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【ラジオNIKKEI賞】徹底して「外」を選択 道悪を逆手に取った好判断

  • 2019年07月01日(月) 18時00分

クラシックゆかりの血統馬が勝利 「秋の候補」となって不思議はない


 直前、豪雨の中で行われた中京のGIII「CBC賞」は、不良馬場で勝ちタイムは1200m「1分09秒8」。梅雨どきだけに何度も渋馬場で行われたケースがあるが、この時期に移った2006年以降、もっともタイムを要した結果だった。

 小雨に変わっていたが福島も不良馬場。こちらもハンデ戦になった2006年以降、2番目に遅い勝ちタイムの激戦となった。

 小回りコースの多頭数なので、各馬ともに思い描いたコース取りができたわけではない。開催当初の芝はエアレーション作業の影響もあり、雨で全体的に緩いコンディションになると、コースロスのない内側が有利とは限らない。といって外を回ると大きな距離損を受け入れることになる。勝負どころから最後の直線は、横に大きく広がっての攻防になった。

 勝ったブレイキングドーン(父ヴィクトワールピサ)の田辺裕信騎手は、外枠からのスタートもあったが、最初から外々を回っている。道中も内に寄れるスペースはあるのに、まったくコースロスを懸念せずに一番外を選択。直線に向いても内に寄らず、右ムチでさらに外に出す徹底した「馬場の外」狙い作戦だった。

 人気上位馬で終始外を回るレースは、(内から抜け出された場合)判断が甘かったことになるが、今回は思い切り良く内を避ける選択が大正解だった。勝手知ったるコース巧者の面目躍如だろう(福島出身)。

重賞レース回顧

最後は鋭い脚で突き抜けたブレイキングドーン(撮影:下野雄規)


 代は経たが、日本を代表するクラシックファミリーの出身。5代母はオークス馬アグネスレディー。4代母は桜花賞馬アグネスフローラ。3代母アグネスセレーネーの半弟には、日本ダービー馬アグネスフライト、皐月賞馬アグネスタキオン。さらに父方も、父ヴィクトワールピサと、祖父ネオユニヴァースは父子揃ってのクラシック馬。

 このレースでの台頭が契機だった菊花賞馬フィエールマンや、ソングオブウインドに続く「秋の候補」となって不思議ない。名牝系にふさわしく、母方に配されてきた種牡馬はホワイトマズル、エルコンドルパサー、トニービン…。距離不安はない。

 向こう正面で外を回ることを決めた武豊騎手のゴータイミングが、上がり最速の35秒6で少差3着。コースロスを承知で外に回った馬に合う芝コンディションだった。母サラフィナは仏オークスなど芝10F以上のGI【3-1-2-2】。典型的な欧州血統だけに渋馬場は大丈夫だった。その影響をうけ、ディープインパクト産駒ながら福島の不良馬場をこなした自信は大きい。同馬も菊花賞が視野に入るかもしれない。

 逆に、この頭数で内枠を引いては思い切ってイン狙いに徹するしかなかった2着マイネルサーパス(父アイルハヴアナザー)は、きんもくせい特別(福島芝1800m)のレコード勝ちは大外強襲だったので、負けはしたが、まったく異なる形で結果を出したから立派。

 種牡馬アイルハヴアナザーはしだいに評価が下がって6年の供用でアメリカに帰ったが、4月にアナザートゥルースがJRA初重賞勝ち(ダートのアンタレスS)を達成したのに続き、あと一歩で芝の重賞制覇を果たすところだった。これで福島【1-1-0-0】。ラジオNIKKEI賞好走馬が、やがて七夕賞など福島の重賞で活躍するのは良くあるパターンであり、これで(とくに)ローカル戦での活躍は約束されただろう。

 4着ダディーズマインド(父トーセンホマレボシ)は、「前半1000m通過61秒0-レース上がり48秒8-36秒5」の数字よりずっとタフなレースだったから、主導権を握って4着は価値ある好走だった。これで福島コース「1、3、4」着。きんもくせい特別3着でもマイネルサーパスと少差だった。半兄ケイティープライドは函館記念2着のほか、小倉、福島の重賞でも好走しているので、やがては同じように…だろう。

 5着アドマイヤスコール(父ディープブリランテ)は大外16番枠から出て、途中からどこかで空く最内を狙う横山典弘騎手らしい小回りコースの必殺作戦。最内からの強襲を決めた13年のケイアイチョウサンの再現があるかと思えたが、残念ながら今年はちょっと馬場コンディションが悪すぎたかもしれない。

 大駆けに期待した15番人気ポルーニン(父フレンチデピュティ)は、勝ったブレイキングドーンと同じレースを展開したが、まだ地力一歩で0秒7差。もっと成長したい。

 1番人気ヒシイグアス(父ハーツクライ)は、こういう不良馬場が合わなかったと同時に、もまれる厳しいレースを経験していなかった弱みが出てしまった。自分のリズムですんなり流れに乗ることができなかった。

 2番人気のディキシーナイト(父ダイワメジャー)も作戦通りに先行したが、馬場を苦にしたか前半から行きっぷり一歩。

 ヒシイグアスと同様にスプリングS(ロジャーバローズに先着)の内容が評価されたが、奇しくも揃ってマイネルサーパス、ダディーズマインド(きんもくせい特別組)に屈してしまったあたり、これはたまたまかもしれないが、同じ右回りの1800mでも、スプリングSときんもくせい特別では求められるものが微妙に異なるということか。

 今回はコース適性が前面に出た結果だろう。ディキシーナイトはきんもくせい特別で前出の2頭に負けていた。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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