 2019年06月26日(水) 18時00分

業界内だけに留まらず、競馬ファンと生産地を繋ぐ架け橋へ


 去る6月24日(月)、平取町で1歳馬品評会が開催された。回を重ねること今年で50回というから、半世紀もの長きにわたって営々と続けられてきたことになる。

 平取町は生産牧場戸数が約20軒と、日高管内の中では小規模だが、近年レッツゴードンキ(清水牧場)やオジュウチョウサン(坂東牧場)などを輩出しており、レベルの高い生産馬を送り出している地域だ。トマトやびらとり和牛なども有名で、他の町と比較すると、ひじょうに良い形で農産物の「棲み分け」ができている印象が強い。

 毎年、この時期に開催される1歳馬品評会も、平取らしさが出ており、出陳頭数はだいたい10頭〜12頭前後と少なめだが、業界の枠を超えた町全体にとっても大きなイベントに育ちつつある。

 この日、午後3時20分よりカタログ順に沿って各牧場を巡り、出陳各馬を見て歩く方式だが、事前に用意された立ち写真を収録したカタログはカラー印刷で、かなり念入りに制作されている。血統表やブラックタイプ、測尺なども記載されており、セール上場予定馬はその旨も付記されてもいる。

生産地便り

品評会で使用されるカラーカタログ

 各牧場を巡回するため、どの牧場も環境整備には気を配っており、最も馬が見映えするように、短く刈り込まれた芝生の上に展示するところが多かった。こうしたロケーションの良し悪しは、もちろん馬本体の出来不出来とは直接関係ないものの、来客に「見せる」場合には、多少なりとも価格に反映しがちだ。

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中田牧場にてツクバエンジェル展示時の審査風景

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清水牧場分場にてサブラタ展示時の審査風景

 概ね2時間かけて全11頭を見て歩いた。今年は審査委員長がJRA日高育成牧場の高嶋民治場長。そして、審査員にJBBA静内種馬場・遊佐繁基場長、神奈川県調教師会相談役・岩本洋氏、楽天競馬アドバイザー・古谷剛彦氏の計4人が、馬体、動き、手入れ、持ち手とのコンタクトなどの項目について審査し、採点をする。持ち点は各自20点。4人の合計点で優劣をつけ、各賞を決定する。

 表彰式と懇親会は午後6時より、町内二風谷にある「びらとり温泉・ゆから」にて開催された。

 表彰式に先立ち、まず町内小学生を対象に募集した「馬の絵コンテスト」の表彰が行なわれ、今年も4人が選出された。軽種馬生産地として、子供たちに馬への理解を深め親しみを持ってもらおうという趣旨で始められたこのコンテストは、毎回、力作が寄せられ、今年も画用紙一杯にそれぞれの感性で描かれた馬の絵が並んだ。

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馬の絵コンテストの受賞者

 次に、特別表彰部門が発表された。「ファン選出特別賞」は、町内各施設に出陳馬の写真を貼り出して、一般町民に投票してもらおうという企画でスタートし、今年はさらに範囲を拡大してインターネットでも立ち写真を閲覧できるようにしてはがきで全国どこからでも投票できるようにした。その結果、400通以上の応募が寄せられ、その中からウインパレードの2018(牡、父ミッキーアイル、北島牧場生産)が67票を集めて受賞した。

 同馬に投票した方々のはがきの中から抽選で1人にレッツゴードンキの額入り蹄鉄が贈呈されることになり、東京都中野区在住の女性がそのお宝をゲットした。

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贈呈されたレッツゴードンキの額入り蹄鉄

 JRA特別賞にはユーワゼフィルスの2018(牡、父トランセンド、船越伸也牧場生産)が、またレッドミルズ賞(飼料メーカー)にはウインパレードの2018がそれぞれ選ばれ、記念品が贈られた。

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JRA特別賞を受賞した「ユーワゼフィルスの2018」

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レッドミルズ賞(飼料メーカー)、ファン選出特別賞を受賞した「ウインパレードの2018」

 さて、いよいよ審査結果が発表された。今年は最優秀賞にサブラタの2018(牡、父リーチザクラウン、清水牧場生産)、金賞にツクバエンジェルの2018(牡、父プリサイスエンド、中田牧場生産)、銀賞にレオアルテミスの2018(牡、父リオンディーズ、二風谷ファーム生産)、銅賞にエアベルヘザーの2018(牡、父ディスクリートキャット、稲原牧場生産)がそれぞれ選ばれ、高嶋審査委員長の講評とともに、数々の記念品が各牧場に贈られ、盛会のうちに幕を閉じた。

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平取品評会各賞受賞牧場(右より清水牧場、中田牧場、高嶋委員長、二風谷ファーム、稲原牧場)

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最優秀賞「サブラタの2018」

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金賞「ツクバエンジェルの2018」

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銀賞「レオアルテミスの2018」

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銅賞「エアベルヘザーの2018」

 現在、日高管内で1歳馬品評会を開催しているのは、平取の他、三石(新ひだか町三石)の二つだけになってしまったが、その実施方法、内容はかなり大きな違いがある。三石の場合は良くも悪くも、業界内だけの行事としてささやかに行なわれている印象だが、平取の場合は外に大きく開かれた一大イベントとして、年々拡大し続けている。

今年の場合は、ついにインターネットを使って出陳馬情報を流し、広く競馬ファンから投票を募るという作戦に出た。平取産馬の宣伝に大きく寄与していることは確かで、こうした取り組みがやがて競馬ファンと生産地との距離を少しずつ縮めることになって行く気がする。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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