アルカナ　――数々のチャンピオン馬を輩出するオークション会社

　贅沢な海辺の街・ドーヴィルは、長い歴史の中で、フランスにおける馬のオークションが行われる場所として不可欠であることは前回のコラムでお伝えしました。

　19世紀に建設されたオークション会場は、2011年にアルカナ社によって大規模な改築が行われ、新しい姿に生まれ変わりました。

　この場所からハンマーが下ろされ、世界へと羽ばたいた名馬には、エリシオやスボーティカ、そして偉大な種牡馬ガリレオやシーザスターズを産んだ名牝アーバンシー、さらに近年は、2013年と2014年に凱旋門賞連覇を果たしたトレヴの名前が挙げられます。

アルカナ出身馬は世界を舞台に活躍しています

　2019年6月16日。エレガントなファッションに身を綴んだ人々が集まったシャンティイ競馬場では、フランス版オークスのG1ディアヌ賞が行われました。

　このレースで、吉田照哉氏が所有するコムをアタマ差退けて優勝したチャネル(父ナサニエル)は、2018年のアルカナ・2歳トレーニングセールに、メイフィールド・ステーブルズから上場され、ベルトラン・ル・メタヤー氏が7万ユーロ(当時のレートで約923万円)で購買した馬です。

　また、ディアヌ賞の2週間前に行われたフランス版ダービーのG1ジョッケクラブ賞で、2分02秒90のトラックレコードを樹立して快勝し、G1凱旋門賞(10月6日、ロンシャン競馬場)に向けた前売りで、有力馬の1頭に浮上したソトサスは、2017年アルカナ・オーガスト1歳セールで、モンソー牧場から上場され、オーシャニック・ブラッドストックが34万ユーロ(当時のレートで約4415万円)で購買した馬です。

　ソトサスの半姉にあたるシスターチャーリーもまた、アルカナ・オーガスト1歳セール出身馬で、2017年のG1ディアヌ賞で2着になった後米国に転厩し、G1・4勝をあげて北米エクリプス賞芝の牝馬部門のタイトルを受賞しました。

　さらに、今年の北米三冠競走第2戦のG1プリークネスSを制したウォーオヴウィルは、2018年アルカナ・2歳トレーニングセールで、ジャスティン・キャッシ氏が25万ユーロ(当時のレートで約3298万円)で購買した馬です。

日本でもトップの実力を見せるアルカナ出身馬たち

　日本で活躍するアルカナ出身馬には、2017年アルカナ・オーガスト1歳セールにて、山口功一郎氏が40万ユーロ(当時のレートで約5200万円)で購買し、1月に中山競馬場で行われたリステッドレースのジュニアカップを制したヴァッシュモン(父ドバウィ)がいます。

　また、12月に行われるアルカナ・ブリーディングストックセールからも、豪華なフランス血脈を受け継ぐ繁殖牝馬たちが日本へ渡り、その後誕生した産駒から、たくさんの大物が輩出しています。

　たとえば、2010年のアルカナ・ブリーディングストックセールにて、吉田勝己氏がメゼレイ牧場から購買したリュヌドール(父グリーンチューン)が、来日後に産んだ4番仔が、後に菊花賞と天皇賞という2つのGIを制し、今秋の凱旋門賞へ向かう予定のフィエールマンです。

　また、5月5日に行われたGI・NHKマイルCを制し、2度のGI制覇を果たしたアドマイヤマーズの母ヴィアメディチも、2014年アルカナ・ブリーディングストックセールにて、ノーザンファーム(代理人はナーヴィック・インターナショナル)が48万ユーロ(当時のレートで約7200万円)で購買した馬です。

　そのほか、宝塚記念を制し2度目のGI制覇を果たしたリスグラシューの母リリサイドも、かつて、1歳時にアルカナ・オクトーバーセールで購買された馬です。

　社台ファームもまた、フランス血脈を生かして成功している生産者です。例えば、社台ファームが生産したGII勝ち馬プールヴィルの母ケンホープは、アルカナ・アークセール(現役競走馬セール)出身馬です。

　社台ファームには、ディアヌ賞などG1・6勝をあげた仏チャンピオンのスタセリタが繁殖牝馬として繋養されていますが、産駒のソウルスターリングもGIウィナーとなっています。

　フランス名牝の血を引く馬たちが、日本でますます活躍することに、私たちフランス人も大きな期待を寄せています。

アルカナ社ホームページ　www.arqana.com