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【函館記念】正確なラップを刻んだベテラン田中勝春騎手の圧巻の逃げ

  • 2019年07月15日(月) 18時03分

これをきっかけに、ぜひ奮い立って欲しい


 波乱大歓迎の函館記念だが、今年は「荒れる、波乱」と盛り上がりすぎたか、12連敗を続けていた1番人気馬に支持されたマイスタイル(父ハーツクライ)が逃げ切ってみせた。9番人気のマイネルファンロン(父ステイゴールド)が2着したので、波乱の伝統は(一応は)守ったことになったが…。

 ベテラン田中勝春騎手(48)の重賞制覇は、2015年4月の福島牝馬S(スイートサルサ)以来、実に約4年3カ月ぶり。記念すべきJRA重賞50勝目だった。

 やや余裕残しで9着に失速した巴賞とは一変の好気配で、気合をつけてハナを切ったマイスタイルは終始マイペース。勝春騎手の久しぶりに気迫のこもった先手主張に、良馬場でもちょっとタフな馬場コンディションのため後続はペースが読みにくかったのかもしれない。前後半の1000m「59秒8-59秒8」=1分59秒6。絵に描いたような一定ペースになり、離れた2番手のマイネルファンロンがしぶとく差を詰めて一旦は並びかけたものの、行った=行ったの決着。レースの中身はあっけないというか、他馬が期待ほど動けなかったので少々締まらない印象も残った。

 しかし、マシンのような正確なラップを刻んだ田中勝春騎手(48)の逃げは、さすがベテラン。気力さえ充実すれば騎手リーディング50位前後(最近3年連続、年間20勝台前半)にいるジョッキーではないはずである。マイスタイルでもいい。これをきっかけに、ぜひ、奮い立って欲しいものだ。

 5歳マイスタイルは、ベストに近い2000m【3-3-0-4】で重賞初制覇。これで函館の2000mは3戦3勝となった。高いコース適性に加え、スプリンターズS勝ち馬のビリーヴと同じファミリー出身だがこちらは快速系という色彩は薄く、マイルもこなせるが、全体的に時計がかかるタフなコンディションが合っている。

重賞レース回顧

重賞初制覇を決めた5歳マイスタイル(撮影:武田明彦)


 マイネルファンロンも、勝ち馬と同じように前哨戦の巴賞とは気配も、動きも一変。今回は行きっぷりに余裕があった。これで2000m【3-2-2-4】。祖母マイネヌーヴェルの半兄マイネルネオスも、全弟マイネルアワグラス、同チャールズも、ビッグレースでも大活躍した。これから一段と渋い成長力をみせるだろう。函館記念2勝目を狙った丹内騎手が強気に攻めの姿勢を示したのが良く、直線の中ほどでは勝ったと思えたが、勝ち馬のしぶとさに屈した。

 3番人気に支持されたステイフーリッシュ(父ステイゴールド)の中谷雄太騎手は、自身の初重賞制覇がかかっていたので、早め早めに進出したが、マイネルファンロンと同じで、この2000mではもっと時計がかかってくれたほうが良かったか。残念ながら、ハンデも応えて伸びきれなかった。

 2番人気のレッドローゼス(父ステイゴールド)は札幌に良績があり、血統背景からも函館コースは合うと期待されたが、4コーナー手前でストライドが乱れた。悪くない位置につけられたのにスパートできなかったあたり、内に入ると良くないのか。

 エアスピネル(父キングカメハメハ)は、マイル戦から再びこの距離に戻ったが、これで2000m通算【0-0-1-3】。皐月賞で少差4着の実力馬であり、6歳になったいまならこなせるとも思えたが、今回は最初からフットワークが硬かった。トップハンデ58kgも苦しく13着。長期休養明けは苦しかった。

 再度の快走に期待したスズカデヴィアス(キングカメハメハ)は、素晴らしい状態に映ったが、3コーナーで一番外に回れず(外から被され)自分のリズムでスパートできなかった。毎回うまくツボにはまるわけはないが、それ以上にムラな気性が出たのが敗因か。

 次につながりそうなレースをしてくれたのは、2着の4歳マイネルファンロンくらい。4着まで先行した馬だけ。レース全体はちょっと物足りない印象も残った。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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