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【七夕賞】脳裏に焼きついてはなれない馬、ステイゴールド

  • 2019年07月06日(土) 12時00分

その存在は、人の理解を超えていた


 誰にだって気になる馬がいる筈だ。その時々、競馬を面白くしてくれた馬。私の場合、どうしても脳裏に焼きついてはなれない馬の一頭に、ステイゴールドがいる。すでに2015年にこの世を去っているが、現役時代のシルバーメダリストと呼ばれていた頃と、種牡馬になってからの絶頂を極めた頃と、その存在は、人の理解を超えていた。生涯を通して見た時、その産駒からオルフェーヴルやゴールドシップなどが出たことで、遡って現役時代のことがよみがえったと言ってもいい。

 先を行くサイレンススズカを追ってエアグルーヴと2着争いをくり広げた宝塚記念、そのサイレンススズカが4角手前でレースを中止し、直線、オフサイドトラップと接戦をした秋の天皇賞、さらには、復活したスペシャルウィークが勝ち、その2着にとび込んできた秋の天皇賞と、双眼鏡を握る手に力が入ったその時の感覚は、今でも確かに残っている。豊富なスタミナを背景に少しずつ加速するというタイプで、2000米以上の重賞ではいつも気になる馬だった。

 その現役時代、初めて重賞を勝ったのが7歳時(旧年令表記)の目黒記念で、8歳で日経新春杯、ドバイシーマC、そして50戦目の最後のレースで香港ヴァーズを武豊騎手で勝ち、GI馬になっていた。生涯で36回連続で重賞に出走し、そのうちGI競走には20回出走していた。激しい気性でドラマチックな現役生活から、種牡馬になって昨年まで10年連続GI馬を輩出するというトップサイヤーぶり。当然、その産駒から血を受け継ぐ種牡馬も生まれていて、今年もフェノーメノ産駒が94頭血統登録し、新種牡馬としてデビューしている。

 そのフェノーメノは、古馬になってから史上3頭目の春の天皇賞2連覇を達成していたが、セントライト記念、青葉賞を勝っていて中距離のスピードにも強いという魅力がある。6月22日阪神で牝駒スリリングドリームがマイルで初勝ちしていて、ステイゴールドの血の広がりは続いている。

 今週の七夕賞では、クレッシェンドラヴがステイゴールド産駒の5歳として初重賞制覇をめざしている。昨年暮れから2000米の距離にシフトしてから4戦して2勝と力をつけ、オープン入りした前走福島で、向こう正面からまくり気味に動いて2着と本格化をうかがわせていた。長くいい脚をくり出すステイゴールド産駒らしさが板について、音楽用語クレッシェンドのように段々強くなっていけるかどうか、気になる一頭だ。

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ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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